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第四話 レオとの出会い

 ソリシュラ砦へと進軍して来た犬軍は砦から離れた所に野営陣地を築き始めた。その様子を見ていたパンドルスはもどかしく思っていた。

「なんで将軍は攻撃しないだ。今がチャンスだと思うんだけどな」

「将軍には将軍の考えがあるだろうし、今回は攻めよりも守りが重要だからね」

 その日は犬軍が砦の南側に野営陣地を築き終えたこと以外、目立った動きはなかった。

 翌日、敵は砦へと押し寄せ、ルジャルクは砦の各所の守備を固めさせ、パンドルスたちは砦の門へと配置された。

「そろそろ出番だと思ったら守備かよ」

「門の守備は重要だよ」

「俺は守るより攻めるのが好きなんだよ」

「パンドルス、落ち着いて」

 パンドルスたちが会話していると砦の門の守備隊長が現れたので彼らを含めた兵士らは整列した。

「お前ら、俺がここの隊長のジャックだ。門の守備を任された以上、命を懸けろ。いいな!」

 ジャックの号令により兵士たちは勇み立ち、門の守備を開始した。しかし、敵は門を突破しようと戦力を集中しているようであった。パンドルスたちは城壁の上から敵軍の攻撃を食い止めていたが明らかに劣勢に見えた。

「このままだとやばいな。よし、こうなったら……」

「パンドルス、何をする気だ」

 リーダスの言葉が終わらないうちにパンドルスは城壁の上から敵軍の中へと飛び降りた。敵軍は死体が降ってきたのだと思って気に留めなかったが、驚くべきことにその人物は生きていた。パンドルスはどうやら飛び降りる前に敵軍の隊長を見定めていたようで、その人物に向かって突撃して、敵軍の隊長を瞬く間に切り倒してしまった。敵軍の兵士たちは隊長が倒されたことにより混乱し、逃げ始めた。その時、ジャックは一部の兵を率いて門から出て敵を追い散らし、敵が遠く離れると再び砦の中へと入った。その時パンドルスも一緒に砦へ戻った。

「誰だ。城壁から飛び降りて敵の隊長を倒したのは」

「俺です」

 ジャックの問いかけに対してパンドルスは自信満々に答えた。

「お前か、たわけ者は。無茶しおって、本来なら軍法違反だが、今回は不問にしておく。だが、個人的には高く評価するぞ」

 怒られたのか褒められたのかよくわからない評価であったのでパンドルスは戸惑っていた。戦いは継続していたのでその後も彼らは戦い続けたが、パンドルスの活躍により犬軍の攻撃は停滞し、夜が近くなると敵は陣地に引き揚げていった。その夜

「パンドルス。今日のようなことは二度とするなよ」

「わりぃ、体が動いちまったんだよ」

「全く、無事だったからよかったけど」

「すまね。今度は一緒に行こうな」

「そういう問題じゃないんだけど。まぁいいか」

「リーダス、カイル、おやすみ」

 パンドルスはそう言うと静かになった。二人が顔を覗き込むとすでに寝息をたてていた。

「疲れていたんですね」

「そうらしい。僕たちも寝るとしよう」

 翌日も砦において攻防が継続されたが、敵国に動きがあり西方より援軍が向かっているとの情報が入った。しかし、それと同時に猫王国のほうでも援軍が近づいているとの報があり、その夜、援軍が到着した。パンドルスは援軍を眺めていた。

「おいおい。あの軍はなんだよ」

「あれはライオン領の軍だよ」

「ライオン軍は国内最強らしいですよ」

「マジかよ。明日が楽しみだぜ」

 彼らは明日を楽しみにしながら眠りに就いた。一方、軍の指揮所にはライオン軍の領主エンバルドが到着し、ルジャルクと対面していた。

「援軍要請に応じていただき感謝します」

「国土が荒らされるというのは女王陛下の威光を汚すものであり、看過できるものではない。しかし、君たちヒョウ族の軍は情けない。あの程度の敵に苦戦するとは」

「面目ありません」

「明日は我々ライオン軍が指揮をする。よいな」

「承知しました」

 そう言いながらもルジャルクは悔しそうにしていた。こうしてライオン軍が作戦を指揮することとなった翌日のこと、ヒョウ軍は全て砦内で待機させられ、ライオン軍は砦の外へ出て、敵軍との決戦に臨んだ。

「なんでこうなるんだよ。俺たちは留守番かよ」

「どうやら、指揮権がライオン領主に渡ったみたいです」

「地位的にはルジャルク将軍とライオン領主ではかなり開きがあるからね」

「ちょっと俺、将軍に文句いってくる」

「私に何か用かな?」

 突然聞きなれぬ声が聞こえたので彼らは驚き、声が聞こえた方に顔を向けるとそこにはルジャルク将軍がいた。

「将軍、失礼しました」

「構わんよ。それよりパンドルスとは君かな」

「はい」

「なるほど。ジャックの言うとおりだ。ところで君は今の状況に不満があるらしいな」

「そうです。なんで俺たちがライオンの言いなりなんですか」

「それは社会的地位というものだよ。それよりも君のその真っ直ぐさ、気に入った。今からジャックと数十人の兵士たちを出撃させるのだが、君もそこに加わらないか」

「本当ですか」

「私は冗談を言わないよ。それで君の返事は」

「はい。出撃させてください」

「よし、なら決まりだな」

 そう言うとルジャルクはジャックを呼び、命令を下した。ジャックらは喜び勇み、パンドルスたちも彼の兵士たちの中に加わり、砦より出撃した。彼らが戦場へ出てみるとすでに犬軍とライオン軍が戦っていた。ジャックたちは犬軍へ突撃、パンドルスはリーダス、カイルと共に敵を倒しながら敵の隊長らしき者を探していた。するとライオン軍の兵士らが彼らに気付き、嫌な顔をしていた。パンドルスはそれに気付いていないようで、ひたすら敵の隊長を探し続けていた。

「おい、リーダス、カイル。見つけたか」

「いいや」

「あっ、二人共あそこに」

 カイルが指差す先を見てみるとそこには犬軍の隊長らしき者がいた。その者は兵士の守りの中におり、簡単にはたどり着けそうになかった。それでも彼らはそこへ攻撃を仕掛けた。しかし、多勢に無勢で囲まれてしまった。

「これはまずいな。どうする」

「ひとまず、敵の隊長は諦めて逃げよう」

「あちら側は包囲が薄いです。あそこから突破しましょう」

 彼らが立ち往生しているとライオン軍の部隊がそこへ突撃してきた。その先頭にいたライオンの隊長らしき者は真っ先に敵陣へ突っ込んでいき、敵の隊長と戦い、あっさりと倒してしまった。その雄姿を見ていたパンドルスはその人物に深く興味を抱いたようであった。

 さて、隊長の敗れるのを見た敵軍は崩れ、敗走していった。ライオン軍は敵軍を追撃せず砦へ戻ってきた。ジャックやパンドルスたちは彼らよりも先に砦へ帰還していた。

「なぁ、あの時のライオンの隊長かっこよくなかったか?なんか俺、心奪われちまった」

「そうかな?」

「私たちは彼に救われましたからね」

「そうじゃなくて。なんかこう胸がドキドキするんだよ。あー、駄目だ。会いに行ってくる」

「やめておいた方がいいですよ。ライオン族はヒョウ族を見下しているらしく、仲が悪いようです」

「パンドルス、君も見ただろ。彼ら僕たちを白い目で見ていたぞ。歓迎されないに決まってる」

「俺の心の高鳴りはあの人に会わなくちゃ静まりそうもねぇ。俺は行くぜ」

 パンドルスは二人の制止も聞かず、ヒョウ軍の兵舎を飛び出し、ライオン軍の駐屯地へと走っていった。パンドルスは彼が会おうとしている人物がどこにいるのかわからなかったが、なんとなく進んでいくとライオン軍の天幕の一つへと辿り着いた。その中へ入ろうとしたが、ライオン軍の兵士に見咎められた。

「おい、お前。ここで何をしている」

「えーっと、人を探しているんです」

「ここはお前が居ていい場所じゃない。さっさと帰れ」

「どうした、何かあったか」

 パンドルスと兵士が会話していると天幕の中から一人の者が出て来た。その人物はパンドルスが戦場で心奪われたという者であった。兵士は彼に向かって報告した。

「将軍、この者不審です」

「お前はヒョウ軍の兵士だろ。何故ここにいる?」

「あ、あなたに会いたくてきました!」

 パンドルスの言葉に二人は唖然としていたが、兵士は我に返ってパンドルスを追い出そうとした。するともう一人の者がそれを遮って言った。

「いや待て、その人物は俺に用があるらしい。なら話を聞いてやろう」

「ですが……」

「俺のことは気にしなくていい。さぁ、行こうか」

 そう言うとライオン族の者は兵士を待機させ、パンドルスと共に人気のない場所へと移動した。

「さて、自己紹介がまだだったな。俺はレオ。君は?」

「俺はパンドルスって言います」

「そうか、パンドルス君か。たしか君は今日戦場にいたな」

「えっ!」

「あの時、敵が君たちに気を取られていたから俺たちの突撃は成功した。感謝する」

「いえ、それよりもあなたの戦い方、見事でした。どうやったらあんな風に戦えるんですか」

「俺は幼い頃から戦場に身を置いて敵味方問わず、戦い方を学んできた。つまり経験だ」

「それを教えてもらうことはできますか」

「君は変わっているな。我々ライオン族とヒョウ族は昔から仲が悪く、互いに毛嫌いしているが、君は違うようだ」

「俺は田舎者でよく知らないんです」

「そうか」

 レオはそれまで密かにパンドルスが何者なのか探っているようであったが、パンドルスに危険がないと悟ったようであり、初めてパンドルスへの警戒を解いた。

「よし。ならば俺の知っていることを君に教えよう」

「ありがとうございます」

「だが、その前に一つ手合わせ願おうか」

「いいんですか。よろしくお願いします」

 パンドルスとレオはその場で試合を始めた。パンドルスは積極的にレオに攻撃を仕掛けたがレオはその全ての攻撃を見事に回避し、パンドルスの攻撃は全く当たらなかった。パンドルスは焦ったのか大きな隙を見せてしまい、レオはその隙にカウンターをお見舞いした。パンドルスは急所を突かれ、仰向けに倒れた。

「すげー。手も足も出ないなんて」

「君は負けたが、いい動きだった。俺が教えることを覚えればもっと強くなれる」

「それは楽しみだ」

 その後パンドルスはレオから戦いに関する知識を教えてもらい夜が深まってきたので、パンドルスはヒョウ軍の兵舎に帰ることになった。

「また会いに来てもいいですか」

「いいぞ。俺も君に興味が湧いた」

 二人は別れ、パンドルスは自分たちの兵舎へと戻ってきた。そこにはリーダスとカイルがいた。

「お目当ての人には会えたのかい」

「おう、会えたぜ。いい人だったよ」

「よかったね」

「二人共、心配させて悪かったな」

 彼らは軽く愚痴を言いながらも楽しそうにしていた。彼らはその後寝床に就き、明日を待った。

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