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最強の殺し屋 弟子をとる  作者: 松花 陽
2/2

最強の殺し屋が弟子をとった!?

銃弾を放つ轟音が辺りを包んだ後、その音はやがて静かに鳴り止んでいった。僕は、自分の銃を懐にしまいながら、いつも通りの無表情な顔でこの部屋を去ろうとした……その時だった。

騒ぎを聞きつけたのか、はたまた連絡で知らされていたのか、アイツらの部下たちが一斉にこの部屋に現れた。

部下たちの反応は、信じられないといった顔をする奴もいれば、酷く絶望する奴もいた。


部下達「組長オヤジさん!!北関ほっかんのカシラ!西坡せいはのカシラ!東建とうけんのカシラ!南朝なんちょうのカシラー!!」

「お前ー!よくも俺らのカシラをー!!」


そいつらは、俺に向けて敵意や殺気を帯びた目を向けながら、一斉に襲いかかった。

……だが、僕はそいつらにナイフを向ける事も撃つ事もせずに……そいつらを気絶させたのだった。


僕は、ターゲット以外の人間を殺す事はしない。たとえそれがボディーガードであったとしても……だ。僕は関係のない人を殺しはしない。それが僕の中で決めた絶対ルールだから。標的にされるという事は、それなりの罪を犯してきた奴らだ。僕が殺したこのヤクザだって、経歴を見てみれば殺人やら売買やらで悪い事をしてきた奴らばかりだった。

だから、殺されるべき人間だった。だから僕が殺した。……ただ、それだけだった。

もしかしたら、今僕が気絶させたコイツらにも、なんらかの犯罪を犯しているかもしれないが……標的ではないので無駄な血を流さずに済んだ。


佐津「さて、コイツらが目覚める前にさっさと帰るかな……」


そう呟きながら、僕は静かにその場を去るのだった。


□□□


夜ももう遅いので、そのまま帰路を辿ってまた明日報告しようかな……と考えながら僕は道を歩いていると……ある奴から携帯に電話が掛かってきた。


アイミー「どう?仕事は終わったかしら?」


かけてきたのはアイミーだった。


佐津「あー、さっき終わらせてきたとこだ」


アイミー「さすがは最強の殺し屋ね……仕事が早いわ。……それで、顔は見られなかった?」


途端にそんな事を聞かれ、僕はあの時の事を思い返しながら……。


佐津「……あった」


と正直に答えた。


アイミー「誰に?」


佐津「その組織の部下達に……一応気絶させておいたけどさ」


と付け加えるかのようにそう告げた。

すると、彼女はあっけらかんとした口調でこう言った。


アイミー「まぁ、別にそいつらに顔を見られたからといって大丈夫でしょ」


佐津「……は、なんで?」


その答えの意味が謎過ぎて、思わずそう問いただす。


アイミー「だって、あの組織は組にいた時よりも黒い所に干渉してた組織よ。そんな奴らが警察に取り合ってもらえると思う……?それに、警察なんかに頼ったらアイツらにはデメリットしかないじゃない」

「アイツらの悪行は全部バレて、即逮捕でジ・エンドよ」


佐津「……なるほど」


やはり、こういう所に頭が回るのは彼女の強みと言えるだろう。まだ二十一歳だと言うのにそんなとこまで頭の回転が働くのは凄いことだ。そういうところは、僕も素直に尊敬しているところだ。


アイミー「だから、アンタは何にも心配する事はないからね」


佐津「わかった。あ、そうだ……最後に聞きたい事があるんだけどさ」


アイミー「何かしら?」


佐津「……なんであそこがデカい組織だって事を言わなかったんだ……?」


と僕は圧をかけるような声音でそう問いただした。彼女は、わかりやすくとぼけながら……。


アイミー「あーごめん、書類の整理をしなくちゃならなくなったからまた後でね〜!」


とそこで通話を強制的に切られてしまった。


佐津「あっちょ待てよ!?……切りやがったあいつ……」


と彼女に対してため息をつきながら、また家に向けて歩を進める。……その刹那。

ふと、背後から変な気配を感じ取った。僕は殺し屋として生活してきた為、ある程度そういうスキルは身につけていた。なので、寝込みを襲われるなんて事は無かった。

とりあえず、気配がした方向を振り返ってみるが……そこには誰の姿も無かった。暗闇でわかりにくいのもあってか全然わからなかった。気のせいかと思った僕は、また再び歩を進めていった。


佐津「にしても、アイミーの奴…後で覚えとけよ。あんなデカい組織だったなんて言わなかったぞ」


そう愚痴を溢しながら僕は家を目指して歩いた。歩くこと数十分……僕はそこで、やっと動きを見せることにした。


佐津「……そこだ!」


??「うわっ!?」


後ろを振り向いてみると。そこには、ピンク色の長髪をした高校生くらいの少女が驚いて尻餅をついていた。僕は頭の上に疑問符を浮かべながら、その少女の事を見つめる。やがて、少女は立ち上がりこう言葉を口にした。


少女「ど、どうもお初にお目にかかります!私の名前は新條紗夜しんじょうさやと言います!」


と、何故か丁寧に自己紹介をし出した。

僕はさらに頭の上に疑問符が浮かび上がる。

怪しいと思った僕は、即座に懐から銃を取り出し、その女に向けた。だが、この少女は何故か、怯える事も怖がる事もなかった。

すると、次の瞬間。紗夜という少女の口から、思いがけない言葉が飛び出したのだった。


紗夜「私を……あなたの弟子にして下さい!」


……と。


□□□


佐津「どういう、事だ??」


僕は、困惑した。そりゃそうだ、いきなり変な女から弟子にしてくれと言われたのだ。わからなくて当然の話だ。


紗夜「どういう事って、そのままの意味です。私は、あなたを尊敬しているのです!ですから、貴方のような人になる為に弟子にして下さいと頼んでいるんです」


尊敬した?僕みたいになる為?僕は目の前の少女の気持ちが全く理解する事が出来なかった。まず、どうしてコイツは僕の後ろをつけていたんだ。少なくとも、僕は裏社会の人間だ。僕がいったいどういう人間なのか知らない以上、弟子にして下さいなんて事は言わない。つまり、コイツはそれを知ってる上で言っていることになるのだ。

だが待て、もしかしたら勘違いという線もあると考えた僕は、試しにその少女に聞くことにした。


佐津「一応聞くけどさ……僕がなんの仕事してるかわかる?」


紗夜「はい!殺し屋……ですよね!」


知ってたー!まさか知っているとは……。でも、何故知っているのだろうか?


佐津「君、それはいったいどこで知ったんだ?」


とさらに問い詰めてみようとしたのだが……。


紗夜「まあまあ、そんな事はどうでもいいんですよ!とりあえず、私をあなたの弟子にして下さい、お願いです!」


と少女は、地面に頭を付けてそう必死に懇願してきた。僕は、終始困惑しながら……。


佐津「一応確認のため聞いておく」

「こんな汚れた仕事に、お前は自ら進もうって言うのか??一度染まれば、もうまともな人生を送れないかもしれない、そんな真っ暗なレールを進むんだぞわかってるのか?……本当にお前はそれを望むのかよ……?」


紗夜「はい、もともとそのつもりで貴方の後ろをつけていたんですから、それぐらいの覚悟ならもうとっくに出来ています!」


と少女は、首を縦に振りながらそうハッキリと口にした。

僕は片手で顔を覆い溜め息を吐きながら……。


佐津「……どうしようか」


……と、本気で悩むのだった。


□□□


結局、あの後どう説得しようとしても、僕の弟子になろうとするものなので、体験という名目で仮の弟子にした。個人的には、殺し屋の道なんてものは歩んでほしくはなかったのだ。僕のように罪を背負う事になってしまうから、僕自身あまりお勧めはできなかった。

だから、僕はこれを機に彼女が諦めてくれるように体験という名目で仮の弟子にしてやる事にした。未だに、なんで僕の事を知っているのかはわからないが……。まあ、それはおいおい尋ねる事にしようと思った。


紗夜「ほぉ〜やはり大金をもらっているだけあって、随分と高そうな一軒家ですね」


佐津「……そうか、ただの家だがな?」


僕の住む家は、機関の場所からそう遠くなく通勤しやすい所にある。見た目普通のただの一階建の家で、玄関、リビング、キッチン、浴室、トイレ、自室、あと空き部屋が一つある程度だ。紗夜という少女は、家無しという事らしいので、その空き部屋を彼女の自由に使っていい事にした。

まあ、何か足りないものがあれば買いに行くつもりではあるが……まあそれは後で考える事にしよう。


佐津「にしても腹減った〜…」


お腹の音と共に、そう呟く。


紗夜「私もです〜……」


それにつられるように紗夜からもお腹の音がなる。すると、リビングから良い匂いが漂ってきていた。その匂いから僕は、誰が来ているのか察しがついていた。


??「おかえり佐津!」


佐津「来てたのかお前」


この黄色の可愛いエプロンを身につけたこの少女の名前は、シャルミ=キング。アイミーの妹で、昔から一緒に仲良くしていた奴だ。苗字が違うのは、アイミーが変えてるからだ。

因みに、僕は彼女のことを愛称でルミと呼んでいる。


佐津「ただいまルミ」


ルミ「あれ?その後ろにいる人は誰?」


とルミは僕の後ろで辺りをキョロキョロと見渡している紗夜に指を指して聞いてきた。

僕は紗夜のことをルミに説明しようと思ったのだが……そこでルミに異変が起きた。


ルミ「……なに、彼女?私という女がいながら、なんで……??」


佐津「る、ルミ……??」


急に感じが変容した彼女に、僕の頭は困惑でいっぱいだった。しかも、ちょっとだけルミの顔が怖くなっているようにも見えた。あれ?なんでそんなに怒ったような怖い顔をしているのだろうか?


ルミ「もしかして、浮気?」


佐津「浮気も何も、まず付き合ってないからね?」


困惑しながらも、冷静にそうツッコミをする。

ルミとは、彼女が三歳の頃からの付き合いで、昔から僕の事が大好きで良くくっついてくるそんな奴だ。それは今でも変わっておらず、よく僕をぎゅーとっ抱きしめてくる。僕の事が大好きな故か、ルミも僕と同じ殺し屋をやっている。まあ、僕よりは弱いしアイミーより優秀というわけではないんだけどな……。


ルミ「じゃあなんなのよ?」


佐津「……弟子」


ルミ「……はぁ!?」


まあ、そんな反応になるわな。と思いながら無表情な顔をする。


ルミ「弟子って佐津、いつから募集なんてしてたの!?」


佐津「募集はしてないよ、ただしつこくコイツが懇願してくるから。仕方ないから体験という事で仮の弟子にしたんだ……それに」


僕は彼女の耳元に口を寄せて……。


佐津「僕的には、あまりそっちの道には行って欲しくないからさ。だから、こういう体験で諦めてもらうようにしようかなと思って」


ルミ「ふ〜〜ん、まあわかったよ。その辺の詳しい話は、食べながらでも聞く事にするわね」

「それじゃあ、冷めないうちに頂いちゃいましょ!」


佐津「やったぁー!ルミの作るご飯だ」


と僕はいつも表に出ないような表情をあらわにしながら、ルミの美味しい手料理をいただくのだった。

面白かったら、是非高評価とブックマークをよろしくお願いします!


アイミー=キング

Aimi=King

何でも屋という闇の機関を組織する家系の長女であり超優秀な機関のトップ。歳は二十一歳ほどで、銃の腕は最強と並ぶ程の腕を持ち、仕事の速さもとても素早くスムーズに終わらしている。たとえ誰だろうと邪魔するものは容赦なく殺すらしい。あと、佐津の無表情な顔を変えるために色々とやってからかっている。元々の苗字はキングなのだが、その名前にコンプレックスを持っておりケイングと名乗っている。

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