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第十話 共闘

 パンドルスが王城内部へと進入するとそこは広間となっていた。パンドルスは他の領主たちが到着するまでそこで待機するよう言われ、暇つぶしにそこらを眺めていた。そこへライオン領主レオが現れた。パンドルスとレオは互いに見つめ合って微笑み、再会を祝した。

「久しいな、パンドルス」

「会いたかったぜ、レオ。俺は約束通り領主になったぜ」

「さすがだな。体つきも以前より良くなっている」

「毎日修行しているからな。なんなら、今から試合するか?」

「そうしたい気持ちは山々だが、ここは王の居城だ。やめておこう」

「そうだな。それよりも……」

 パンドルスとレオは共に喜びを隠しきれずに少しの間談笑していた。そうしていると他領主たちも集合し始めたので、二人は話を切り上げることにした。

「そろそろ始まるな」

「そのようだ。では話の続きは謁見を終えてからだ」

「おう」

 パンドルスとレオが話を終えてからしばらくして、領主たちが全員揃い、彼らは女王の間へと進んでいった。女王の間の中央奥に玉座に腰かけた女王がおり、その左右には大臣たちが並んでいた。それは中々の威圧感があった。領主たちは静かに女王の前まで進んでいき、ひれ伏した。女王は彼らを立たせ、大臣たちが話し始めた。

 この時、パンドルスは場の雰囲気にのまれ固まっていたが、相変わらず好奇心は盛んで辺りを見回していた。彼は辺りをキョロキョロと見ていたが、大臣たちの話が終わり、女王が言葉を発しようとすると慌ててそちらに視線を向けた。

「全領主たちよ、これまでの働き見事でした。今回、あなた方の働きに答え、私からあなた方に祝福を授けます」

 女王の言葉を受け、大臣たちが領主たちの前へと進み、彼らに恩賞を与え、領主たちは女王への感謝を告げた。女王は最後に領主たちを激励し、さらなる国の繁栄のため働くように宣誓させ、謁見は終了した。

 謁見後、領主たちは王城を後にした。パンドルスは緊張が解け、ほっとしているようであった。彼は退城後、レオに話しかけようとしたが、レオは別の者と話しており、彼自身も二人の人物に話しかけられたのでその二人との会話を始めた。

「君たちは誰だ?」

「私はユキヒョウ領主のミムレドです」

「私はジャガー領主ザグマーニと言います。私たちは領間で協定を結んでおりますが、そのお話をさせていただきたく存じます」

「あー、そういやそんな話あったな。けど、俺は難しいことはわからねぇんだ。だから、俺んとこの内務官と話してくれ」

「実は私たちも事務は得意ではなく、他の者に頼っております」

「そうか。なら、悪いけど話はそいつらに任せとくか。そっちの方がうまくいくだろうし」

「そうしましょう」

 三人の領主たちは事務仕事を他人に押し付け、三人で会話していた。三人とも戦いの方が得意らしく話は盛り上がった。この時、パンドルスはミムレドに何か不思議なものを感じていた。そこで二人っきりになった時、パンドルスは彼に話しかけた。

「そういやさ、最近、不思議な夢を見たんだよ。俺が犬軍と戦ってたらピンチになってよ。それで、俺の体から炎が出て敵に勝てたんだよ」

「それは本当に夢だったんですか?」

「あぁ、不思議な夢だったよ」

「もしかして、あなたが見た炎というのはこういうものでしたか?」

 そう言うと突然、ミムレドは手から白い炎を発生させたので、パンドルスは驚いた。

「似てるけど、ちょっと違うな。俺が見たのはこんなだった」

 そう言ってパンドルスは自らの手に赤い炎を現した所、ミムレドも驚いた。その後、二人は隠し立てせずに炎の力について語り合い、情報を共有した。ミムレドは自らの命の危機に瀕した際、炎の力に発現したそうであった。

「驚いたな。俺以外にも炎の力を使う奴がいたなんて」

「僕も同じ気持ちです。この力を持つのは自分だけだと思って寂しくしてきましたが、あなたに出会えてうれしいです」

「俺もだぜ」

 二人は同じ能力を持つ者として打ち解け、かなりの間語り合っていた。その様子を遠くから密かに眺めている人物がいた。彼には会話の内容が聞こえているわけではなかったが、二人の仲睦まじい様子に気後れしているようであった。パンドルスがミムレドと話しを切り上げ、一人で歩き始めると彼はそこから出てパンドルスに話しかけた。

「パンドルス、ユキヒョウ領主と何を話していたんだ?」

「レオか。まぁ、色々だ。そういえば、レオも誰かと話してたよな。何だったんだ?」

「俺も色々だ。それよりも先の手紙の内容、俺はいつでもいいぞ」

「おっ、共同作戦のことか。じゃぁ、帰ったらすぐに始めるか」

「いいだろう。ではその時また会おう」

「そうだ、レオ。いつリベンジさせてくれるんだ」

「また今度だ」

「そっか、楽しみにしてるぜ」

 パンドルスはそう言うと自身の滞在する宿へと戻るため歩き出し、レオはそれを見送っていた。パンドルスはその途中、リーダスたちと合流し、彼は王城での出来事を彼らに話しながら宿へと戻った。

 翌日、パンドルスたちはユキヒョウ領とジャガー領の者たちと対談していた。対談の内容はそれぞれの領の協力強化ということに落ち着き、パンドルスはミムレドと二人で会話していた。

「やっぱり、ミムレドも力については隠しているのか」

「はい。実は昔、父から聞いたのですが、かつて王都にて女王様に反抗した者がいるらしく、その者は炎を操ったそうです。ですから炎は悪い印象を王家に与えるかもしれません」

「そんなことがあったのか。女王様にたてつくなんて、実は他国の奴じゃないのか」

「さぁ、どうでしょう。国の歴史は王家が管理していて、詳しいことは殆ど知らないのです。それに女王様に反逆した者がいたとすれば大問題です。隠しておきたい思惑もあるかもしれません」

「中々難しいな。でも、いい印象を与えればひっくり返るかもな。おっとリーダスたちが来た。話はここまでだ。また会う時を楽しみにしてるぜ、ミムレド」

「僕も同じです」

 パンドルスたちはユキヒョウ領やジャガー領の者たちに別れを告げ、ヒョウ領へと帰還することになった。十日後、パンドルスたちはヒョウ領の街へと辿り着いた。 

 その数日後、パンドルスはライオン領へと向かい、西の国をライオン族と共に打ち倒す計画を立てた。周囲の者たちは難色を示したが、最終的にパンドルスの決断に従うことにした。

 そうしてパンドルスは兵を率いて出撃した。その途中、パンドルスはリーダス、ジェラヘッドと会話していた。

「領主の仕事は窮屈なことが多いな」

「だからこうやって抜け出してきたんだろ」

「そうだけどよ、レオを助ければライオン族とも仲良くできるかもしれないだろ」

「確かにヒョウ領とライオン領の結びつきが強化されれば、国にさらなる利益をもたらすでしょう」

「そうだよな」

「君も以前よりはよく考えるようになったね」

「俺は日々、進化してるんだよ」

 そんな風に雑談を交えながら彼らは行軍し、ライオン領へと進入した。その時、ライオンたちは少し嫌な顔をしていたが、パンドルスは気にしなかった。彼らはさらに進み、ライオン領主の館へと到着し、レオの歓迎を受けた。

「パンドルス。よく来てくれた」

「レオ。国の為、力を合わせようぜ」

「そうだな。それとここへ来るまでライオン族から嫌がらせを受けなかったか?」

「いーや、全然」

「それならいいが。」

 レオも戦の準備は完了していたので、両軍は一つとなって西側の国境へと進んだ。その途中、パンドルスはジェラヘッドから話しかけられていた。

「領主、今回の戦は難しいものになるでしょう」

「理由は?」

「領主が今まで戦ってきた地とこれから向かう地が異なるからです」

「何が違うんだ?」

「今までは平原であり、近くには要塞などの拠点があり、補給が容易でした。しかし今回は乾燥した草原であり、さらに我々の領外であるため補給が困難です」

「補給はレオが任せてくれって言ってたぞ。それに道案内だってしてくれるそうだ」

「信用できるのですか?」

「あぁ。俺はレオを信用してるぜ」

「そうですか。私は彼らを完全に信用できませんので、領主の言葉を信じることにします」

 ジェラヘッドは煮え切らない様子であったが、パンドルスの言葉を信じることで無理やり自分を納得させたようであった。さて、そのような事がありながらも彼らは目的地へと辿り着いた。そこには敵国の要塞があり、敵軍がヒョウ軍とライオン軍の襲来に対して迎撃するべく軍を展開していた。パンドルスたちは野営陣地を整え、レオたちと作戦会議を行った。

「敵軍の兵士たちはカバ族であり、彼らの戦闘力は高いが、この地は乾燥しており、彼らにとって不利である。後方の水場を抑えてしまえば、彼らは弱体化するだろう」

 レオの作戦に意義は無く、皆それに従うことにした。ライオン軍は要塞の後方にある水場へと進軍し、そこを占拠した。ヒョウ軍は要塞にいる敵軍が水場へと向かえないように進路を塞いだ。数日後、敵軍は限界がきたようで、要塞を捨てて水場を取り戻そうと出撃したが、ライオン軍はすでにそこにおらず、ヒョウ軍と共に要塞を奪い取り、入城していた。

 その夜、パンドルスとレオたちは作戦成功を祝い、食事会を開いていた。

「さすが、レオだぜ」

「敵軍は明日以降、ここを取り返そうと攻めてくるだろうが、この要塞は堅いから防衛は容易いだろう。我々は相手が疲れてきた所を狙って攻撃する」

「いいね。俺たちの力見せつけてやろうぜ」

 数日の間、カバ軍は要塞を攻めたが守りを崩せず、水場の陣地へと引き揚げていった。その様子を見ていたレオはパンドルスを呼び、彼に作戦を伝えた。

「敵は疲れており、今日は陣地で休むだろう。そこで私は彼らを夜襲する。君は我々の反対側で待機し、敗走する敵軍をさらに痛めつけてほしい」

「わかった。任せとけ」

 パンドルスはレオと別れ、自軍の元へ向かい、リーダスたちに作戦内容を伝えた。リーダスはふとパンドルスに尋ねた。

「君はライオン領主に君の本当の目的を伝えたのかい?」

「あぁ、伝えたぜ。しかも、どうやらレオも同じ目的だったらしい」

「へぇー、君たちはよく気が合うね」

「そういえば、前に言ったよな、ミムレドが俺と同じだったって」

「ユキヒョウ領主が君と同じ力を持っていることか」

「そうそう。あーあ、レオも同じ力を持ってたらなー」

 パンドルスはリーダスとそのような会話をしながら出撃の用意を整え、ライオン軍と共に静かに要塞を出発し、敵軍への夜襲を開始したのであった。


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