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第1話 セントレイシアの物語
その世界には、巫女という尊い存在がいる。
巫女は旅をしなければならず、旅立ちの地はかならず決まっていた。
それが、セントレイシアという町だ。
セントレイシアは、最初の巫女が誕生した土地。
だから、巫女が旅立つにふさわしい町だと皆が考えた。
巫女の力になるためと思い、様々な面で人々は助力を惜しまない。
巫女のための装備品や装飾品を作り、巫女のためになる宿泊場所を用意し。
巫女を守る護衛を育成し、巫女を癒す医療も充実していた。
しかし、たくさんの善意が正しく機能するとは限らない。
誰かのためにと動く多くの人達の中に、自分のためになればと思うごく少数の者達がいた。
頭の良いその者達は、多くの人を騙し、巫女に与えられるはずだった者たちをかすめとる。
そして、巫女のために作られた町の姿を少しずつ変えていき、自分達のための町に作り替えていった。
その町に住む人たちも、今代の巫女も知らない。
裏の者達に多くお金が入るようになり、質の良い物や高級品は巫女に届く事のないものもあるということに。
それがセントレイシアという町の、裏の顔だった。