17
外に“魔女”がいる。
顔のような部分がこちらを向いて目が合った気がする。
「ひっ…」
こちらを見ている…?
目は無いのに見られている。
動けない。
金縛りにあったみたいに視線しか動かせない。
ぶわっと冷や汗が滝のように溢れる。
カチカチと歯がなり、呼吸が出来ない。
窓をすり抜けて“魔女”が来ている。
アレの手が出窓に座っている葉さんに触れる。
葉さん!危ない!
叫ぼうにも声が出ない。
震えが止まらず、涙が溢れた。
「コハルちゃん?どうした!?」
八地さんの声にハッとした。
窓には“魔女”の姿は無く、何事も無かったように日常が広がっていた。
葉さんもキョトンとした顔をしていた。
「今…そこに何か居ませんでしたか…?」
何とか声を絞り出した。
まだ落ち着かずが上手く呼吸が出来ない。
「いや。何もいなかったぜ?コハルちゃん、顔が真っ青だ。部屋に戻った方が良い。一人で行けるか?」
フルフルと首を振る。
自分で歩けそうにはなかった。
まだ、震えていた。
すると、八地さんは軽々と私を背負い部屋まで運んでくれた。
布団を出してもらい横になる。
「ありがとうございます。すみません。」
「あんまり無理はしないようにな。」
頷くと、言葉に甘え布団に潜る。
今さっきまで見ていた光景を忘れたく目を瞑った。
いつの間にか眠っていたらしく、窓の外は夕日が半分落ちていた。
「寝ちゃったの…か…」
ぼーっとした頭を振り顔を叩く。
しっかりしなきゃ。
葉さんの容疑はまだ晴れてないじゃない。
助手としての役目だけは果たさなきゃ。
起き上がろうとして、気付いた。
「ここ…何処…?」
洋間に豪華な家具や調度品がずらっと並ぶ。
ふっくらとした布団に滑らかな質感の寝間着を身につけていた。
慌てて起き上がり、扉へ向かうが辿り着くことが出来なかった。
「足…枷?」
足にはきつく足枷と鎖が繋がっていた。
扉にあと一歩という所までしか、行けないようになっている。
どう動いてもあと一歩が届かない。指先が扉に届くも爪で引っ掻くのが精一杯だ。
「ダメだ。届かない。」
一体ここは何処なのだろう。
ふと、夕陽に反射した鏡が目に止まり覗き込む。
ああ。良かった。自分の顔…
と、思ったがそこに映っていたのは半分だけ“魔女”に成り果てた娘の姿だった。