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第五話 国境戦

 翌日、犬軍は野営陣地に留まったまま動かず、ライオン軍も動かなかった。その翌日も両軍は動かず。この二日間パンドルスはこっそりとレオの所へ行き、手ほどきを受けていた。

 そのまた翌日になると犬軍の援軍が到着し、野営陣地より出て砦へと進軍してきた。しかしライオン軍は動かなかった。

「ライオン軍はどうしちまったんだよ」

「先日の戦いでは積極的に攻勢に出っていたのにね」

「何か、別の作戦があるのでしょうか」

 このようにパンドルスたちは不審に思っていたが、彼らにはその理由がわからなかった。

 実はライオン領主が病に倒れ、ライオン軍は混乱していたのである。ライオン領主エンバルドは統率力に優れ、軍を上手くまとめていた。その彼が不在となり、ライオン軍は統一を失ってしまったのである。ライオン軍の将軍たちは作戦会議を行っていたが、話がまとまらなかった。そこでレオは状況を変えようと発言した。

「皆聞け。敵は昨日援軍が加わり士気が上がっているように見えるがそうではない。先日の戦いで敵を観察してわかったが、奴らの戦意はそもそも低い。今、こちらに向かって進軍しているが、その速度は遅く、隊列は乱れている。我らがあのような敵に負けるはずはない」

 将軍たちはレオの言葉に耳を傾け、レオはそのまま会議を主導し、さらに作戦案を提示した。将軍たちは彼に関心し、レオを臨時の指揮官とすることで団結した。レオは砦の外へ軍を展開させ、犬軍を迎え撃った。その様子を見たパンドルスは歯がゆそうにしていた。

「ライオン軍が出撃したぞ。俺たちはどうするんだ」

「また、守備じゃないかな」

「あっ、伝令が来ましたよ」

 カイルの言葉の通りライオン軍の伝令兵がルジャルク将軍の下へ向かって行った。しばらくしてルジャルクより兵士たちに出撃命令が下された。

「よっしゃ!やっとまともに戦えるぜ」

「それじゃ行こうか」

「私たちはジャック隊長の配下なので彼の所へ行きましょう」

 パンドルスたちはジャックの所へ行き、準備を終えると砦より出撃した。

 砦の外では犬軍とライオン軍がすでに衝突し戦っていた。そこへヒョウ軍が参戦し犬軍の側面を攻撃したので犬軍はその攻撃に対処するため兵力を回した結果、中央の兵力が薄くなった。その隙をレオは見逃さず突撃し中央を突破。レオは敵の指揮官目掛けて突っ込んで行き、敵の指揮官はその姿に怯え逃げ出したが、レオに追いつかれ倒されてしまった。そのため犬軍は統率を失い、徐々に敗退していった。戦いに勝利したライオン軍とヒョウ軍は砦へと帰還した。その中にはパンドルスたちもいた。

「戦いはやっぱこうでなくちゃ」

「君が前にしか進まないから僕たちは大変だったよ」

「私も付いていくのがやっとでした」

 パンドルスたちは戦いのことを振り返っていた。そこへルジャルクが現れ、パンドルスを呼び寄せ、会話を始めた。

「パンドルス君、聞いたぞ。敵の隊長をまた倒したそうだな」

「俺はまだまだ余裕ですよ」

「さすがだな。さて、話が変わるが犬軍は大将を失って本国へと引き揚げ、ライオン軍は西方の敵に対処するためここを離れるだろう。犬国は手痛い敗北を受けたのでしばらくは侵攻してこないだろう。そこで私は報告の為、領主の街へと行くのだが君も来ないか」

「えっ、俺がですか」

「君は今回、我が軍一の功労者だ。論功行賞は領主の街で行われるから君にはぜひ来てほしいのだが……」

「将軍、リーダスとカイルも一緒に行っていいですか」

「君の友か。彼らの功もかなりのものだからな。もちろんだ」

「ありがとうございます」

 パンドルスはルジャルクとの会話を終えるとリーダスとカイルの所へ戻ってきてルジャルクから聞いた話を二人に聞かせた。

「いきなり、領主の街に呼ばれるなんてすごいね」

「私、信じられません」

「それが本当なんだって。明日出発だからな。準備しとこうぜ」

 二人は半信半疑のようであったが、事実だと確信すると喜び合っていた。彼らは明日の出発に備えて荷物をまとめ、自分たちの指揮官ランベムに挨拶をし、明日を待ち望みながら眠りに就いた。しかし、パンドルスは寝ておらず密かに兵舎を抜け出し、レオの所へと向かった。レオは一人で考え事をしているようであったが、パンドルスが来たことに気が付くと二人は会話を始めた。

「パンドルス、ここでお別れだ」

「そうだな。俺は領主の街へ行くんだ。レオは?」

「俺はどうやら領主になるらしい」

「えっ!」

「今回の戦で現領主が引退し、その後を俺が継ぐことになった。領主となれば、お前とこうして会うことはできないだろう」

「なら、俺も領主になってやる」

「ほう、確かに互いに領主となれば会えるな。ならば期待しているぞ」

「おう。その時はリベンジさせてもらうぜ」

「そうか。次に会う時が楽しみだな」

 二人は次の再会を期待しているようであった。やり取りを終えると二人はそれぞれ元居た場所へ戻っていった。

 翌日、パンドルスたちはルジャルク将軍の部隊と共に領主の町に向かった出発した。ここから領主の街までは四日ほどかかる距離であった。しかし兵士たちには疲労があったので休みながら進んでおりもう少し日数がかかりそうであった。けれど不思議なことにパンドルスだけは疲労が殆ど無いらしかった。

「みんな、だらしないな」

「今回は君が異常なのかもしれないな」

「私たちも結構しんどいです」

「そうなのか」

「だから、あまり他の兵士を悪く言うなよ」

「わかった。なら余裕がある俺が皆を助けないとな」

 そういうわけで彼は他の兵士の荷物を代わりに運んだり、水などを率先して確保したりしていた。パンドルスは全く恩着せがましくなかったので、兵士たちから感謝され、好かれるようになっていった。そうこうしているうちに領主の街へと到着した。

「ここが領主の街か。でかいな」

「僕たちが兵士になったあの町の倍以上はあるね」

 パンドルスたちが街の様子を眺めているとルジャルクが近づいて来た。

「私は領主へ報告しに行く。論功行賞は明日行われるだろうから、今日は自由に行動するといい。気が済んだら町の中央辺りにある駐屯地へと行くといい。」

 パンドルスたちはルジャルクの言葉に従って彼らと別れ、街を見物することにした。

「人も建物も沢山あるし、食べ物も色々あるな」

「ヒョウ領の中心地だからね」

「領内で生産されたものの殆どがここに集まるらしいです」

「へぇー。見ろよ。ここにも世界樹の苗木があるぜ」

 パンドルスの言葉の通り街の中心には世界樹の苗木があった。それは彼らが前まで居た町のものより大きかった。

「興味津々だね」

「だってあそこから命が生まれるんだぜ」

「私も興味があります」

「ほらな、カイルだって興味あるみたいだぜ。リーダスはなんとも思わないのかよ」

「僕だって興味はあるさ」

「なら近くに行ってみるか」

 パンドルスの言葉に従って彼らは街の中央に向かって歩き出した。街のあちこちでは人々が忙しく生活しており、活気に溢れていた。

「そういや、腹が減ったなぁ。なんか食べようぜ」

「やれやれ、相変わらず君の目的はコロコロと変わるな」

「あそこはどうでしょうか」

 カイルはパンドルスの言葉を受けた時に辺りを見回し、すぐさま肉料理屋を見つけ、それをパンドルスに教えた。

「さすがカイル。いい所見つけるな」

「私もお腹が減っていたんです」

「二対一だな。リーダス」

「仕方ない。それじゃ、行こうか」

 パンドルスたちは肉料理屋へと入って行き、そこで食事を済ませた。

「美味かったな」

「そうですね」

「この後はどうするんだ。パンドルス」

「えーっと、あそこに面白そうなものがあるぜ。行ってみよ」

 パンドルスは世界樹の苗木を見に行こうとしたことを忘れたらしかった。その為かリーダスは軽く呆れているような素振りを見せたがパンドルスの言葉に従った。彼らがそうして街を見物していると夜が近づいてきたので、彼らは駐屯地へと向かった。

「今日は面白かったな」

「そうですね」

「君は何が一番印象に残ったのかな」

「それはあれだよ、あれ。えーっと……」

「鍛冶屋さんですか」

「おう、それそれ」

「なんで君が答えられないことをカイルが答えられるんだ」

「それは……」

「それはもちろん俺たちが親友だからだよ。なっ」

「はい」

 カイルは何故か顔を赤らめ、か細い声で返事した。

「リーダス、お前だって知ってて聞いたろ。意地悪な奴だぜ」

「どうかな」

 リーダスは返答を濁したようだった。彼らが話しているうちに駐屯地へと辿り着き、ルジャルクと再会した。

「君たち、街はどうだったかな」

「最高でした」

「そうか、明日はもっと良いことが起こるかもな。今日はもう寝たほうがいい」

「わかりました」

 パンドルスたちはルジャルクの言葉に従って兵舎へと入り、そこで明日の朝まで眠った。

 翌日、パンドルスたちは領主の館前へと集合した。そこには多くの兵士たちが集まり整列していた。パンドルスたちを含めた先の戦の功労者たちは前列におり、その前に向かい合う形で将軍たちがいた。しばらくすると見知らぬ人物が現れ、パンドルスたちの前へと進んで来て発言した。

「我は現在ヒョウ領主を務めているフィルマスだ。この度の戦いで目覚ましい活躍をした貴公らにふさわしき栄誉を与えよう。まずはパンドルス。前へ」

「はい」

 パンドルスは緊張しながらもフィルマスの前へと進んだ。

「貴公は今回、敵の隊長級の者を二人も倒した。その功績により今日、貴公を将軍に任命する。」

「ありがたく頂戴します」

 パンドルスは将軍であることを証明する剣を領主より受け取り、退いた。彼は嬉しさを包み隠し切れないようであった。論功行賞はその後も続き、多くの者が表彰され、リーダスとカイルは隊長となった。論功行賞が終わった後、パンドルスはルジャルクから将軍についての説明を受けていた。

「そんなにやらなきゃいけないことがあるんですか!」

「何も一人でやれとは言っていないさ。君には友達がいるだろ。それに君の下には新たに多くの兵が所属することになる。彼らと協力して事に当たるといい」

「なるほど。わかりました」

 ルジャルクと話しを終えたパンドルスはリーダスとカイルの所へ行き、ルジャルクから聞いた話の内容を伝えた。

「つう訳で、二人共俺に力を貸してくれ」

「もとよりそのつもりだよ」

「私もパンドルスの下で働きます」

「ありがとな、二人共。さて他の奴らのことも確認しておくか」

 パンドルスは与えられた仕事をこなす為、自分の配下に組み込まれた部隊の兵士たちと交流し、彼らについて知っておくことにしたのだった。

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