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幼女を助ける

2人と別れたあと、俺は最寄り駅から自宅を目指していた。

 学校の最寄り駅周辺にもいろんな建物が建ってるが、ここの駅周辺もそこそこ建物が建っている。

 ここを使う度にもっと給料が高い店が来てくれないかなと思ってしまう。


 そんなことを思っていると、通りかかった公園で大型犬の鳴き声がした。


「うわーん、ママ、おねぇちゃんどこー?たすけてー」


 大型犬が吠えている先には泣いている保育園くらいの小さな女の子がいた。


「わん!わん!」

「こわいよー」


 あんなに小さな女の子にとって自分と同じような大きさの犬に大きい声で吠えられることがどんなに怖いか、そして気づいた時、俺は彼女を助けようと走りだしていた。



 いや、走りだしてしまったの方が正しいだろう。幼女とはいえ、女性は女性だ。恐怖はある。思春期をこじらせてるせいでまともに会話はできないし、あの子とは別の恐怖を感じている。それなのに、俺は何故か体が動いていた。


 でも少し考えればあの時、ここで同じように泣きじゃくっていた自分の姿と重ねてしまってほっとけなかったのかもしれない。


「大丈夫だ。今助けてあげるから」

「え·····?」


 泣きじゃくっている女の子に、少しでも安心させるように頭を撫でてあげる。

 すると女の子は最初こそ驚いたように体をビクつかせたが、安心したのか自然と体の力が抜けていった。


 でも、さすがにやりすぎたかもしれない。助けてあげるためとはいえ、知らない人に急に頭を撫でられれば別の恐怖を覚えるだろう。でもそれをすんなり受け入れてくれたということは、よっぽどの犬が怖かったのだろう。


 そして俺も幼女とはいえ、ましてや女の子を触っている。倒れるはしないものの、蕁麻疹くらいはで··········てない!?



 え!?なんで出ないの!?まさか明日から新しく家族ができるからって体が勝手に準備してくれた?いやいや、さすがにないな。


 そんな動揺しまくっている自分を抑えつつ、少し女の子の頭を撫でてから今度は犬と対面する。


「おいどうした犬、首輪をつけているのを見るとお前飼い犬か」

「わん!わん!」

「ってさすがに分からないよな。まさかお前も飼い主と離れておびえてんのか?よしよし、いい子だ」


 唸りまくっている犬をなだめめつつ、恐る恐る頭を撫でてみる。すると安心したのか少しずつ大人しくなっていった。

 そしてとりあえずリードを持ってあげる。


「わふぅー」

「いい子だ。ダメだろ。飼い主と離れちゃ」

「わう」

「お兄ちゃん?もう大丈夫なの?」

「あぁ、もう大丈夫だ。安心してもいいぞ」


 そう言うと、また女の子の頭を撫でてみる。

 やっぱり蕁麻疹はでない。


「わふ」

「大人しくなってるからもう大丈夫だぞ」

「うん、ありがとう!お兄ちゃん!」


 やばいな、悠悟の気持ちが少し分かった気がする。ちょっと、いや、かなり嬉しいまである。


「桃愛ー?」

「あ!ママー!」


 呼びかけられた方向に桃愛と呼ばれた幼女が駆け寄って行く。やっとママに会えたからなのか、すごく嬉しそうだ。

 そんな嬉しそうな幼女を見て、少し微笑んでいると急に持っていたリードを、幼女が走って行った方向とは逆方向に引っ張られた。


「わん!わん!」

「え、ちょっ」


 そして犬は猛スピードで公園の入口まで走って行く。

 俺もまた変なとこに行かないように必死に追いかける。


「桃愛!大丈夫だった?急にいなくなったらダメでしょ!」

「ママ、ごめんなさい·····でもね!おにぃちゃんがたすけてくれたの!」

「え、そうなの?でも誰もいないよ?」

「あれ?お兄ちゃんどこか行っちゃったのかな?」

「まぁ確かに結構暗くなってきたもんね、とりあえず私たちも戻りましょうか」

「うん、わかったー」


 必死に追いかけている中で反対方向で何か話している幼女親子遠目で見つつ、公園から少し離れたところでついにリードを放してしまった。


「ぜぇぜぇ·····さすがにあんまスピードについて行けねぇよバイトで体力はついたとはいえ、結構きつい」

「大丈夫か?あの犬」


 心配しつつ、犬の行方を目で追うと少し先で女子·····らしき人に駆け寄っているのが見えた。

 おそらく飼い主だろう。

 すると、その飼い主はぐったりしている俺に気づいたのか、俺の方に近づいて来た。


 やばい。さっきは助けるために自分から女子に近づいたが、普段は絶対に必要最低限は避けている。ましてや女子の方から来ることは例外を除いてほとんどないから、急に話しかけられたら対応しきれない。


「あの、大丈夫ですか?うちのぽちが迷惑をおかけしたみたいでごめんなさい」


 そう言って頭を下げて来る彼女。

 別に謝って来なくてもいいのだが、よっぽど真面目な人なのだろうか。

 さて、どうするか。


「い、いや、だ、大丈夫でしゅよ。べ、べちゅに迷惑だなんて思っちぇいないので」


 噛みすぎた。こんな風にならないように普段は女子を避けているのに。

 しかもさっきから震えが止まらない。さすがに引くよな初対面の人にこんなに噛まれたら。


 しかし、彼女は引くどころか驚いた顔をしている。


「あ、あの、もしかして霜月君?」

「え?」


 急に名前を呼ばれたが、俺はこの人に見覚えがない。

 こんな、眼鏡をかけた黒髪ロングでスラっとした清楚系美少女には。

 自慢じゃないが、俺は悠悟達以外にほとんど友達がいないので、悠悟達がいない時は少し周りを見ている。人間観察というやつだ。誰も信じなくなった影響で、人の行動に敏感になり、常に周りの状況を把握するようになった。


 すると、彼女は慌てて眼鏡を外した。


「あ、ごめんごめん。普段はコンタクトだから分からないよね。私、学級委員長の宮鶴彩花(みやつるあやか)

「そ、そうだったんだ。やっぱり眼鏡をかけてたら気づかなかったよ」

「改めてごめんね。ぽちが迷惑かけちゃったみたいで」

「い、いや大丈夫だよ。俺は」


 あの大型犬にしては随分と可愛らしい名前だが、そこには触れないでおく。一刻にも早く家に帰りたい。


「あ、ご、ごめん俺、そろそろ帰らないと。じゃ、じゃあね」

「行っちゃった。お礼したかったのにな」


 後ろから何か聞こえた気がしたが、俺は気づいてないフリをして家に向かって走った。

次回は10時に投稿します。


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