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02-01 森中の廃墟

 2-1:森の中の廃墟


 目覚めると、意識の混乱を自覚した。


 うっすらと星の見える白みがかった空と、冷たい湿気を含んだ清浄な空気が、最初の知覚だった。


 現在の状況がわからず、事態を把握する頃には自分が今寝そべっていて、真上に空いた穴を見上げている状況だという事をようやく理解できた。


 意識ははっきりし始めても、肉体は今だ目覚めのまどろみから抜けきっていない。しかしそうこうしているうちに肉体の方も徐々に活動を始め、わたしは自身の呼吸と、静かに脈打つ心臓の鼓動を感じた。


 湿気を帯びた冷たい空気が、鼻から喉を通って肺に溜まり、全身を内から冷やしていく。


 上の穴から差し込む天然光、その反射光に照らされて、周囲には黒々とした岩肌のようなものが見え、わたしはそんな中、腐りかけの木の板や、日に焼けた布地などの中から、半身を起こした。


 ここはどうやら、洞窟の中のようだ。


 よく見れは家具の残骸と思われるものが、いくばくかの原型を残しながら周囲の地面の上には散らばっている


 わたしがいるのは、おそらくは寝台だったと思われるものの上だ。


 あたりには木片と、虫の死骸のようなものが散らばっていて、その中でわたしは裸体でいた。


 私の体は、皮膜めいた薄い油のようなものに覆われて、なまめかしい腹やら太ももやらが、光をわずかに反射していた。

 ぬらぬらと感じるそれらの四肢は、まさに生まれたての柔肌で、赤子のような透明感があった


 肌理細やかな真新しい皮膚。身にまとわりつく、まだ乾ききっていない体液。

 それらを認識してして、ようやく「ああ、わたしは転生に成功したのだな」と気づいた。


 ただし完全な成功ではないようだ。以前の記憶を思い出そうにも、何かに上書きされたように妙な記憶が邪魔をした。


 邪魔な記憶は明らかに自分のものではなくて、思考の構造が言語レベルで違っていた。


 その現状に対し、私はまず、体を再構成した際に、素材としたものの記憶が一部混じったかと考えた。


 次に、そういえば転生失敗時の保険として、外世界の魂:上位精霊を捕獲吸収して欠損を補填するシステムを用意していたことを思い出した。


 この異なる思考の持ち主は、おそらくそのどちらかだろう。


 わたしは自身の転生が不完全だったことを残念に思い、しかし保険の策のいずれかが、どうにかその失敗を補ったことに安堵した。記憶に幾分かの障害こそみられるが、少なくともわたしは己の自我を引き継ぎ、ここに存在している。


 私はかつての記憶の内、転生前の最後の記憶を呼び起こそうとして、それもどうやら思い出せないことに気づいた。


 私自身の元の姿も、当時の年齢も、人間関係も社会的なステイタスも、その大半が思い出せなかった。


 思い出せるのは、場所の記憶、地理や社会、言語に文化、それに幾つかの魔術。


 魔術。


 心がざわつく。


 わたしの心の邪魔者は、どうやら魔術に縁遠いものだったらしい。しかしそれは悪感情ではない。


 羨望。憧れ。


 魔術知識を呼び起こす際、胸の内に不自然な興奮が沸き起こる


 しかし、ざわめく心とは裏腹に、私の思考は残念に思っていた。


 興奮する奴には理解できていないだろうが、完全継承されるべきだった魔術の記憶が不完全だった。


 系統は思い出せる。


 基礎も思い出せる。


 しかしその先の発展形である各種分岐路がとぎれとぎれになっていた。


 不完全な知識は、どこまでが正確なのかもわからない。


 記憶の損失はある程度予期はしていたが、実際にわが身に起こると、それは結構なショックだった。


 一時的な記憶の欠損は記憶の連結性によりある程度復活するだろうと思われたが、それは確実性のあるものではない。


 体をねじり、洞窟の床に足をつく。


 不完全な記憶と照合してみても、どうやらここは正規に復活を予定していた場所ではないようだ


 恐らく此処は用意しておいた複数の場所の内、備蓄用かなにかの隠し倉庫の一つだろう。


 なぜこんなことが起きたのか、少し考えたが、今ここで悩むことは無駄だと思えた。記憶はあいまいだし、何より情報が不足していた。


 わたしは立ち上がると、周囲の様子を見て回った。


 床はある程度慣らしてあったが、むき出しの岩肌が水気を帯びて、かなり冷たかった。


 岩肌の冷たさは、夜の冷気を貯めこんでいるのだろう。周囲の空気は今が朝か、それに近しい時間であることを私に教えてくれていた。


 わたしはぺたぺたと、素足で洞穴内を歩き回った。


 棚があったと思われる場所に、その残骸と、置いてあったものが小山になって積もっていた。

 私がよく制作していた棚のデザインは、木製の柱、板は鉄製のものが基本だったと記憶している。朽ちた木片と錆びた鉄くずは、その記憶の正しさを裏付けていた。


 残骸の中に、色のくすんだガラス瓶がいくつか見えた。


 木屑の山の中から、わたしはそれを取り上げた。瓶は密封されており、逆さにしても中身がこぼれ出るようなことはなかった。


 薄暗い中、瓶を光に掲げてみると、それは酢漬けの野菜にように見えた


 蝋か何かで密封された金属の蓋部分を、わたしはつかむと軽くひねってみた。

 蓋は固く締まり、開く気配はない。もっとしっかりと掴んで回せば飽くかもしれなかったが、まだ腕にしっかりと力が入らない。わたしはとりあえず瓶を壁際において、他のものをあさり始めた。


 簡単に拾い取れるものは集めきった、と判断し、わたしはそれらを並べた一角を眺めた

 半分ぐらいが食料や何かが入った瓶で、他に皮の張られた大小の箱が2つ。後は工具、刃物、ガラスの棒、緑青の浮いた金属製のランプ等。

 もう少し細かく漁ればまだ何か見つかるだろうが、素手素足の状態でこれ以上探すの気が進まなかった。


 わたしは並べたものの中から、皮の張られた箱に手をかけた。元は良く鞣された皮が張られていたのだろうが、現状はひび割れた皮の残骸がどうにかへばりついているだけだ。衣類を保管しておくような木のコンテナ、のように見える。


 一抱えほどある箱はさほど重くなく、その蓋も容易く空けることができた。開封時には密閉された証拠である負圧の手応えが感じられた。


 中はきちんと区分けされており、折りたたまれた衣類に、小分けにされた革袋、手鏡に洗面具などが丁寧にしまい込まれていた。少し小振りなもう一つの箱にはサンダルとブーツ、皮の手入れ用品、工具やナイフが数本、それに薬品類や顆粒の乾燥剤などが詰まっていた。


 箱を開けて、私の中で朧げな記憶が甦る。これらの箱は、非常用の備蓄装備品が入ったものだ。

 記憶が定かであれば、箱はまだ幾つかあったはずだが、なぜか見られない。破損したか、それとも誰かに奪われでもしたか。

 ここが既に暴かれていたにしては、これらの箱が残っていたことは変だし、私の記憶の欠けた部分で、備蓄規定に何か変更があったのかもしれない。まあ、私が備蓄に手を抜いた可能性もあるが。


 私は、まずは箱から取り出した布を使い、身にこびりついた妙な滑りを拭きとっていく。


 私の現在の体は細身で、脂肪があまりついていない。痩せすぎ一歩手前、といった程度か。

 筋肉量も頼りない感じだ。これでは健康維持にも支障が出る。身の回りが安定したら、まずは簡単な訓練から始めなければ、と私は考えた。

 その後、私は箱に腰掛けて足もきれいにすると、そのまま衣類や靴を身に着けていった。

 肌着、靴下、下履きに上着、すこし寒かったので外套用の布も身に付けた。


 そうして身に着けてみると、靴は僅かにサイズが大きかった。服もそうだが、新生したわたしの体は、かつて想定していたよりも一回り小さいようだ。痩せているにしても、やはりこれは小さいと思う。


 姿見もなく、比較できるような家具などもないことからいまいち判別が付けにくかったが、手や骨格の形などから、おそらく成人まであと数年程度の、子供の体躯ではないかと推測した。

 子供といってもそれなりに生育はしていて、二十歳前の、16から18といった程度か。成長期は終わり切っていないだろうが、子供というには微妙かもしれない。


 靴には布で詰め物をし、硬く縛ればどうにかなった。服も裾を縛れは着こなせたし、肩幅などの部分は後で縫い直して調整しよう。

 わたしは木箱にあった綿の作業用手袋を嵌めると、もう少し詳しく周囲を散策しようと移動した。


 あたりの残骸を調べると、瓶や金具などをもう少し発見できたが、他に大したものはなかった。


 わたしは散策の範囲を少し広げようと、洞窟を壁伝いに進んでいこうとし、直ぐに暗くて進めなくなった。

 わたしはぼやけた記憶を思い出しながら「ともしびの魔術」の詠唱を口ずさんだ。

 すると私は、思っていたよりも強力な脱力感に襲われた。


 予想もしていなかった衝撃にかなり戸惑ったが、それでもどうにか、私は自信の指先に輝きを灯すことができた。


 新生したばかりで、身に魔力が満ちていなかった。わたしは髪をなで、手を触った。短い髪、小柄な体躯に小さな手。

 これでは何かあった時に難しいかもしれない。

 しかし戸惑いこそしたが、魔力抜けによる脱力感は、ある程度なら気合いで何とかなりそうだった。


 私は輝く指先を掲げるようにして、洞窟の中を進んでいった。


 岩肌を削った棚に、青磁の花瓶や火皿が置かれた短い通路を通って先へ進むと、直ぐに扉に出くわした。


 扉の手前にいくつか取っ手があり、それらはレバーのように動かすことができた。

 それらは典型的なロックとトラップの解除装置で、罠を適切に解除してレバーを固定しないと、扉が開かない仕組みだった。


 解除装置がこちら側にあるということは、扉の反対側には罠があるということだ。

 私は、備品などの朽ちた状態から、今もまだ罠が機能しているか疑問に思いながらも、レバーを操作して罠を解除し、扉を開けた。


 此方から押し開くように開けた片開の扉は、足元に半畳ほどの開口部をあけていた。


 どうやら扉の前に落とし穴の罠があったらしいが、ふたの部分は既に無くなっており、今はただ穴だけが残っていた。

 下を覗き込んでみると、2mあるかないかといった、さほど深くない垂直の穴の底に、数本の刃が四方から突き出ていた。中には骨のかけらがいくつか散らばっていた。肉は既に溶けきっていて、朽ちかけの装備が少しだけ残っているのが見えた。


 骨の白さが際立っていることから、最終的には地虫にでも齧り取られたのだろう。骨の量から言って数人、といった所だろうか。水が溜まっていないことから、おそらくは底のどこかに、虫が入り込める程度の排水穴があるに違いない。


 わたしは周囲を確認し、足場を整えてから大股で穴を跨いだ。


 扉の向こうは、造り的には広間のような形状だった。


 足元には手頃に加工された石板が敷き詰められており、丸だったり楕円だったりするそれら石板の隙間には、セメントが当てられて凹凸のない平らな床が造られていた。


 私は指先に魔力を込めて光量を上げ、部屋全体を見回した。


 部屋は綺麗な直線と複数の楕円で構成されていて、壁際には暖炉、岩肌くりぬきの棚や木製の戸棚、隅にはキッチンが備えられていた。キッチン隣の天井からは、しなびた野菜のようなものが吊り下げられていた。


 私は壁に燭台のくぼみを見つけると「ともしびの魔術」の応用で、指先から窪みの縁に光を置いていった。


 数か所あった燭台置きすべてに光を灯した後、中央の天井から吊られた、かつては光源が提げられていたであろう、今は何もない鎖の先端に光を置くと、部屋はずいぶんと明るくなった。


 壁際の床や棚などに並べられている調度品の類は、古びてはいたものの、一部は今も原形をとどめていた。


 戸棚の扉に彫られた草木の飾り彫りなどは、ニスこそ剥がれてざらついた木目を見せていたが、彫刻自体は使われていた当時と同じく、今も形を残していた。

 多くのものが朽ちていた寝室とは異なり、こちらのものは多くが原形のままに残っていた。天井の抜けていた寝室とは違い、此方の空間は密閉されていたためだろう。


 ただし、残念なことにこちらは略奪の憂き目にあっている。


 戸棚は開かれたままになっていた。燭台に備えてあったはずの魔術の照明はなく、物資保管用の箱も空になって部屋の真ん中に転がっている。


 戸棚の中にあった金属器は無く、残っているのは持ち運びにくそうな陶器のの食器や割れ物、かさばるもの、価値の低そうな物だけだ。

 あとは岩肌を隠すタペストリなどもそのまま残っていたが、タペストリは湿気と年季の所為で駄目になっており、触るとぼろぼろと崩れた。


 恐らくは一度ではなく、何度か略奪されたのだろう。ひょっとしたら、寝室への扉も一度ならず破られていたのかもしれない。


 広間の中央には大きな石のテーブルが残っており、なぜか椅子は無かったが、わたしはそこを起点として、広間の物資を回収して周った。


 貴重品などは殆ど残っていなかったが、燃料用の薪が少し残っていた。ありがたいことに薪の状態は良好だった。

 薪を置いた窪みに虫除けと乾燥、状態保存の魔術が施されていたのを、略奪者は気づいたのかどうか。たとえ気付いたとしても、技術的に手が出なかっただろう。こういった設置型の装置を壊さずに持ち出せる技能があれば、わざわざ窃盗して持ち出すより自作したほうがずっと簡単に儲けられる。

 知識がなくてもとりあえず壊して外してみる輩は結構存在するから、破壊されずに残っていたのは幸運だった。


 キッチン横の、くりぬき型の暖炉の通気口を確認すると、蓋が閉まっていた。石板をどかして通気を確保すると、さっそく薪を燃やしてみる。


「着火の魔術」で薪の木屑に火花を散らすが、なかなか着火しない。


 タペストリなどは岩肌の湿気で微妙に濡れていて、他に火付けに向きそうなものも見当たらなかった。普通、薪や暖炉の傍には火付け用のぼろ布や朽葉などを備えておくものだが、おそらくは傍の黒ずんだ染みがそれだったのだろう。風化で溶けて今は形も残っていない。


 薪を加工すべきかとも考えたが、私は練習も兼ねるべきと、観念して「発火の魔術」を行使した。


 頭痛と、重い疲労感を代償に発生した弱い炎に晒されて、薪は細い部分から燃え始めた。私は火を育て、数分もすると、心地よい暖気が広間を循環し始めた。


 キッチンの反対側には割れた壺と割れていない壺、それに岩をくりぬいて造られた水瓶があって、水瓶の中には水が溜まっていた。調べたところ、ここの清水の術式は効果が残っていなかったが、中の水はそれなりに綺麗だと分かった。


 広間は、私がいた寝室への扉の他、倉庫への扉が一つ、あとは外へ通じる扉が2つあった。

 倉庫は狭く、残骸しか残っていなかった。

 外への扉は、一つは勝手口として使用していたものと思われた。そちらは出入り向きではなく、おそらくは裏に抜ける為の扉で、ごみ捨てと、便所へ行くための裏口だろう。

 もう一つの外へ通じる扉は、手前に泥落としやコート掛けなどがあり、こちらは正面口と思われたが、すぐ外が腰高以上の草と密集した木々に埋もれていて、外開きの扉は開ける事さえ一苦労だった。


 私は外へ出ることをいったん諦め、室内に戻った。


 水瓶の水を汲み、キッチンの洗い場に水を溜めて、集めた道具を洗う。

 試しに「水流操作の魔術」を少しだけ使ってみたが、問題なく使用できた。

 この程度の魔術であっても、使用後には軽い疲労感と、僅かに頭痛がする。圧倒的に魔力量が足りていない。しかし魔力量の問題があるにせよ、基本的な基礎魔術は一通り使えると思って良さそうだ。


 使われなくなって久しいキッチンにはたわしも石鹸もなく、「水流操作の魔術」だけで汚れた器具を浄化するのは結構難しかった。


 たしか、寝室の箱に小型のたらいや石鹸が入っていたと思いだす。箱ごと取りに戻る。落とし穴が危険で、毎回飛び越えるのも面倒だったので、寝室の荷物も早々に此方へ移した方がよさそうだと思った。どうせ現状では寝室は寝室として機能しない。


 幸い、水瓶の水は豊富にあった。私は大胆に水を使い、石のシンクで全部の道具をじゃぶじゃぶと洗うと、それらを石のテーブルの上に並べていった。


 洗い物が一通り終わると、最後に私は裸になって、洗ったばかりの深皿で水を掬うと、キッチンの前で頭から水を何度も被った。


 水を被るたびに広間の床に水が広がり、薄く積もった砂埃と共に流れていく。私は荷物から大きな布をひっつかみ、素足でぺたぺたと石畳を歩いて移動し、暖炉の前に膝を倒して座り込んだ。


 食料として見つけられたものは、寝室に置いてあった箱の中身が殆どで、たいして量がなかった。

 まだ封を開けていないが、瓶詰めの漬物らが全部無事だったとしても、おそらく全部で一か月分もない。持って2週間か、3週間か。


 崩れたビスケットや古い栄養剤などに限れば、3日分、切り詰めてぎりぎり5日分、といった程度だろう。


 洗ったばかりの鍋に水を張ると、鍋を暖炉の火にかけ、そこへ瓶から出したものを放り込んでいく。石みたいに硬い塩漬け肉を少量、乾燥野菜、わずかばかりの香辛料。


 地理もわからない。


 まだ目覚めて数時間とはいえ、思い出せない記憶は全然蘇る気配がない。


 名前や生まれは比較的どうでもいい。


 魔術の類いが思い出せるのは助かったが、問題はここがどこなのか、さっぱり分からない点だ。


 地域の情報が全く思い出せない。


 方角は星の動きを見ればわかるだろうが、それだけだ。ここが山地なのか、平野なのかすら、調べるのに半日はかかるだろう。ひょっとしたら数日以上かかるかもしれない。


 略奪者がいたことから、そう遠くない場所に人里はあるのだろう。普通、何も知らない、何も分からない場所へ、人は行こうとは思わない。


 街道か、狩場か、少なくとも人が通って、この場所へ立ち寄ってみようと思う程度の何かはある。


 知っている場所、通い慣れた場所から、何日かけてここに来ようと考えるだろうか。


 何十日もはかけない。


 きっと、多くて数日。精々半日から一日ではなかろうか。


 つまりそれが、私がここから出て、人里にたどり着くまでの最短日数であり、希望的推測になる。


 装備を整えなければ。


 森を探索し、食糧を得るための装備を。


 私がここに倉庫を構えたのは、何かしらの理由があり、ここで復活した事にも理由があるはずだ。


 正確な理由はわからないが、危険な場所に倉庫を構えようとは考えないだろうから、それを思えば、生存確率はそう低くない筈だ。


 鍋の肉が茹ってぐつぐつと音を立て始めている。湯気には少し獣臭い匂いが交じっていた。あまり食欲を誘う匂いではなかった。


 胃の具合はどうだろう。復活していきなり強烈な獣肉は、胃腸を傷めるかもしれない。


 かといって食べるものが他にあるわけでもなし、復活したばかりの私の体は、早急にカロリーを求めていた。


 せめて私は念入りに煮込もうと、匙で鍋をかき混ぜつつ、良く崩れ溶けた具材から少しづつ口に運んでいった。




【リザルト】


 旅人の服

 丈夫な肌着(上下)

 丈夫な上着

 丈夫なズボン

 素材不明のベルト

 綿の靴下

 替えの下着・靴下 ×1set

 魔術師のローブ(軽量・防水・防寒・良通気性)

 人工革のロングブーツ

 革のサンダル(薄い 休憩・室内用)

 冒険者セット

   防水布の背負い袋(15L)

   革の水袋(2L)1袋

   金属アルマイトの水筒(1L)2本 直火可

   丈夫なナイフ べルトホルダ付き ×3

   安い着火具(やや着火しにくい)

   毛布×1(2m×2m) 留め具付き

   細い麻のロープ’(20m。三つ編みにすれば一人分の荷重を支えられる)

 食器セット(袋入り)

   木のおわん

   木の皿

   先割れスプーン(木製)

   調理用ナイフ(ステンレス製)

 ブリキのポット 蓋つき(吊り下げ鍋 2L)

 小さなランタン

 ろうそく×3(良質で太い:一本で12時間、それなりに明るい)

 簡易裁縫道具(針、糸、小さなはさみ)

 鉛筆、手帳

 多目的布巾×3

 手鏡

 石鹸

 洗面器(小型たらい)・たわし・歯ブラシ・磨き粉

 簡易医療セット(傷軟膏、胃腸薬、覚醒剤、目薬、メス(黒曜石製))

 携帯食料3日分(9食)

 岩塩300g

 革の財布(巾着)

 銀貨30枚(おそよ10万円相当)


 ※装具分(服やベルトナイフ等)を除いて、15Lの鞄にぎりぎり全部収まる。たらいは鞄に外付け。

 荷の詰め込みには工夫と時間が必要(要パッキング技術)

 詰め込んだ場合、取り出しに時間がかかる。


 鞄に外付けして背負うことも可能だが、かなりごちゃごちゃする(簡易に使用可。ただし移動にペナルティ。騒音)。


 瓶詰め食料各種 肉や野菜の漬物 古いが、保存状態は良好(塩分過多) 約50食分。



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