天と天
長くなるなぁ…
おはようございます。
異世界生活3日目です。
かれこれ何度目の気絶でしょうか、俺は異世界生活でまだ気持ちよく目覚めたことがありません。
初めて、目を覚ました時は股間を焼かれ、2度目の目覚めは美少女に剥かれ恥を晒し、3度目の目覚めはイケメンのモーニングコール…
4度目の今、十数名のフルプレートメイルを身にまとった騎士に取り囲まれています…
俺の異世界生活イベント目白押し!
辺りを見回すと、ジュールとクロエが騎士となにやら話している。
ルネとドニ、ゾエの3人は別の騎士と離れた場所でこちらも話をしている。
俺の両隣には槍を携えた騎士が無言で立っている。こちらを見るわけでもなくジュール達の方を向いて微動だにしない。
なに…?めっちゃ怖いんだけど…?
「あの〜…?」
「「」」
「すみません…」
「「」」
「おはようございます」
「「」」
返事がないただの屍のようだ
ガチャ!
「!?」
急に無言の騎士が右手拳を胸にあて敬礼をする。
思った以上に鎧からの音が大きく驚いてしまった。屍ではなかったです。
騎士の向く先に目をやると、先程までジュール達と話していた男がこちらに向かってくる。
他の騎士と違い鎧は軽装で兜をしていない。手には身の丈を超える特徴的な槍を持っていた。
すごく怖い、武器を持っている人と相対するとマジで怖い…いきなり刺されたりしないだろうか…
「貴様が聖人か?」
男はジンのすぐ近くまで歩み寄るとジンに問いかけた。
「は…はい?そうだと伺いましたが…俺はよくわからないです」
「………ふん」
俺の返答が悪かったのか、鼻で笑ってから振り向いて再び歩き去ってしまった。
なんだよ…感じ悪いな。
向かった先で一人の騎士に声をかけた。
すると、声をかけられた騎士が「撤収!」と大声を張りあげ騎士たちは乗ってきたであろう馬にまたがり全員走り去ってしまった。
なんだったんだろうか。
「起きたか、ジン」
ジュールがこちらに歩きながら声をかけてきた。
「あの、今の方たちは?」
「あぁ、フランヴェロア王国軍の騎士達だ。このあたりで演習を行っていたらしくてな、昨晩ジンが派手に魔法使っただろう?それに気付いて話を聞かれたんだ」
あぁ〜俺のせいでしたか…
「すみませんでした」
「いや、あれは流石に誰も予想できなかった。幸い騎士団の副長が知り合いでな、事情を伝えたら引き下がってくれたよ。それより顔の傷は痛むか?」
「へ?」
言われて頬にふれるとズキりと痛みが走った、口の中が切れてる。
気づかなかった。
「危険と判断して、クロエとルネが水魔法で止めたんだ」
「何から何まですみません」
「次から気をつけてくれよな、クロエの指示のもとで頼むぞ」
「はい…」
「じゃあ、そろそろ出発するから準備してくれ」
ジュールはそう言うと自分の荷物をまとめるために去っていった。
俺、この世界に来て気絶してばっかだな…
しょぼくれながら荷物をまとめているとクロエとゾエが声をかけてきた。
「ジンさん、大丈夫ですか?元気出してください。誰にでも失敗はありますから」
「まぁ、ジンのあれは失敗っていうか暴走だけどね」
「うっ…」
穴があったら入りたい。
「まぁ、誰しも初めての魔法は暴走したり失敗はするものだから!」
「ジンさんのは規格外だっただけですので」
二人は慰めてくれているのだろうか…?
恥ずかしい
「ほんとにごめん、初めて魔法を使って舞い上がったみたいで…止めてくれてありがとう」
「まぁ、まずは魔力操作から練習ね」
「そうですね、はじめが肝心ですから」
そうこうしているうちに準備を終えた。
「準備できました!」
離れた場所にいるジュール達に大声で声をかけると「出発しよう」と声がかかり一行はノルグーブル村へ歩みを進めるのであった。
■
ノルグーブル村へは残り4時間程度の道のりで、昼頃には到着する予定だ。
道中、クロエとゾエに魔力操作について教わっていた。
「魔力操作って言うのはね、簡単に言うと一つの魔法にどれだけ魔力を消費させるか調整したりすることなんだけど、熟練の魔法使いになると複数の魔法を同時に使用したり、体のどこからでも魔法を発現できるようになるの、まぁ慣れないうちは指先が最も簡単だからそこからね」
「そうですね、昨晩も指先から発動できていましたので、すぐにできると思いますわ」
「まずは、魔法を発動しないで指先に魔力を集めることから始めてみて」
「指先に魔力を集める…?」
ジンが歩きながら人差し指を立て、じっとその先を見つめている。
う〜ん…よくわからない…
「あんまりうまくいってないですね…あまり魔力が集まってないですわ」
「これぐらいなら、誰でもできるものなにのに…なぜかしら?」
「生まれてこの方魔力なんて意識したことないから、わかんないよ」
「そっか、あなたの世界、魔法がなかったんですものね」
再び指先に意識を集中してみる…が全然変わらない。
目を閉じれば、もっと集中できるかな…
目を閉じ再び意識を集中する。
お…指先になにか集まってくる気が!!
ガン!!!
「痛った!!」
前を歩くドニの鎧に額をぶつけてしまった。
「なにやってのよ!もう!」
「・・すまない…」
「いや、ドニごめん!ちゃんと前見てなかった!でも、今なにか感じた気がするんだけど!?どう?」
「…いや?全然できてないわよ」
「なんにも変わってなかったですね」
「えぇ…」
落ち込むジンにドニが慰めるように肩にそっと手を置く
「・・俺、魔力操作レベル3低い、けどできる、ジンも絶対できる。大丈夫」
あぁ、ドニ優しいなぁ…
「魔力操作レベルってなに?」
「ギルドの公式評価基準のひとつよ、武術とかもそれぞれ熟達度によってレベルで評価されるのよ」
「・・総合評価と実績で冒険者ランクに反映される」
「なるほどね、魔力操作レベル3って低いの?」
「10段階評価だから、魔力操作に限って言えば低めね、因みにあたしは8よ!」
「私は6ですわ」
「ルネが5だったわよね、ジュールが4、魔法職としては5以上は必要ね!」
クロエが得意げに話す。鼻高々に話す様は愛くるしい。
「それだけの魔力があるんだからすぐにできるようになるわよ!まぁ、私ほどになるには相当な努力が必要だけどね〜♪」
そういってクロエは指先から複数の小さな青い炎を出し、炎の形を器用に変化させる。
複数の炎をそれぞれ操作し複雑に動かしている。
「・・クロエ、流石」
「こればっかりは、クロエちゃんが天才と言われるだけあるわ」
メンバーに褒められてクロエは嬉しそうにニヨニヨ笑いながら炎を操っている
「豚もおだてりゃ木に登る〜」
「誰が豚ですって!」
ルネがおだてに乗ったクロエを茶化し、いつもの喧嘩が始まる。
道中何度も見た光景だ。
ルネがクロエの炎に追いかけ回されているところを皆で笑って見ていると、ゾエが思い出したかのように話始めた。
「あ!クロエちゃん!魔力操作のことなのですが、熱を出した子供に親御さんが魔力を流してあげて魔力暴走を抑える治療法がありますよね?それでジンさんが魔力の流れを認識できるんじゃないでしょうか?」
「魔力譲渡ね!それいいかも!さっそくやってみましょう!ジン!手を出して!」
クロエがジンの側まで歩み寄り手を差し出す。
え!?手を握るの?うれし‥いや!恥ずかし…
おずおずと手を出そうとするとクロエにバッと手を捕まれた。
クロエがそのまま瞳を閉じると繋いだ手から温かいモノが流れ込んでくる。
■■スキル 魔力譲渡■■ 取得成功
■■スキル 魔力操作 レベル8■■ 取得成功
あ…コピーできたかも
それより今は、この心地良い感覚をもっと…
そんな一時も束の間に、するっと手がほどける。
「どう?」
「気持ちよかったです」
「そうじゃなくて!魔力!」
「あ、すみません…」
「わかりますよ、心地良いですよね。子供の頃思い出します」
「・・同意」
クロエに叱られ意識を切り替える。
さっき流れてきた温かいものを少しだけ指先へ…
「すごいです!ジンさんできてますよ!」
「やるじゃない!」
「・・すごい、こんなに早く」
「これなら昨晩みたいにはならないですかね?」
「そうね!ファイヤー使ってみましょうか」
■■生活火魔法 ファイヤー■■
指先に小さな赤い火が灯る。
「「「おぉ!」」」
このまま火を青くできるかな…?
ターボライターの様なイメージで…
徐々に赤い火が白み始める
「「「おぉ?」」」
このまま、火力を上げていって…
よし!青くなった!
でもクロエのような揺らめく青い炎ではなく、バーナーの先の勢いの強い火だ
「「「お?」」」
今度は勢いを弱めて空気中の酸素を集めるようにイメージする…
そうするとクロエの魔法同様に揺らめく青い炎となった。
できた!!すごい!
「「「」」」
無表情になった3人を尻目に再び両手に意識を向ける。
複数出せるかな!!
反対の手の指先を強く意識する。
■■生活火魔法 ファイヤー■■
よし!2つめ出せた!!じゃあ、他の指にも!!
そうやって、両手の指の数だけ青い炎を出した。
最後に、この炎を自在に飛ばせれば!
やば!10の炎を全部ランダムに動かすのめっちゃ難しい!
同時に同じように動かすのは、わけないけど…別々ってのが…!
「な〜ジュール…あれ見てみ」
「どうした?ル…ネ…?」
少し離れたところを歩いていた2人もジンが急に魔法をクロエ並に扱っている光景に絶句した。
「聖人ってみんなこうなんだろうな〜」
「魔力量といい魔力操作といい末恐ろしい…絶対に敵対したくないな」
呆れ慄いている2人を他所にジンは再び有頂天になっている。
「クロエ!どう?できてる!?」
「…」
「クロエちゃん…?」
「・・俺は、ジュールに報告に行く…」
浮かれているジンを他所に空気が張り詰めていく。
ゾエはクロエの様子を伺い、ドニは逃げた。
「あたしが…」
「クロエちゃん、落ち着いて?ね?」
クロエは、あまりにあっけなく自分の積み上げた努力に一瞬で追いついたジンに怒り心頭。
有頂天のジン、怒髪天のクロエ。
ドニから状況を聞いたジュールとルネが駆け寄ってくる。
「ジンの馬鹿!!決闘よ!!」
「「「「はぁ」」」」
クロエを除くパーティメンバー全員が大きなため息を吐いた。
次回、クロエVSジン お楽しみに!
ご拝読ありがとうございます。
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