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自称?探偵と助手見習いの事件録  作者: じゃこ
202号室
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28

車に揺られている感覚は長い時間続いた。

正確にはわからないけど。

長い時間続いた気がした。

車が止まり、ドアが開く音が聞こえる。



「コハルちゃん!着いたからね!」



鈴さんの声が遠くからする。

誰かに手を取られ、背負われた。



「大丈夫だから…ダイジョウ…ブ…」



鈴さんの声が変わった?

朦朧とする頭では何も考えられない。

このまま、治らなかったら?



「その時は…ワタシノ…モノ…」



急に意識がはっきりする。

背負っている人は人では無かった。

“魔女”。アレだった。



きゃぁぁぁぁあ!!



叫んでみたけど逃れる事は出来ない。

体が…お腹から繋がっている。

絶望。

心の中を真っ黒い感情が支配する。

どうすることも出来ない現状に諦めを感じた。

もう、どうにでもなってしまえばいい。



誰も助けてはくれないのだから。



私も誰にも助けてはもらえなかった。

幼い頃、姉に見捨てられた。

大好きだった姉は私を置いて嫁いでいった。

母は私を産んで自害したと聞いた。

姉はアイツから私を守ってくれていた。

最後まで私の事を心配してくれていた。

姉が嫁いだ日、その日私は死んだ。紬は死んだんだ。

地獄だった。

暴力、イジメ…

何でもありだ。


姉から貰ったペンダントを握りしめている時だけが、わたしの心の平穏だった。

早く姉に会いたかった。

この家を出て…



そんな事は叶わなかった。



18歳になった日の夜…

狼が私を食べた



その後のことは覚えてない。

私は全身血塗れで、兄、愛人の首を手にぶら下げていた。

屋敷にいた全員が死んでいて、村もめちゃくちゃだった。



清々しかった。


気持ち良かった。


黒い気持ちがすっとした。



後は姉と兄の息子だけだ。

わたしを見捨てた姉。



血にまみれたわたしを見た姉は動揺していた。

そして、呪いをかけた。

子孫が出来なくなるように。

お前だけ逃げた代償だと言って。



のうのうと暮らしている姉が許せなかった。

姉から貰ったペンダントは私の気持ちを代弁するかのように、小さな宝石をどす黒く輝かせていた。



「お腹の子には罪は無いよね…」



産む決心はしていた。

だけど、愛せるか不安だった。

憎い奴の子だ。

それでも、可愛い娘。

花菜と名付けた。


愛しい子。


だが、刈郷の血は残酷だった。


花菜にまで毒牙にかけた。


兄の息子。理一(みちひと)が花菜を。

花菜にペンダントを渡した次の日だった。

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