22
妹も大きくなり安心し、わたしに来た縁談を了承した。
父は隠居し、兄が実権を握った。
嫁いで行くわたしに泣き縋る妹に母の形見のペンダントを渡し守郷へ。
妹の事が心配で何度も会いに行ったが、刈郷の家には入れて貰えなかった。
それから、数年経ったあるとても寒い冬の日。
一本の連絡が来た。
刈郷の村で惨殺事件が起こったと。
直ぐに村へ向かった。
村は真っ赤に染まっていた。
急いで屋敷に向かう。
屋敷内も全て真っ赤だった。
まるで鋭い刃の嵐がこの村だけ通り過ぎたように。
絶望した。
屋敷の中を探し回っても、妹は見つからなかった。
全てバラバラになって死んでいた。
いい気味だ。
死んで当然の人間たちが死んだだけ。
それだけだ。
「そう、聞いております。母はずっと妹さんを探していましたが、行方は分かっていません。ただ、妹さんの娘が居る事はわかったみたいで…」
「刈郷紬さんですね?」
織乃さんがはっと顔を上げる。
「お調べになったんですね。そうです、紬です。ただ、刈郷の苗字は使っていませんでした。紬に一度だけ会った事があります。」
正体を明かさずに喫茶店で話をしました。多分、紬は気づいていたと思いますが。
叔父家族の元に身を寄せていること。母の形見のペンダントは持っている。と。
「叔父さん…という事は、次兄さんの家族ですね。」
そうです。と、頷く。
「紬は当時結婚を約束した相手が居るとも言っておりました。」
紬さんは幸せになっていてほっとした。
「紬さんはご家庭を持たれたんですね。」
「家庭を持ったようですが、旦那さんの浮気で離縁する事にはなってしまったようですが、子供はいたと風の噂で。」
「なるほど。そのお子さんについては…」
そこまでは。わかりません。と、言うと織乃さんは時計を確認する。
「時刻も時刻ですので。この辺でお願いできますか。」
時刻は夕五刻をさしていた。