受験生応援!(だったんだけどな…)
僕が見あげる空は、いつだって曇っていた。
別に、空事態が曇りなわけではない。時には快晴であったこともあるし、雨が降っていたり、本当にまれにだけれど、雪が降っていたこともある。
けれど、どんなに綺麗に晴れ渡っていても、どんなに冷たい雫が落ちていても、どんなに凍えてしまいそうな結晶が降ってこようと、僕にはそれらすべてが曇って見えてしまって仕方がないのだ。
晴れた空は好きだ。洗濯物はよく乾くし、布団だって干せばその日の夜は特別よく眠れる。
雨だって嫌いじゃない。お気に入りの傘をさして歩けるし、雨宿りにコンビニとかいろんなお店に寄り道する口実になってくれる。
雪だって珍しいから見ていたい。積もれば雪だるまとかかまくらとかつくれるし、高校三年生である僕でもまだ友達と輪になって童心に戻ることができるし、この時ばかりは受験を控えた僕らでも、先生は「仕方がないな」って目をつぶってくれる。
いろいろなことに目を向けてみれば、世界は十分に輝いているんだ。
そのなかで、両親も息災で、仕事もあって、何不自由なく暮らすことができている。
普通じゃないかって言う人もいるだろうけれど、それはとてもとても素晴らしいことで…。
でも、僕には世界が曇って見える。
輝くものはいくつも存在するのに、今の僕には濁った光にしか見えないんだ。
鈍く光るそれに、僕は恐怖すら感じている。
僕と同じ高校生でも、入学したての一年生や、何の気負いもない頃の二年生。彼らの時代は、なんて楽なんだろう。課題をこなして、授業を眠らず真面目に聞いていれば点数をとれるテストに、それで大部分の成績を付けてもらえる高等学校という組織、施設。
「そんなことない!」と夢をかなえるために日夜努力を惜しまず、歩み続けている人たちには怒られてしまうかもしれないけれど…。
彼らがうらやましいと感じると同時に、とても怖い。
僕には、特別「何になりたい!」とか、「どんな一生を送りたい」とか、いわゆる“夢”とよばれるものがない。
強いて言うならば『普通に生きたい』が僕のそれだ。
「出世したい」とか、「玉の輿に乗りたい」とかいう願望は持っていない。
楽に生きられればそれでもいいんだけれど、なにも願わず。ただただ流されていくだけの人生は、なによりも“楽”だ。
僕はそれを望んでいるのに、周囲はそれを許してはくれない。
「お前ならできる。」
「今まで頑張ってきたものね。」
「いつもどおりに。」
かけられた言葉の数々が、僕の儚い自信と希望を削り取っていく…。
いう人は知らないんだ。僕が、これまでどれほど怠慢に、流れるがまま、時の波に揺られて心地よい眠りへと落ちていたか。
今、かけられた言葉の数々にどれほど、僕が恐怖しているか!
応援されていると知っている。 それが怖いんだ。
期待されていると知っている。 それが恐ろしいんだ。
あの人たちの期待に、応援にこたえられないかもしれない。
あの人たちの望んだとおりの子供になれなかったと、見捨てられるかもしれない。
もし、もし、もし!
可能性が僕の頭をよぎっては、僕を揺さぶって、僕の心をぐちゃぐちゃにしていく。
どうしようどうしようどうしよう!
明日は大切な日なんだ。
こんなことをしている時間はない。
寝坊でもして、遅れたら、それこそあの人たちに見限られる。
いらない子供だと、見捨てられてしまう!
それは嫌だと心から思うのに、意思とは反対に僕の頭は覚めて、目は開き、目頭は熱くなっていくのだった……。
明日はセンター試験!ということで、リハビリついでに今年初の投稿です。
受験生応援!とうたっていたのに、この終わり方とか…。
ダメ人間でごめんなさい!!
次の話でなんとか明るく終わらせたい!
終わらせられればいいな!
終わらせられると思う!
きっと!
たぶん!
終わらせられるかな?
……まあ、覚悟はしておけってことで!