再会の迷宮(終)
途中グロ描写が出て来ます。
――仁――とか医療漫画を読める人なら大丈夫だと思いますが、一応御注意を。
私が愛刀『水鏡』を正眼に構えたのと魔素喰らいが飛びかかってきたのはほぼ同時だった。
「『岩貫』……っ!」
ガキィィン!と甲高い音を発して『水鏡』が右の魔素喰らいの胸を貫く。
『ピキュルイッ!?』
物言わぬ水晶の塊と化して崩れ落ちる魔素喰らい。
『岩貫』はこのような閉所において効果を発揮する防御無視の突き技だ。
MPを30も使うのが難点だがその効果は極めて高い。
マナや魔力を喰らう魔素喰らいには魔法がまったく効かないが、その鉱物の様な身体組成は高い物理防御力も兼ね備えるので、魔法以外の手段で防御を無視できる技能が有効なのだ。
「まずは……一体!」
残る魔素喰らいは2体……残ったMPでは『岩貫』1回がせいぜいだ。
「ならば……まとめて……『斬鉄』!」
私は残る魔素喰らいが2体横に並んだ一瞬を狙って同じく防御無視のなぎ払い技『斬鉄』を繰り出す。
『ピギュルイ!!』
『ピキーーッ』
その左から右へのなぎ払いは左の魔素喰らいを両断したものの、もう1体にはその胴体を半分ほど切り裂いただけに留まった。
「くっ……今ので止めがさせないか……もうMPも無い、通常攻撃で削れるか……?」
私に余裕が無くなったのを感じ取ったのか、残る1体の魔素喰らいは防御を捨ててその鋭利な両腕を振り回し飛び込んできた。
その腕を刀で受け流しつつ斬撃を見舞うが、かすかに水晶の破片が飛び散ったのみ。
今でこそまだ敵の攻撃をさばくのに余裕があるが、このままでは膠着状態……
となれば疲れを知らぬ相手の方が有利と言う事だ。
……どうするか。
「ピキュルルルル……トュールルルルルルルルルルルルルルルルル……」
そんな私の焦りをあざ笑うかの様に甲高い叫び声を上げる魔素喰らい。
「く、勝利の雄叫びでも上げているつもりか……? いや……」
私の目の前で裂ける空間――――これは
「召喚! 仲間を呼んだのか!」
私の目の前で魔素喰らいは当初と同じ3体に戻っていたのだった。
――十蔵SIDE――
強制降下に落ちて約10分。
トオコさんほどの実力者が帰還できない状況、と言う事を考えればトオコさん達が強制降下によって地下深くへと迷い込んだ可能性は少なくない。
だとすれば怪我か何かで何処かで動けなくなっているのか……あるいは。
「……縁起でも無い」
俺は脳裏に浮かんだ最悪の状況を頭を振って追い出し、更に歩を進めた。
強制降下の落下地点からここまではずっと1本道だ。行き過ぎる事は無いと思うが……
………キンッ……ガッ……
「……ン……何か音がした……か?」
聞き間違いで無ければ何か堅い物を叩く様な音。
まさかと思い小走りに歩を進めると、やはり金属や何かのぶつかる音の様だった。
……ガキン!……キン、ガキィン!
「つまり、誰かが……戦っている?……もしかして……『加速』!」
俺は『加速』をかけ直すと音がする方向へと走り出した。
あっという間に近くなる音源。それと同時に前方にぼんやりとした明かりが見えてくる。
やはり誰かが戦っていて、光っているのは魔法の明かりなのだろう。
やがて見覚えのある黒髪の女剣士が、水晶で出来たかの様な魔物と戦っている様が見えてきた。
「やっぱりトオコさんか!」
そう思った次の瞬間、俺は思いっきりダッシュをかけ、魔法の明かりに照らされた戦場へと飛び込んでいた。
「くっ……左手も……やられたか……だが、まだ……」
満身創痍のトオコさんはたった一人で3体の水晶の魔物と戦っていた。
いや、足下に水晶の残骸が小山となっているところを見ると何体かは倒したらしいから、当初はもっと居たのか。
その3体の内、左の1体が大きくその鋭利な腕をトオコさんに向かって振り上げた。
トオコさんは他の2体と鍔迫り合いの様な形になって、動きが止まってしまっている!
「させるかっ!!」
俺は『加速』×ダッシュ状態のまま、トオコさんにその鋭利な腕を振り下ろそうとしていた魔物にドロップキックを食らわせた。
吹き飛び、壁に叩き付けられる魔物。
まあ、速度からすればバイクに轢かれたようなもんだしな。
『ピキュルルルルルル!?』
『キュルル・ピーキャラララララ』
壁に叩き付けられた魔物はどうやら右腕が折れたらしいが、それを気にした風も無く平然と立ち上がってくる。
流石にこの階層になると一撃でやっつけるって訳にはいかないか。
その様子を半ば呆然と見つめるトオコさん。
「ま……まさか……十蔵殿!?どうしてここに?」
「間に合って良かった、トオコさん。ここに居る理由は……まあ、救出依頼を受けたのと、心配だったから、ですかね」
「なっ……あぅ……」
真っ赤になるトオコさん。
猫耳もぺたんとなって……ああ、もう、可愛いなぁ。
「とっ……とりあえず怪我もしているようですし、下がっていて下さい……コイツは俺が」
「だっ……だめだ!コイツは……」
「閃光導く雷撃!!10倍×3体!!」
トオコさんの制止を振り切って10倍サンダーボルトを3体の魔物にそれぞれ放つ。
だが。
「あ……れ?」
倒れはしないまでも大きなダメージを与えられるだろうと思っていた10倍サンダーボルトは奴らの体表でむなしく消え去ってしまった。
『ピキュルルルル♪キュ・ピーラララララ』
『ピピピピ・キュピュルルルル♪』
……むしろなんか喜んでいる様に見える。
「奴らは魔素喰らいだ! 攻撃魔法は効かない!!」
え。なにそれ。
術師の俺、詰んだ?
せっかくトオコさんに格好いいとこ見せようとしたのにー
「お、おい!お前!」
トオコさんの背中に庇われていた金髪で三白眼の子供が結界から前に出て俺に声をかけてきた。
「こいつが敵を押さえつけている間に、僕たちを連れて地上に戻るんだ!」
「……は?」
何を言っているんだこのお子様は。
「こいつはもうMPも使い果たし、怪我もしている。それでは僕たちを守れはしないしな、せいぜいオトリ位にしか役にたたん! そこにお前だ! 救出隊だろう? 僕たちを仲間の所へ連れて行くが良いぞ」
……なんか地球でさんざん叩かれてた体罰教育って正しい気がしてきた。
「ばかっ! 結界から出てくるなレイドン!」
切羽詰まったトオコさんの声。
見ると俺のドロップキックから体勢を立て直した魔素喰らいがレイドン、と呼ばれた子供の方に向かってきている。
結界から出た事で攻撃対象として認識されてしまったのだろう。
レイドンに向かって突き出される鋭い水晶の槍。
「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
「くっ……させんっ!ぐうっ!?」
何が起こったのか、俺には一瞬分からなかった。
トオコさんがその腹部から水晶の槍を生やしている。
そこからだくだくと溢れるトオコさんの血。
「ぐっ……ふっ……」
トオコさんはレイドンと魔素喰らいの間に割り込み、その身を盾にレイドンを庇っていたのだ。
そして本来レイドンを貫くはずだった水晶の槍はトオコさんの腹部に埋まり、その命の糧を吐き出させ続けている。
『キュラララ・ピュルルル♪』
「ひいぃぃぃぃ!?」
至近距離でその惨劇を見たレイドンは腰を抜かしてその場にへたり込む。
俺は、と言うと。
情けない事にトオコさんのその姿を見て頭が真っ白になってしまっていた。
「なっ……ト、トオコさ……血っ、がっ!」
「じゅ、う、ぞうどの……逃げ……て」
「ヒ、ヒール!そうだ、ヒールを…………『命の泉よ傷を癒せ』×10!」
瞬く間にふさがっていく腹部の傷。だが、なぜか治りきらない。
「くっ……10倍じゃ足りないのか?じゃあ100倍で……」
『キュララララ!』
『キュルルルリリリリリ!』
『ピキュルルルルルル!』
ドスッドスッドス!
トオコさんを治そうと再びヒールを唱えようとした俺の背中に魔素喰らいの攻撃が集中する。
「痛っ! 痛ぇな! 後で相手してやるからトオコさんを治す邪魔をするんじゃねぇ!」
と言って、奴らに通じるはずも無く、ましてや魔法の効かない敵を相手に術師の俺がどう戦えば良いのか。
幸い、奴らの攻撃は俺の100倍コートがぎりぎり防いでくれて居るみたいだが……地味に痛い。
「…………『命の泉よ傷を癒……』いてぇ!……邪魔すんなっつってんだろ!」
幾度となく呪文を邪魔され怒りに思わず魔素喰らいの方を振り向く。
すると俺の視界にある物が飛び込んできた。
それはトオコさんが倒したと覚しき奴らの仲間の残骸。
「……使える、かな?」
奴らには魔法は効かない。
その硬い体表には生半な武器も効かない。
では奴ら自身ではどうだろう?
「『念動』×速度100倍!!」
MPを500使って念動が発動。
すでに亡骸となっていた残骸は俺の魔法を無効化する事は無く受け入れ、奴らの体の一部……30センチほどの槍状の水晶が宙に浮かび上がる。
『念動』は3㎏までの物体を秒速1メートルで1分間動かす事が出来る。
俺はその速度の増加だけに100倍のMPをつぎ込み……およそ360km/hの超高速で奴ら自身の体の一部を水晶の弾丸として撃ち出したのだ。
ッキュィンッ! ボンッ!
空気を裂く音だけを残して魔素喰らいに飛んでいく水晶の弾丸。
それを身に受けた一体は、あっさりと爆散した。
「なっ……なんだ!?何をした!?」
「『念動』なんて初級も初級の呪文だろ!?何でこんな事が」
「い、いや、それ以前に……この男、詠唱する時に100倍って言ってなかった……か?」
「嘘だろ……ここまで潜ってきて10倍のヒールを使って、さらに100倍の『念動』……?どれだけMPがあると言うんだ」
常識外れの魔法の使い方を見たせいか後ろのガキ等がやかましい。
「ち、弾も壊れちまったか……『念動×2×速度100倍!!』
更に別の水晶の塊を2つ浮かせ、それぞれ残った魔素喰らいに撃ち出す。
ッキュィンッ! ボンッ!
ッキュィンッ! ボンッ!
その弾丸を受け、これもまた至極あっさりと砕け散る魔素喰らい達。
「…………まだ唱えられるのか……?」
床に座り込んだまま呆然とするレイドン。
だが、俺にはガキ等にかまっている暇は無い。
気を失ったトオコさんをそっと抱え上げ結界内に運ぶ。
「トオコさんを治療する。場所を空けてくれ」
「あ、ああ……」
毒気を抜かれたのか、素直に場所を詰める子供達。
「『命の泉よ傷を癒せ』×100!」
トオコさんの大きく穴の開いた腹部に手を当て再びヒールを試みる。
……だが、傷口はさっきと同じくある程度小さくはなるが完治はせず……しばらくするとまた広がり出してしまう。
「くそっ……なぜだ?なぜ治らない!『解析』!」
もしや毒でも塗ってあったのか?と思い、解析でトオコさんを見てみる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
氏名 トオコ・サヴァン 19歳 女性
総合レベル 29
クラス メイン サムライ LV29
サブ レンジャーLV14
状態:重傷
HP 42(377)
MP 3(165)
ステータス基本値(実効値)
STR 16(61)
VIT 13(49)
DEX 11(41)
SPD 13(49)
INT 11(41)
MID 09(34)
称号
黒の舞姫
固有スキル
徹し(通常攻撃に20%の確率で防御力無視の効果)
属性補正
風+15
祝福
刀神ムォンド
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
スロット数2(+2)
セットスキル【斬鉄】【岩貫】【見切り】【反撃術弐】
所有スキル
[サムライ]
斬鉄、岩貫、2連撃、2連突き、
平常心、見切り、後の先、
反撃術弐、風魔術壱(カマイタチ、追い風)、
風魔術弐(烈風、追い風弐)
[レンジャー]
サバイバル、マッピング、悪路踏破、
解体、調理、状態異常抵抗+15%
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「状態異常、重傷……このせいか!」
単なる怪我じゃわざわざステータスには記載されない……という事はれっきとした状態異常の一種なのだろう。
しかし問題は何を持って重傷とされているか、だ。
「くそっ……もっと詳しく分からないのか?『解析』」
今度は怪我の部分のみに絞ってアナライズを掛けてみる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
状態:重傷
動脈複数箇所断裂
子宮部貫通
他内臓器複数に損壊あり。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「詳細が出たな……やってみるもんだ」
更に患部も淡く光って指示されるし。
思うにこの光っている部分を意識して治さなきゃダメなんじゃないか?
「まずは『光よ我が身を清めよ』」
いくら水晶って言ったって迷宮の魔物だ。
そんな物に貫かれたんだからまずは患部を消毒しないといけないよな。
「で、まずは動脈から、だよな?『念動』」
鉗子やピンセットなんて手術道具は無いが、より応用の利く『念動』が俺にはある。
これで動脈と思われる部分を持ち上げて両端をくっつける。
「よし、いいぞ……このままの状態で『命の泉よ傷を癒せ』」
動脈は無事にヒールでつながり、血流が流れ始める。
……どうやら傷が元に戻る事も無いようだ。
この調子で大きい血管を次々とつないでいく。
どの血管とどの血管がつながるか、というのは『解析』の効果か、うっすらと切れた血管同士が光でつながって見えるので分かりやすい。
「ふう、次はし、子宮か」
言ってみれば女性の象徴。女性が女性たる為の場所である。
いずれ、その……子をなす部分だ……照れている場合じゃ無い。万が一にも失敗は出来ない。
「『念動』を多重起動……貫通した両方の傷口を同時に塞いで……『命の泉よ傷を癒せ』×2……よし、うまく塞がった……」
子宮の治療が上手くいき、俺が一息ついた時、トオコさんが顔をしかめて身じろぎし、目を開けた。
「じゅ……十蔵……どの?」
「ああ、ごめんトオコさん、痛かった?もう少しだから我慢して」
「……あの……怪我で……私は生きているのか?」
「うん、大丈夫、動脈や子宮がやられてたから……今、個別に治しているとこ」
「しっ、子宮!?」
「ああ、動かないで。まだ全部終わってない」
「痛つっ……あ、ああ、すまない……その……よろしく、頼む……」
「大丈夫、傷跡一つ残さないよ……だから、目をつむってリラックスしてて」
そして30分をかけて俺は丁寧に丁寧に患部を塞ぎ続け……トオコさんの致命傷と思われる部分をすっかり治したのだった。
※
宿の俺の部屋では、すっかり回復したトオコさんが自分の体の調子を素振りをしながら確かめていた。
あれから『念動』で全員を強制降下を逆にたどらせて5階のポータルまで搬送。
10分も経たずに迷宮を脱出する事が出来たのだ。
その後、貴族の坊ちゃんをギルドに送り届けると晴れて依頼達成となった。
……坊ちゃん達はトオコさんの手術を間近に見たせいか「「「もう二度と迷宮になんて潜らない」」」と青い顔をしてつぶやきながら帰って行った。良い薬になれば良いけど。
ちなみに魔素喰らいを3体倒した事で俺のレベルは17にアップ。
ランクは高難度の依頼を達成したと言う事で一足飛びにDとなった。
――――――――――――――――――――――――――――――
氏名 神楽十蔵 21歳 男性
総合レベル17 ギルドランクD
クラス メイン呪術師LV17
サブ 魔道具師LV8
HP 153(MAX153)
MP 12080(MAX12080)
ステータス基本値(実効値)
STR 10(26)
VIT 09(23)
DEX 15(39)
SPD 11(29)
INT 13(34)
MID 13(34)
称号
真なるマナの申し子
固有スキル
魔力自動回復
魔性の指
魔力使用制限解除
属性補正
全属性+5
祝福
母の愛
――――――――――――――――――――――――――――――
スロット数1(+2)
セットスキル【呪術1】【加速】【呪術2】
所有スキル
[汎用]
加速、素材調達、製薬、
[呪術師]
呪術1(解析、ヒールⅠ)
呪術2(念動、浄化Ⅰ)
光術1(光明、暗黒)
攻撃呪術1(ファイアボルト、ストーンボルト、アイスボルト)
攻撃呪術2(エアボルト、サンダーボルト、エネルギーボルト)
[魔道具師]
武装強化(武器強化、防具強化)魔法の指輪作成
――――――――――――――――――――――――――――――
俺がレベルアップしたカードの内容を確かめていると、トオコさんは一通り体の調子を確かめて納得がいったのか、刀を鞘に収めた。
「……うん、すっかり元通りだな」
「そりゃよかった」
「……まったく十蔵殿にはこれで何度驚かされたものか……重傷の者をヒールだけで治してしまうとはな」
「……普通はしないの?」
「……普通は高位回復魔法の身体完全回復でも使わない限り『重傷』患者は癒やせないものだ。私も死んだと思ったからな」
「そっか……死ななくて良かったよ」
「それで……な?」
「うん?」
「あ、あの時……なにか、し、子宮がどうとか……言っていたが」
真っ赤に染まるトオコさんの顔。というか負けず劣らず俺の顔も赤いに違いない。
「あ、あれ、ね。うん。アレは緊急措置というか――」
「そ、そうか……やはり私のここは……十蔵殿によって……助けられたのだな……その、私の女としての部分は」
「……」
「……」
き、気まずい。
「その……もはやそこまでされては……他に嫁入る事も出来ない、のだ。それに私は……十蔵殿の事をに、憎からずだな……つまりっ……娶ってくれとは言わない……私を……そっ……そのっ……だからっ!」
半ば涙目になりながら自分の気持ちを訴えるトオコさん。
いくら俺が朴念仁だからってここまでされれば分かるぞ。
「あー……その。トオコさん」
「う、うむっ……十蔵殿、その、呼び捨ててくれてかまわない」
「ト、トオコ……」
「う、うむ……」
「俺も……そのトオコが好き、だよ」
トオコの両頬を両手で挟んでそっと口づける。
「……ん」
陶酔したように俺の口付けを受け入れるトオコ。
そのままトオコを両腕で抱きしめて、着物を脱がそうと口付けしたまま帯に手を掛ける。
「ぷはっ……ま、まって……まだ、明るい……」
「だ、暗黒」
レベルアップで覚えたばかりの魔法を窓に向かって掛けると、良い感じに薄暗くなった。
俺はそのままトオコをベッドにそっと押し倒して、もう一度、唇を重ねる。
そして……俺とトオコは一つの部屋で一晩を過ごし――
翌日からトオコの俺への呼びかけは『主様』になったのだった。
という訳で十蔵君、初朝チュンの巻でした。