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宿なし竜王

帰る様子がない。


「おい」

「なんじゃ」


「お前帰る先はあるのか?」


「ないぞ」


ほほう、宿なしか。


「しばらく厄介になるぞ」


上目遣いでとんでもないこと言うな。


その時押入れからミシリと音がする。

「おー届いたか、あのクソ女も仕事はするんじゃの」


なんのことだかわからない。


押入れをイリーナが開けると、荷物?つづら?

入れた覚えはないし、そもそもあまり活用してなかったが。


イリーナは荷解きをしだす。



「わしのお泊まり道具一式じゃ。あの女が定住先決まったら届けると言っててな」


ほう。


「待て、定住?」

「そう定住」


「お泊まりセット?」

「お泊まりセット」


おうむ返しする。イリーナ。


「夜食は何かの?」


こいつまだ食うか。

いやそうじゃない。

一晩くらいならと考えていたが、定住だと?



「夜食」

「そんなものはありません」


「ふむ。では寝るかの」


当然のように押入れに入ると閉められた。



なんというか、色々疲れた。



頭を整理しよう。


缶ビールと柿ピーセット。

これで十分。

いやこれがいい。


子供の頃は辛くてしょうがない食べ物だったし

ビールも飲み始めの頃は苦いだけの汁だった。


そいうや、ビール最初に飲んだのは異世界だったな。

こっちとは比べ物にならない粗悪な出来だったが、あっちで覚えて。

仲間と飲み交わすうちに、美味しく感じてた。


強力なスキルだけで、戦い方を知らなかった俺に戦士やアーチャーが色々教えてくれたな。


柿ピーは向こうにはなかったな。乾き物といえばジャーキーくらいだったな。

あれはあれでうまい。


押入れを見る。

昨日までは日常だったが、突然崩れた。

今開けたら、竜王が寝てる。


向こうでは世界を滅ぼせるとも言われた最強竜。


人の家に勝手に転がり込んで、大飯食らいの宿なし。


大変なことに巻き込まれたのに、そのギャップが面白くて笑う。

異世界の刺激とは違うが、こっちで退屈していた俺にはちょうどいい刺激か。


ビールを飲み干すと、布団を出してないことに気が付く。

竜王とはいえ、今は少女の姿。

勝手に開けるわけにもいかないしな。




こたつで寝るか。

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