クラスメイド 〜クラスメイトは僕のメイドです〜
「っていうタイトル思いついたんだけど、どう?」
「部屋に入るなり唐突になんですか。冷凍庫に頭ぶちこんで冷やした方がいいですよご主人」
机に置いた学校の課題を解きながら突然そう言った少年を、メイド服を着こなす少女はそっけなく切り捨てた。
「いや〜、でもほらクラスメイドってなんか語呂良くていいかなってヒラメいたんだよね」
「課題解きつつヒラメく思考じゃないですね」
そんなヒラメ砂の下に返してきなさい、とため息をつく少女。
「確かに私はご主人のメイドでありクラスメイトですが、自伝でも出そうというのですか?たかたが17年の若造が」
「君、同い年だよね??」
「あとタイトル的に私を使うなら事務所通してください事務所。ギャラください」
「事務所なんてないでしょ。強いて言うならおじさんおばさんたちだろうけど」
さらさらさらっと、無駄口叩きながらも手を止めない少年に、テーブルを挟んで座った少女はお盆に乗せていたアイスを差し出した。
「ありがとう、って嫌がらせかな?でろでろにとけてるぅ…」
「食べやすいように温めておきました」
「なにやってくれてんの???」
わざわざ容器に移して温めた後、戻したのだろうか。
信じられないものを見るような視線を少女に送りつつ、もはや飲み物のようにカップの中を揺らす溶けたアイスを少年はすすった。
「糖分がしみわたるぅ…」
「やった私がいうのもなんですけど、そのまま飲むんですね…」
なんだかんだ味は甘く美味しいから良いのだ。
「そういえば、ご主人」
ごくごくとアイスを飲みながら答える。
「んー?」
「ごほーし、しましょうか?」
「ブーーーーッ」
「わっ」
唐突な発言に、少年は飲みかけのアイスを吹き出した。
そしてそれは正面にある少女にかかるわけで、
でろでろにとけたアイスはバニラ味で白かった。
「わー、ご主人にぶっかけられました」
「アイスを飲んでるのに変なことをいうからだよ。
そして間違いはないけど、なんという誤解をうけそうな表現は………やめなさい」
白い液体のかかったメイド服の少女を見て、少年はなんとあうかむっつりして、目を逸らした。
「もしかして、想像しちゃいました?」
「いいからさっさと拭け」
ニヤニヤと、からかう少女へテーブルに置いてあるティッシュの入った箱をスライドさせて渡す。
「今更だけど、普段着ないのになんで本格的なメイド服に着替えたの?唐突にクラスメイドってタイトル思い浮かぶくらいには衝撃的だったよ」
「文化祭でメイド喫茶をやることになったじゃないですか。どうせなので、見せびらかそうかなって」
「把握」
「あと、ご主人の秘蔵コレクションの一つにメイドものがあったので」
「それは把握してほしくなかったかな」
「ご主人も健全な男子高校生なので、好みのシチュエーションで押せばいけるかなと」
「確かにグラつきそうではある」
「私の勝ちですね」
「へいへい、そりゃ、好きな女の子がメイド服着てたら勝ち目もないさ」
いつのまにか勝負が始まっていたらしい。
ヒラヒラと手を振って敗北宣言をする少年。
「じゃあ、汚れちゃったので洗濯してきますねっ」
立ち上がりながらくるりと振り返って部屋をパタパタと出ていく少女の耳は赤かった。
「ふっ……勝ったな」
某司令のようなポーズで勝利宣言をする少年は、ただでは転ばなかった。
ーー
「というか、すでにクラスメイドって作品あるみたいですよご主人」
「まじか」
少女は残念でしたねー、と笑った。
数年前、思いついて書きかけだった冒頭の供養