第15話 ジャンル論
【1】ジャンルとは
ジャンルは読者が作るもの;こういう作品が読みたいという願望の集合体
∴常に新しいジャンルが生まれ続ける
ジャンル論に答えはないけれど、読者のニーズを見極める意味では無意味ではない。
ジャンルは、ある意味読者との約束ともいえる。
ただし、ジャンルとしての面白さ≠小説としての面白さ
ジャンルとしての面白さ+小説としての面白さの総合評価になる。その比重は作者の悩みどころ。
【2】ミステリ
私の定義:『論理による推理の過程』がテーマである作品
※犯罪捜査には限られない
(2)本格・新本格
諸説ありますが、私の定義:『殺人等の重大犯罪捜査』を主題として『フェア』な謎と解決を描いたもの
『殺人等の重大犯罪捜査』:これを条件入れるかは難しいところ⇒
『フェア』:読者に提示された情報で、読者が謎の解明をできることを保証すること
(3)コージー・ミステリ
(原義からは変化していることを認めたうえで)
私の定義:『職業的捜査官ではない素人』が、『日常的な謎』を解決する過程を描いたもの
『古典部(氷菓)』シリーズ
『ビブリア古書堂』シリーズ
『万能鑑定士Q』シリーズ
【3】SF
私の定義:『未知の科学技術または科学的現象』による『未知の体験』または『人と社会の変化』を描いた作品
(2)サイバーパンク
サイバネティクス+サイバースペース+パンク
サイバネティクス:人体の機能の一部を機械へと置き換える技術
サイバースペース:情報ネットワーク空間
特徴:
①現代の科学の延長にある近未来の技術である
②人間という存在の境界や基盤を揺るがしかねない技術である
パンク:社会体制に反抗し、個人の自由を尊重する思想
退廃的で暴力的な未来観。
∵それ以前の科学の発展によって理想の社会が生まれるという科学万能主義への懐疑・カウンター
小説
ヴァーナー・ヴィンジ 『マイクロチップの魔術師』
W・ギブスン『ニューロマンサー』他スプロール・シリーズ
冲方丁『マルドゥック・スクランブル』
映画
『ブレードランナー』
『ロボコップ』 シリーズ
『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』
『JM』
『トータル・リコール』
『マトリックス』 シリーズ
漫画
士郎正宗 『攻殻機動隊』シリーズ
大友克洋 『AKIRA』
木城ゆきと『銃夢』シリーズ
アニメ
『バブルガムクライシス』シリーズ
『攻殻機動隊』シリーズ
『PSYCHO-PASS』シリーズ
ゲーム
『サイバーパンク2077』
TPPG
『サイバーパンク2.0.2.0.』
『シャドウラン』
『トーキョーN◎VA』
その他
『女バトルコップ』
『H-code〜愛しき賞金稼ぎ〜』(ハンター・コード)
(3)スチームパンク
レトロフューチャー+(主に19世紀の)歴史改変要素
⇒発展系としてスチームパンク・ファンタジー:レトロフューチャー+ファンタジー
レトロフューチャー:「19世紀後期から20世紀中期までの人々が描いた未来像」への懐古趣味
蒸気機関、飛行船、真空管式演算器、解析機関etcから連想される架空の未来技術
ジュール・ヴェルヌ、H・G・ウェルズ、メアリー・シェリーの作品
※未来を退廃的に描くサイバーパンクとは逆に、過去を理想的に描く傾向が強い。
歴史改変要素:イギリスではヴィクトリア朝時代、アメリカでは西部開拓時代、日本では大正浪漫が好まれる(『現代』とならないギリギリの時代⇒実名でも歴史上の人物扱いでネタにしやすいメリットもある)。
※スチームパンクはアートやファッション分野にも展開している。
※クロックパンク:蒸気機関以前の『ゼンマイ仕掛け』の技術の時代を舞台とした派生ジャンル
※ディーゼルパンク:蒸気機関より後の『内燃機関』の技術の時代を舞台とした派生ジャンル
小説
『ディファレンス・エンジン』ウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリング
映画
『ワイルド・ワイルド・ウエスト』(1999年)
アニメ
『天空の城ラピュタ』(1986年)
ゲーム
『サクラ大戦』シリーズ
【4】ファンタジー
(2)ハイ・ファンタジーとロー・ファンタジー
ハイ・ファンタジー:現実の世界ではない架空の世界を舞台とするファンタジー
(未知の世界 の 未知の現象)
ロー・ファンタジー:現実世界を主な舞台とするファンタジー
(既知の世界 の 未知の現象)
※ロー・ファンタジーでは、読者の常識をそのまま、作品世界の一般人の常識とすることができるのがメリット。
ハイ・ファンタジーとロー・ファンタジーを絶対的に分ける基準はない。
ジャンルは分けることが目的ではない⇒大事なのは読者のニーズが何かを考えること