表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称?探偵と助手見習いの事件録  作者: じゃこ
プロローグ
2/32

2

「…ん……あん……た…あんた…大丈夫かい?ちょっと!」



「うぅ…」



全身が痛い。山の中をむちゃくちゃに走ったからか。

そりゃそうだよね。

とにかく動かそうとやってみたけれど力が全く入らないし、手も足も感覚が鈍い。

まるで棒みたいで言う事をきかない。

それに、頭がぼんやりする…

瞼が重い。

疲れのせいか上手く目を開けられない。




「ちょっと!おーい!お嬢ちゃん!しっかりしな!大丈夫だからね…」



誰だろう?この人は…

薄ら見えるだけだけど綺麗な人

それに良い香りがする

香水かな?

昔、同じ香りをどこかで嗅いだ事がある気がする。

懐かしい香り。

確か…何処だっけか?

うーん。思い出せないなぁ。

確かに嗅いだ香り。

春に似たあの風の匂い。



コハル



誰かにわたしはそう呼ばれていた。優しい声。両親だったか?違う。誰かにそう呼ばれていた。

思い出せない。

胸が締め付けられるような感情にわたしの目から涙が溢れていた。



「どこか痛いのかい?大丈夫?」



答えようとしたが、またぼんやりとし始めわたしは意識を手放してしまった。




「ちょっと!あんた!しっかりしな!」


はぁ。年端もいかないような子供がこんな山の麓で倒れているなんて。

全く世も末だ。

にしても、酷い怪我。

山の中をどこをどう通ったのか。体もボロボロの傷だらけで、ろくにご飯も食べてないのだろう衰弱しきっている。気になるのは…裸足なのと、頭の怪我。呑気にしている場合じゃないわね。



(ヨウ)。この子運ばなきゃ。」



名前を不意に呼ばれた少年とも少女ともつかない青年はブンブンと首を横に振る。



「え。嫌だ。(スズ)が運んでよ。僕は着物だし…」



と、言い終わると同時にただならぬ怒気を纏った鈴がドスの効いた声で



「い、い、か、ら、は、こ、べ!手遅れになったらどうするんだい!わたしも慣れない洋服じゃなかったらおぶっていくよ。」



「なら、最初からそう言えば…」



「何か、言ったかい?」



と、切れ長の猫目でギロりと睨みつけ威圧する。

葉はちぎれんばかりに首を振り渋々ながら倒れている少女をおぶり病院へと運ぶ。

意識を失っている少女はずっしりと重くて落としそうになる。

何刻歩いただろう。

ヘトヘトになりつつも、鈴に支えてもらいながら街の端にある病院へと辿り着いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ