00, おたまとフライパンと絶叫と
ご覧下さり、ありがとうございます( .ˬ.)"
今回、本作のメインイラストはこの"00"の文中に、タイトルと共に載せておりますので、是非ご覧いただけますと幸いです。
※編集の際にイラストが消えてしまっていた時期があるようです。申し訳ございません。
では、本編をどうぞお楽しみください!
「この街はミロキエサル王国騎士団が完全に包囲した! 大人しく開門し、聖女を渡すのだ!」
その耳障りな声に、私はうんざりした表情を浮かべた。
声の主は「国家反逆だ」などと喚き続けている。
周りに居るみんなからも呆れた声が聞こえてきて、私は釣られて苦笑を漏らした。
言っている方は真剣なんだろうね、一応。
叫んでいる当人は立派な馬に乗りながら、引き連れてきた騎士団の一番後ろでふんぞり返っている。
遠くからでもこちらに聞こえるよう、ご丁寧に風魔法を使って声を大きくしているらしい。
騎士を盾にして何を偉ぶってるんだか。
(何様なのよ……ってあの人、そういえば軍務大臣って言われてたっけ?)
そんな国の中枢を担っている偉い人が来ているようだが、みんな白けているみたい。
私だってそう。
そうして私が眉間に皺を寄せていると、隣に立っていた青年が私の顔を覗き込んできた。
「おい。どうすんだ、聖女サマ?」
そう言ってライはニタリと笑う。
(もう、絶対に面白がってるでしょ……)
ライに怫然とした顔を向けた後、私は後ろを振り返った。
そこには公爵領の兵士達、それに領主である公爵様が来てくれている。
この囲壁に到着するまでの間も、多くの領民達から「大丈夫かい?」「負けんじゃないよ!」と声をかけてもらった。
その光景を思い返してからみんなに向かって強く頷くと、騎士団や大臣に見えるよう、私は囲壁の上部に姿を曝した。
大臣が「漸く出てきたか!」と声を上げる。
「選ばれた聖女だというのに、ちょっと嫌味を言われた程度で音を上げ故郷に戻って引き籠るなど、いくら聖女だろうと許されるはずないだろう! さっさと降りてこい! 今すぐ王都に戻るのだ!!」
大臣は顔を真っ赤にして、さも当然のように言う。
まるで私が悪いかのように。
言う事を聞かない子供かのように。
私はその瞬間、ブチリとキレた。
後ろ手に隠し持っていたおたまとフライパンを、大臣にも見えるように高く持ち上げると、私は目一杯振りかぶって強く打ち鳴らした。
カーーーン!と軽快な音が、この空気をぶち壊すように響いていく。
目の前の騎士達や大臣は間抜けな顔で唖然としていた。
後ろではライが、
「ディアのやつ、何であんなもの持ってんだって思ってたけど、絶対アレをやるためじゃねえか!」
とゲラゲラ楽しそうに笑っている。
……煩いな。
だって勝負事と言ったらゴング的なものが必要じゃんか。
お決まりでしょ?
私はキッとした目で下を見下ろしながら、持っていたフライパンを肩に担ぐ。
そして威張り返すように腰に手をあてた。
公爵様が用意してくれた綺麗な聖女服にそぐわなくて申し訳ないけれど、私は気品らしさの欠片もない大声で叫んだ。
「ぜえええぇぇったいに、イヤッ!!」
シンと静まり返っていたところに、私の絶叫がビリビリと響いていく。
「「「うおおおぉぉっ!!」」」
全身全霊の拒絶にみんなが湧き上がり、滾るような雄叫びを上げた。
私が戻るとライが頭をくしゃりと撫で、私の手を引く。
下では「待て! 街がどうなってもいいんだな!?」と怒声が聞こえているが、やれるものならやってみればいいと、私は笑う。
――領地全てを覆う、この結界が破れるならね。
そうして今日も、この街の門は開かれない。
『平民聖女、鎖領します!
~聖女の力に目覚めましたが、平民のくせにと馬鹿にされたので故郷のためにしか貢献しません!!~』
お読みくださり、ありがとうございます!!
珍しく話の中盤を00として入れる方法で書き出しました。
登場したメインキャラのディア、そしてディアと親しげにするライとの関係は?
お楽しみいただけますと幸いです( .ˬ.)"
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