18
鈴さんは寝る時も一緒に居てくれた。
客間に用意していた布団を部屋に持ってきて隣に敷いた。
「コハルちゃんは先に寝てていいからね。」
と、声をかけてくれる。
誰かと一緒に寝るなんて…久しぶりだな。
…久しぶり?
ここに来た時からわたしは一人で寝てたはず…。
わたしは昔誰かと一緒に寝ていたんだ。
一人ぼっちじゃなかった。
少しだけ、ほんの少しだけ過去を取り戻した。
「コハルちゃん、葉とちょっとお話してくるね。長くなりそうだったら先に寝てて。」
鈴さんは階下へ降りていく。
葉さんとお話ってなんだろう。
あ、八地さんが夕方言っていた事かな。
刈郷紬と花菜、村について調べる事を話していたのを思い出した。
気になってしまい、こっそりと事務所の廊下で聞き耳をたてた。
…よく聞き取れなかった。けど、部分的にだけはわかった。
「…僕も…村……紬…調査…コハル……」
「……わかった。コハルちゃん……」
多分、葉さんはわたしを置いて一人で調査に行こうとしている?
留守は鈴さんと一緒にいろということかな。
足早に部屋に戻る。
「…コハルちゃん聞いていたわね。」
「そうだな。で、明日の事なんだけど、コハルとこの人の話を聞いてきてくれ。」
差し出された封筒を受け取り、コハルの部屋に戻る。
そっと扉を開け、中の様子を窺う。
コハルは寝ているようだった。が、バレバレだ。
「寝たフリをしてもバレバレよ?」
もそもそと布団が動き、顔を出す。
「すみません。さっき、話を少しだけ聞いていて…あの!」
鈴さんは、わたしに封筒を差し出した。
「葉からの頼まれごと。わたしとコハルちゃんで調べて欲しいって。良かったわね。助手さん!」
封筒の中身を布団に広げ見る。
写真といくつかの資料が入っていた。
まず、写真。
写真には初老の女性がうつっている。
裏に刈郷紬の同級生 村山と書かれている。
村山さんが花街で隠居生活をしている事。隠居先の住所と連絡先が書いてある紙が入っていた。
「明日、わたしと一緒に聞き込みに行きましょう。その為には早く寝なきゃね。」
と、鈴さんに言われ中身を封筒に戻し枕元に置いて目を閉じた。
鈴さんから凄く良い香りと安心感に包まれて、久しぶりの穏やかな眠りについた。