車内での親子の会話
公園からは結局ずっと走って家に着いた。
俺の家は前に母親がいた時からは変わらない。当時もっと子供ができた時のために部屋を結構多く作ったらしい。
あんなことがあってからは無駄に多いだけになってしまったのだが明日には家族が増えるし、よかったのかもしれない。
「あ、そっか今日早いって言ってたな」
家の横のガレージに父さんの車が止まっていた。医者をしているが今日は早いとメールで言われていた。
「ただいま」
「おう。おかえり、今日は遅かったな」
「あぁ、ちょっと色々あったんだ」
「じゃあ拓也の準備が終わったらラーメン行くか」
「うん」
今日は父さんとラーメンを食べに行く約束をしていた。父さんが仕事が早く終わった日に、たまにラーメン屋に行っていたがこれからは難しくなるかもしれないと今日行くことになった。
そして俺は身支度を済ませて父さんの車に乗り込んだ。
◇◇◇◇◇
少し離れたことろにある俺と父さんの行きつけのラーメン屋に向かう車内で俺と父さんは久しぶりにゆっくりと会話をしていた。
「それにしても、結構久しぶりかもしれないな拓也と一緒にラーメン屋に行くの」
「確かにそうかも。最近は俺も部活とバイトで忙しかったし父さんは仕事かデートだったもんな」
「で、デートってそんなに頻繁には行ってないぞ」
「そうかなー」
こうやって冗談を言う程度には俺と父さんの仲はいい。
普通よりは仲がいいという自信はある。
当時、忙しくあまり時間がとれなかったせいで俺たち家族との交流が減り、母さんが浮気をしたと言えなくもない。
状況的には確かにそうで、普通なら俺は幸せを壊した父さんのことを憎んでいたかも知れない。
それでも、父さんが陰ながらだが家族を大切にしていたのは知っていたし、あの時にあんなことを聞かされたら憎めるはずがない。
「まぁ、とりあえず父さん。再婚おめでとう」
「おう、ありがとうな拓也。でもこれからは拓也がもっと辛くなるかもしれない」
「一個訂正すると、俺が今の生活を苦だと思ったことはないよ。それにおかげで家事スキルが高くなっちまったから明日から、それが使える機会が少なくなるって考えたらちょっと寂しいかも」
「まぁ逆に考えたらもっと拓也が楽をできる。自由な時間が増えるんだぞ?俺はそれが1番嬉しいんだ」
確かに、これからは俺の家事面での負担が少なくなる。
そうなると今まで家のことで忙しかったせいで、できなかったことをやらせてやれるっていうのが父さんの考えだろう。
そう思ってくれるのはすごく嬉しいのだが、ちょっと思うところがある。
「それも裏を返したら暇になるんだけどな」
「まぁ、その時間で今までできなかったことをしてくれると嬉しいんだよ」
「じゃあいろいろ考えてみるよ」
「あぁ、そうしてくれ」
話している時に助手席から見る父さんはいつも笑っている。
普段あまり話せないからこういう時間が嬉しんだろう。
俺も嬉しいが。
車が信号待ちで止まったところで、父さんは改まって、真剣な顔を俺に向けてきた。
「拓也、あの時はあんなことを言ってくれてありがとうな。おかげで明日からが楽しみだよ。背中を押してくれてありがとう。俺のせいで無理をさせてすまななかった。俺のために無理をしてくれてありがとう」
父さんの、そんな謝罪と感謝の言葉を聞いて俺は、目に暖かいものを感じながら、2年前に父さんとこんな風に話した時のことを思い出した。
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次回は24時に投稿します。