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第十一話 異能力者

 ライオン軍、ヒョウ軍はそれぞれ所定の位置へと向かいカバ軍に対して夜襲を仕掛けた。レオは先頭に立って兵を指揮し敵陣に突撃したが、彼は急に立ち止まり、兵士たちは不審に思ったのかレオに問いかけた。

「領主、どうかしたんですか」

「何かおかしい。ここはどこだ」

「何を言い出すんですか。水場近くの敵陣地です」

「いや、違う。先日来た時はこのような地形ではなかったはずだ。敵に何か策があるかもしれん」

「敵が陣地を強化したのでしょう」

「そうではない。ここは地形ごと変わっている。しかもこれは我々にとって不利だ。急ぎ退却するぞ」

 しかし、レオが退却命令を下す直前、敵軍の咆哮が聞こえ、カバ軍が現れてライオン軍を包囲してしまった。ライオン軍は不意を突かれ絶体絶命となりレオも状況を打開できなかった。

 一方、パンドルスはレオの作戦通り、指定の位置にて待機していたが、何かソワソワしていた。

「おかしいな。レオの作戦通りならそろそろ敵がこっちに逃げてくるはずなのに」

「領主、報告です。ライオン軍が敵軍の包囲を受け、危機的状況に陥っているようです」

「何!ライオン軍を助けに行く。出撃だ!」

 報告を聞いたパンドルスはすぐさまライオン軍の元へと向かった。そこでは報告通りライオン軍が包囲攻撃を受けていたので、パンドルスは軍を率いてカバ軍へと突撃し、ライオン軍を窮地から救った。

 彼らはそのまま戦場を離れようとしたが、驚くべきことが起こった。なんと地面がグニョグニョと動き出したのである。しかも土が彼らに覆いかぶさろうとしてきた。これを逃れることはできないと判断したパンドルスは仕方なく、炎の力を使用し、土を蒸発させた。

 兵士たちはその出来事に驚いていた。パンドルスは全軍をそのまま退却させていたが、行く手にカバ軍が現れた。先頭には一人屈強な者がおり、パンドルス軍へいきなり呼びかけた。

「我が名はフィポリタス。カバ軍の指揮官だ。先ほど我が術を防いだ勇士は何者だ。姿を見せよ」

「それは俺だ。」

 カバ軍の指揮官だと言うフィポリタスの質問を受け、パンドルスはすぐさま返答した。

「お前か、俺と一対一で勝負しろ」

「望むところだ」

 そうしてパンドルスはフィポリタスと一対一で勝負を始めた。両者共に特殊能力を用いて戦った。フィポリタスはどうやら土を操る能力を持っているようで土を使ってパンドルスを押し潰そうとしていたが、パンドルスは素早く回避し、炎をフィポリタスに投げつけ、フィポリタスはそれを土で防いでいた。両者の戦いは互角に見えたが、フィポリタスには疲労が目立ち始め、遂にパンドルスの炎が直撃し、フィポリタスは派手に吹き飛んだ。フィポリタスは立ち上がりながらパンドルスに話しかけた。

「見事だ。名は何と言う?」

「俺はパンドルスだ」

「パンドルス。覚えておこう。今回は我々の負けだ。だが次は我々が勝利する」

 フィポリタスは軍をまとめると本国へ向かって撤退していき、ヒョウとライオン共同軍の勝利が確定した。両軍は要塞へと戻り、勝利を祝った。ライオン軍の兵士たちはヒョウ軍に命を救われたので彼らに深く感謝していた。その夜、パンドルスはレオと二人で過ごしていた。

「パンドルス、あの炎は何だ?」

「うーん、あれは……」

パンドルスはレオに自身の能力について隠さず教えた。

「なるほど、そんなことがあったのか」

「そうなんだよ。それにしても他の国にも能力者がいるなんて。もしかしたら他にもいっぱいいるかも。となると大変だな」

 パンドルスは何か一人で口走っていた。レオはそんなパンドルスをじっくりと見て何か考えているようであった。

「パンドルス。試合をしないか」

「えっ!そうだな。やってみるか」

 そうしてパンドルスとレオは試合を始めたが、内容はパンドルスの圧勝と言えた。レオの攻撃はかすりもせず、パンドルスにはレオを倒すチャンスが何度もあったが、彼はわざと試合を長引かせた。しかし、レオはパンドルスが本気でないことに気付き、途中で戦うことを止めた。試合が終わるとレオはパンドルスに背を向けたまま話しかけた。

「パンドルス、とっくに俺を超えていたな。もうお前は俺に構わず進んでいけ」

「レオ、俺は……」

「じゃあな」

 レオはそのままパンドルスから離れていった。パンドルスは彼に何を言えばいいのかわからずその場に佇んでいた。レオが見えなくなると彼は自陣へ戻り、リーダスにレオとの事を話した。

「俺はレオを超えたことがうれしかったが、それ以上に悲しかったんだ。俺はレオといつまでも競い合う仲でいたかったが、急に強くなり過ぎた」

「君は今度ユキヒョウ領主と競い合うべきじゃないかな」

「そうかもしれないけどよ。俺はレオと……」

 パンドルスはかなり残念そうにしていたがそれはレオも同じようであった。彼もパンドルスとの差に驚き、自身に失望していた。彼はどうやらパンドルスと同じ力を望んでいるように見えた。

 翌日、ライオン軍の一部を要塞の守備に残し、他は帰還することになった。パンドルスは道中、レオと接触しようとしたが、彼はパンドルスと会おうとしなかった。そのままパンドルス軍はヒョウ領へと無事帰還した。今回の戦によりヒョウ族とライオン族の友好は深まったがパンドルスとレオの関係はわからなくなってしまった。

 パンドルスはその後、領主としての仕事を日々こなしたが、レオのことが気にかかっていた。彼はレオ宛に何度か手紙を送ったが、レオの返書の内容は公的なもので彼が求めているようなものではなかった。パンドルスはレオとの関係が悪化したと考え気持ちが沈み込んでしまいそうであったが、仲間の助けにより持ち直した。

 ある時、パンドルスは軍を率いて南の国境へと向かい、犬軍を打ち破り領土を広げた。パンドルスは領主の街へ帰る途中でリーダスに話しかけていた。

「リーダス。いい機会だ、俺たちの村に寄って行かないか」

「突然どうしたんだ」

「いいだろ、別に」

「じゃぁ、軍の大部分は他の将軍に任せて僕たちは村に行こうか」

 そうしてパンドルスとリーダスは少人数で彼らが育った村へと向かった。パンドルス村に到着すると両親に挨拶しに向かった。

「ただいま。母さん、父さん」

「パンドルスなのか」

「おかえり。パンドルス」

 彼の両親は突然の来訪者がパンドルスだとは夢にも思わなかったようでうれし涙をこぼしていた。パンドルスは両親に自分の活躍について聞かせていた。

「村から出ていった時は伝説の兵士になるって言ってたけど、もう領主だぜ」

「パンドルスがここまでだったとは、わしたちも思わなかったよ」

「俺自身も驚いてるぜ。でも俺はまだまだ行くぜ」

「パンドルスが満足するまで続けなさい」

「ところで、母さん、父さん。俺と一緒に街に行かねぇか?」

「また急にどうしたんだ」

「母さんも父さんももう働けないだろ。だから村の人に助けてもらうよりも俺が直接助けたいんだ」

「そうか。お前の言う通りかもな」

 パンドルスの両親は彼の言葉に従って領主の街へ行くことになった。パンドルスは両親と一緒に世話になった者に挨拶して回り、リーダスと合流して村を出発した。村を出発した少し後、リーダスはパンドルスに語りかけた。

「パンドルス。君も寂しがり屋だな」

「そうかもな。でもやっぱり後悔する前に色々やっておきたいんだ」

「僕もそう思うよ」

 パンドルスたちはそのまま領主の街へと到着し、人々は戦いの勝利を伝え聞いていたので彼らを称賛しながら迎え入れた。

 その後、パンドルスは充実した生活を送っているようであった。そこへ女王からの参上命令が届いた。パンドルスは諸々の予定を立てるため相談役のマクサヌスと話し合っていた。

「今度も前と同じか」

「どうでしょう。もしかしたら……」

「もしかしたら何だよ」

「推測ですが、新しく女王となる王女様のお披露目かもしれません」

「へぇー。なんかすごいのか、それ」

「それがその王女様の婿裁定の始まりとなるのです。王女様の婿は即ち、女王様の夫となられます。その夫は国の宰相となり国の中で二番目に偉い人物となります。そうなれば国政を左右することが容易となるでしょう」

「なるほど、そいつは良いこと聞いたぜ。ありがとな、マクサヌス」

「いえいえ」

「それで、どうやったら王女様の婿になれるんだ」

「資格を持つ者は領主だけであり、領主の中でより大きな功績を打ち立てた者が選ばれることとなっています」

「なら俺にも可能性があるな」

「王女様のお披露目にて王女様はその時点で最もふさわしい者にお声かけをなさることになっています。領主、しっかりと見ていてくださいよ」

「任せとけって」

 パンドルスはマクサヌスとの会話を終えると早速、王都へ向かうための準備を始めた。例によって彼はリーダス、ジェラヘッドらを共に選び、街を出発して十日程で王都に到着した。パンドルスが宿屋でくつろいでいるとジェラヘッドが来て彼に質問を投げかけた。

「領主、今回何故シャドニクなど連れて来たのですか?あの者は領主が将軍の時から配下に属しておりますが、訓練には出ず、戦場でも戦った形跡がありません。あのような奴はすぐに退役させましょう」

「そう言うなよ。あいつは一人でしっかり訓練して、戦場でもちゃんと戦っているぜ」

「ですが、記録がありません」

「あいつは極度のめんどくさがり屋だから報告もしねぇんだ。あいつのことは俺に任せてくれないか」

「わかりました」

 ジェラヘッドはスッキリしない顔をしていたが、その場を去った。その様子を陰から見ていたリーダスがパンドルスに語りかけた。

「以外だな。君にもそういう側面があったとは」

「皆、誰かに面倒みられながら、誰かの面倒みてるんだよ」

「確かにそうだね。けど何で彼を連れてきたんだい」

「実はあいつ体が悪くてそろそろ限界らしいんだ」

「本当かい。そんな風には見えなかったが」

「見かけはな。けど体の内部に問題があるらしい。あいつ突然打ち明けてきて最後に王都へ行って女王様に会いたいって泣きついてきたからさ」

「そういうことだったのか。人の死はある日突然やって来るからね」

「俺はまだまだ死ぬつもりは無いからな」

「僕も同じさ」

 パンドルスとリーダスはそのまま会話を続け、彼らはその後色々なことをしてその日を過ごした。

 翌日、領主たちが王都へと集まったので謁見が開始されることとなった。パンドルスはふとリーダスに自身の目的を明かした。

「俺は王女様の婿になってそして、宰相として国を動かすんだ」

「目的が具体的になったね。しかし、君は愛も無く人と結ばれようとしているのか」

「愛っていうのは俺にはまだよくわからねぇんだ」

「功績だけで王女様の婿が決まるとは思えないけどね」

「それ以上言うな。そろそろ時間だ」

 リーダスはまだ何か言いたそうにしていたが、パンドルスは彼の言葉を押しとどめ、静かに王城へと進入していった。

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