三枚の名刺 :約7500文字 :パロディ
とある夜のこと。一人の男が鼻歌交じりに街を歩いていた。
男は上司に同行して遠方の取引先との商談に臨んでいた。日中の交渉は終始順調に進み、当初想定していた条件も滞りなくまとまり、最終的には無事に契約を取り付けることができた。
仕事を終えた解放感からか、上司は笑いながら男の尻を軽く叩き、『帰る前に思う存分羽根を伸ばしてきていいぞ』と言った。自分はホテルでゆっくり休むという。男はありがたくその言葉に甘え、一人で夜の街へ繰り出したのだった。
繁華街は色とりどりのネオンの光で満ちあふれ、通りの両脇には胸元や脚を惜しげもなく露出した女たちが等間隔に立ち、通行人へ笑顔を向けていた。なんともいい眺めである。酒場から漏れる賑やかな笑い声や客引きの呼び声が絶え間なく交錯し、甘ったるい香水や酒、焼き鳥の匂いなどが夜風に溶け合って漂ってきて、歩いているだけで頬が緩む。女から声をかけられるたび、男はほいほい近寄り、調子よく話に乗った。
あっちの店に入っては鼻の下を伸ばし、こっちの店に入っては目を細めて女たちの胸元を覗き込む。そんな調子で渡り歩いているうちに酒もずいぶん回り、今自分がどの通りを歩いているのかさえ、すっかりわからなくなってしまった。
「さあて、困ったなあ」
口ではそう言ってみたものの、顔には危機感など微塵も浮かんでいなかった。目の裏には、まだ先ほどまで相手をしてくれた女たちの胸の谷間が鮮明に焼き付いており、頬はだらしなく緩み切っている。
酒に体を揺さぶられ、ふらふらとふざけたような足取りで歩いていると、一軒のバーが目に留まった。表通りから少し外れた細い路地に面した小さな店で、どこか安っぽい看板が申し訳程度に明かりを灯している。窓枠には豆電球がぐるりと取り付けられていた。
男は何気なく店の前まで歩み寄った――そのときだった。店のドアが開き、中から若い女が姿を現した。
「あっ、遅いよー。待ってたんだからね」
女はそう言って親しげに男の肩にそっと手を添えた。
「さ、入って」
「えっ、いや、あのう……誰かと人違いしてるんじゃ」
男は戸惑いながらも笑みを浮かべた。でかい――。視線は吸い寄せられるように女の豊かな胸元に落ちていた。
女はそんな視線を気に留める様子もなく、くすりと笑って小首を傾げた。
「ええ? 気が変わっちゃったの? ちょっと飲んでから一緒に行くって約束したじゃない」
「いえ、おれです」
言い切ると同時に女は男の腕にぎゅっと体を寄せ、絡みついてきた。その柔らかな感触に男はさらに頬を緩ませ、そのままするりと店の中へ導かれていった。
店内は外観同様こじんまりとしており、照明はかなり落とされていた。薄暗い室内には静かな音楽が流れ、壁際の棚には洋酒のボトルがいくつか並んでいる。ローテーブルを囲むソファ席が三組あるだけで、他に客の姿は見当たらなかった。案内された席に腰を下ろすと、ほどなくして小鉢が二つ運ばれてきた。
「へえ、酢の物に煮物か。ちょっと変わってるね」
「この辺の名物なの。おいしいから食べてみて」
「地方はこういうのがいいんだよなあ」
そう言って改めて皿に視線を落とすと、盛り付けはどこかぎゅっと押し固めたようで、ここで調理したものというより近所の惣菜店やスーパーで買ってきたものをそのまま器に移しただけのようにも見えた。
男は少し気になって、店の奥に視線を向けたが、料理を作っている気配はなかった。
それでも箸をつけてみると思いのほか味は悪くなかった。酢の物はほどよく酸味が効き、煮物も出汁がしっかりと染み込んでいた。男は機嫌を良くして、酒を飲みながら小鉢をきれいに平らげた。
やがて別の女も隣へ腰を下ろし、「一杯いただいてもいいですかあ」と甘えた声で酒をねだった。男ははいはい、ほいほいと上機嫌で応じ、勧められるまま次々と注文を重ねていった。
そうして飲み食いを続けるうちに腹はすっかり満たされ、全身が心地よい熱に包まれていった。まぶたは次第に重くなり、舟を漕ぎ始めた男はいつしか隣に座る女の膝を枕にして眠りへ落ちていった。
「お客さん。お客さん」
「……おん?」
どれほど眠っていたのか。低く重い声に呼び起こされ、男はぼんやりと目を開けた。
目の前には黒服姿の店員がおっかない顔で立っていた。あるいはもともとおっかない顔つきなのか。肩幅は広く、首も丸太のように太い。黒々とした髭が口元を覆い、その巨体と相まってまるでクマのようで――いや、もっと恐ろしい、山奥に棲む鬼のようだった。その大きな手の中で一本のアイスピックをくるりくるりと転がしている。
男はゆっくりと体を起こし、ソファにもたれかかった。隣に腕を伸ばしたものの空を切り、危うく体勢を崩しかけた。左右に目をやると、先ほどまで隣にいた女たちの姿は跡形もなく消えていた。
「そろそろお会計をお願いしたいんですがね」
店員は低い声でそう言うと、会計票を挟んだバインダーを男に差し出した。
「あー……」
男は何度かまばたきを繰り返しながら、会計票に視線を落とした。
飲み放題プラン(男) ¥5500
飲み放題プラン(女)×二 ¥13200
お通し ¥1100
酢の物 ¥880
煮物 ¥990
生ハム ¥1420
ナッツ ¥990
枝豆 ¥990
焼き鳥盛り合わせ ¥2970
ビール ×三 ¥4950
ソフトドリンク ×二十 ¥22000
水 ¥3300
カクテル ×八十 ¥52800
週末料金 ¥5500
年末料金 ¥4400
サービス料 20%
席料 10%
チャージ料金 10%
外税 10%
計 ¥193243
「……なるほど」
男はゆっくりと顔を上げ、わざとらしく「うーん」と唸りながら大きく背筋を伸ばした。それから膝の上に行儀よく両手を揃えて置き、店員におそるおそる訊ねた。
「えっと……飲み放題なのに、お酒の料金が別に付いているんですが……」
「飲み放題メニューに含まれないお酒ですので」
「ですよねえ……。あれ、でも店の女の子たちにも飲み放題プランが付いていますけど……」
「うちに女の子なんていませんよ。ほら、いますか?」
促されるまま、男は少し腰を浮かせて店内をぐるりと見渡した。薄暗い店内には女の気配など一つもなく、聞こえるのは空調の低い唸りだけだった。
窓際や壁に吊るされた安っぽいイルミネーションライトが規則的に点滅を繰り返し、その光が空席のソファを照らしていた。
「いませんねえ……。あの、この酢の物と煮物って、たしかお通しじゃ……」
「違いますよ」
「そっかあ……いや、ソフトドリンク二十って!」
「飲まれましたねえ」
「え、ええ。ですよねえ……。それで、水が三千三百円……」
「レストランなんかでも水は意外と高いですからね」
「ありますよねえ……カクテルが八十杯! これ、『もう、やっちゃえ!』って感じがしますねえ」
「ありがとうございます」
「どういたしまして……。あの、席料とチャージ料って同じでは……」
「ソファとテーブルの使用料です」
「おお、これは一本取られたなあ……。あの、年末料金って……? 年末はまだ先では……」
「早めに備えておいたほうがいいですよ。油断大敵です」
「身に沁みますねえ……。あれ? この外税って……」
「わかりやすいようにおまけしましょう。十九万五千円で結構です」
「おー、本当におまけされるとは新感覚……」
「心がけております」
「いや、あの……これっていわゆる……」
「はい?」
「……いえ、なんでもありません。じゃあ、お支払いしますね。あ、その前にトイレを……」
店員はわずかに表情を和らげ、「あちらです」と店の奥を指し示した。
男が席を立つと、店員も影のようにぴたりと後ろについてきた。あまりにも距離が近く、一瞬、このまま個室まで一緒に入ってくるのではないかと思うほどだった。首筋に生温かい吐息がかかり、男は思わず身震いした。
「ごゆっくり」
ドアが閉まる寸前、店員の手の中で遊ばれていたアイスピックが照明を受け、きらりと冷たい光を放った。
……どえらいことになった。どうどうどうどうする? どどどうする?
男は便器の前にしゃがみ込み、両手で顔をむぎゅっと押し潰した。
つい先ほどまで全身を満たしていたはずの多幸感は跡形もなく消し飛び、女たちと笑い合っていた時間は遠い昔のことのように――いや、夢だったとさえ思えてきた。膝がぶるぶると小刻みに震え、胸の中は内臓を丸ごと抜き取られたかのように寒々しく、脇にはじっとりと嫌な汗が滲み、頭はぐらぐらぐら。喉の奥から酸っぱいものがせり上がり、今にも吐きそうだった。
まずいまずいまずいまずい……。
男は勢いよく立ち上がると、上着やズボンのポケットを探り始めた。何か使えるものないかと、狭い個室の中を踊るようにぐるぐると回りながら体中を慌ただしくまさぐった。
しかし、出てきたのはスマートフォンと財布だけだった。
財布を開いて中身を数え直すも、入っていたのは数枚の札と小銭だけで、とても代金には足りない。他に入っていたのは風俗店の割引券やチラシ、名刺ばかりで、しかもその大半がキャバクラ関係のものだった。
いや、仮に財布にぴったり代金が入っていたとしても、こんな金額を黙って払うなど冗談ではない。しかし、面と向かって断る胆力もなければ、あの店員を相手に言い負かせる自信もなかった。
ああ、きっとこのままATMまで連れて行かれ、現金を下ろさせられるのだろう。
そう想像しただけで胃の奥がずんと沈み、冷たい絶望と諦念が体の芯からじわじわと広がっていった。そのせいか、警察に通報するという発想は微塵も頭に浮かばなかった。もっとも、こうした事案は民事だから警察は動かないという生半可な知識が無意識のうちに思考を縛り付けていたのかもしれない。
「まだですかー」
ドアがこんこんと叩かれ、直後に低い声が響いた。男はびくりと肩を跳ね上げ、その拍子で財布を床に落としてしまった。
――ん?
そのときだった。床に散らばった名刺の一枚に、ふと目が留まった。
弁護士――以前、上司に紹介されて一度だけ話したことがある人物だった。ほんの一分にも満たない挨拶程度だったが、『何か困ったことがあれば』と名刺を渡されていたのだ。
まさに今である。男は慌ててしゃがみ込み、その名刺を拾い上げるとスマートフォンを取り出して番号を打ち込んだ。そして――。
「あのー……」
「はい?」
男はドアをほんの少しだけ開け、隙間からスマートフォンを差し出した。通話が繋がるなり事情を早口で説明したところ、店員に電話を代わるように言われたのだ。
きっと話をつけてくれるのだろう。そう信じた男はすぐにドアを閉め、細く開けた隙間から外の様子を窺った。店員は壁にもたれ、こちらへ視線を向けたまま短く相槌を打っている。
「……はい。お返ししますよ」
しばらくして店員は通話を終えると、スマートフォンを差し出した。
「あ、ありがとうございます……」
男はおそるおそるドアを開け、スマートフォンを受け取ると小さく頭を下げた。
「あの、それじゃあ……」
「ええ、ではお支払いをお願いします」
「えっ、あの、え?」
「はい?」
「いや、その、説得されたんじゃ……?」
「はい? 誰だか知りませんけど、同じことばかり繰り返していて、何を言っているのかよくわかりませんでしたよ」
あのぼんくらめ――。そういえば、かなりの高齢だった。頼りにした自分が間違いだったか。
男は苦々しく顔を歪めた。
「では向こうへ戻りましょうか」
「いや、あの、まだ……まだ、出ます! もう少し待ってください!」
男は素早くドアを閉め、再び頭を抱え込んだ。
誰か他に頼れる人間はいないかと、財布の中をもう一度探り始めた。名刺を一枚一枚よく確認していく。やがて一枚にふと目が留まった。
大河――ウォーターサーバーの営業マン。
社内の誰一人として必要としていなかったそれを、彼はまるで魔法でも使ったかのように契約まで持ち込んだ男だ。彼の話術なら、この店員さえも丸め込めるかもしれない。
男は一縷の望みを託し、震える指でスマートフォンに番号を打ち始めた。
「あのー……」
男はそっとドアを開けて、店員に声をかけた。
「はい?」
「いや、この方と少しお話していただきたくてですね……」
男はスマートフォンを店員に手渡すと、すぐにドアを閉め、また隙間から様子を窺った。
店員は無言でスマートフォンを受け取り、耳に当てた。相変わらず表情はほとんど動かず、「はい」「ええ」と短く返事を返していた。
そして数分後。通話が終わると、店員は無言でスマートフォンを返した。
「あの、それで……」
男がおそるおそる口を開くと、店員はわずかに肩を落とし、小さく頷いた。
「確かに、水が三千円というのは高すぎました……その分は引いておきます……」
「お、おお……。いや、あの、水だけじゃなくてですね……いや、それはそれですごいな」
と、思わず感心したものの状況は何一つ変わらず。男は再びトイレに引っ込んだ。
誰か……誰か頼れるやつはいないのか……!
再び名刺を漁る男。すると、そのうちの一枚に視線が留まった。
砂山――会社のイベントで招いたお笑い芸人である。普段はほとんど笑顔を見せない役員連中まで見事に笑わせていた。彼なら、この状況もひっくり返せるかもしれない。
男は藁にも縋る思いで番号を打ち込み、店員にスマートフォンを渡した。
数分後――。
店員は苦々しい顔でスマートフォンを返してきた。
「あの、それで……どうでしたか?」
「なんか……滑っていましたね。はい」
「なるほど……」
男は静かに頷き、そっとドアを閉めた。
どうする、どうする、どうどう、ど……窓!
もはや頼れる者などおらず、焦りに突き動かされるまま視線をあちこちへ彷徨わせていた、そのときだった。
高い位置に小さな窓があることに気づいた。男は慌てて便器に足をかけ、精いっぱい腕を伸ばして鍵を外した。窓をゆっくりと押し開けると、夜の冷えた空気が流れ込み、頭の熱がわずかに引いた気がした。
どうにか通れそうだ。男は引きつった口元にわずかに笑みを浮かべた。
「まだですかー」
「まーだ!」
男は便器の上に乗ると、肩をすぼめ、腹を引っ込めながら窓枠へ身体を押し込んだ。ベルトが引っ掛かり、小さく音を立て、一瞬ひやりとしたものの、どうにか身をよじって外へ這い出した。
そこは店の裏手だった。湿ったアスファルトにはビニール袋や紙くず、潰れた段ボール、空のペットボトルなどが無造作に散らばり、黒ずんだ水たまりがところどころに広がっていた。生ごみのような嫌な臭いが鼻をついたが、それでも男の胸は解放感でいっぱいだった。
男は地面に手をつき、大きく息を吐いた。助かった――そう思えたのも、ほんの束の間であった。
店の裏口が勢いよく開き、あの店員がぬっと姿を現した。
「おい、待て!」
腹の底まで響くような怒声が飛んだ。男は「ひっ」と喉を鳴らし、慌てて立ち上がると、そのまま全力で駆け出した。
しかしどこへどう逃げたものか、まるで見当がつかない。土地勘などあるはずもなく、目についた路地に飛び込み、角を曲がり、ただがむしゃらに足を動かし続けた。
酒の残る身体は重く、足が何度ももつれ、喉は焼けるように熱く、肺は刃物で切りつけられるように痛んだ。それでも止まれば取って食われるという恐怖が男の身体を無理やり前へと押していた。
しかし、店員の足は速いこと、速いこと。背後から迫る足音は少しも遠ざからず、首根っこを掴まれそうになるたびに「うひゃあ!」と情けない悲鳴を上げ、身をよじって必死にかわした。
逃げて、逃げて、逃げ続けた末に、やっとこさ見覚えのあるホテルが視界に飛び込んできた。
男はロビーへ駆け込み、そのまま階段を駆け上がった。息を切らしながら廊下を全力で走り、ようやく自分の部屋の前にたどり着くや否や、拳で必死にドアを叩いた。
「部長! 部長! ぼったくりバーの店員が追いかけてきているんです! 早く開けてください! 部長!」
少しして、ドアの向こうから「んあ」とくぐもった声が返ってきた。
「ああ。今な、デリヘルを呼んだんだよ。あの子がシャワー終えたらもう一回戦やるつもりだから、ちょっと待ってろ」
「そんなのどうでもいいでしょう! 相手! とんでもない大男なんですよ! ああ、来る! 早く!」
「ああ、ああ、わかったわかった。えーっと、パンツ、パンツ……」
「パンツなんかどうでもいいですから! ああ、来た!」
「おー、まったくしょうがないやつだな。ほら」
「ああ!」
ドアが開いた瞬間、男は上司の脇をすり抜け、そのまま部屋のトイレに飛び込んだ。
上司は呆れたように鼻から息を吐くと、廊下に視線を向けた。その直後、店員がぬっと姿を現した。
「どうも。ここに男が来ませんでしたか」
店員は相も変わらず凄みのある低い声で問いかけた。
「ああ、来たみたいだな」
「出してもらっても? ん、何だ、この匂い……」
「さっきまで楽しんでいたところだ。あんたも混ざるか? 料金はあんた持ちだがな」
男はトイレのドアに耳を押し当て、息を殺して聞き耳を立てた。声はドア越しにくぐもって細部までは聞き取れない。それでも、上司が少しも気圧されていないことだけは伝わってきた。
「あんた――きいな……」
「だろ。――たは?」
「で――ぞ」
「ほう、――あるのか。試しに見――くれよ」
「……いいだろう」
「確かに。おれ以上――だが、おれ――ないぞ」
「ほう。それはどういう――」
「おれの――はすごいってことだ」
「なら、やっ――ろ」
二人の会話が途切れたあと、湿り気のある妙な音がしばらく響いた。
男は祈るように両手を組み、がたがたと震えた。
やがて部屋のドアが閉まる音が聞こえた。
静寂が戻ると、男はようやく肺の奥に溜め込んでいた息を長く吐き出した。少しして、トイレのドアがこんこんと叩かれた。男はおそるおそるドアを開けた。
そこに立っていたのは上司だった。
「おう。追い返したぞ」
「え、あ、ありがとうございます!」
男は目に涙を滲ませ、今にも抱きつきそうな勢いで身を乗り出した。
「……でも、いったいどうやって。あと、前を隠したらどうですか」
「細けえな。だからお前は肝っ玉も小さいんだ」
「“も”って、なんですか……。それで、どうやって追い返したんです?」
「なあに、デカいのが自慢のやつは、小さくしてやればいいんだよ」
上司はニッと笑い、唇を鳴らした。
それから腹をぽんぽんと叩きながら洗面所へ向かった。
水の音がし始めて間もなく、がらがらと豪快なうがいの音が響いてきた。
さらにしばらくして、風呂場のドアが開いた。
そこから出てきたのは若い男だった。




