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自称?探偵と助手見習いの事件録  作者: じゃこ
202号室
17/32

13

ちょっとだけ怖い場面あります。

「あの…葉さん?」



声をかけるか、止めようか少し悩み思い切ってかけてみた。葉はまだ窓の外を睨んでいる。何を睨んでいるのか見ようと窓に近寄る。



「何…あれ…」



葉が睨んでいる先には、雨も降っていないのに真っ黒な傘をさし、ボロボロの服を着て佇んでいる老女の姿だった。見ていると段々と吐き気がこみ上がってきた。慌てて視線を逸らし台所へ駆け込む。流しに顔を入れ胃からせり上がったものを全て吐き出す。



「ぅ…げ…」



アレは一体何だったんだろう。この世の全てを黒く塗りつぶして掻き混ぜてこねて無理矢理人の形に詰め込んだようなアレは…

思い出しただけでもまた吐きそうになる。

そして、あんなのを見ても葉さんは平気で何とも無い。



「大丈夫?」



背中から葉さんの声がかかる。

だけど、振り返ることが出来ない。

怖い…怖い…怖い!

葉さんだけど何か違う。

急激な冷気で背筋が凍る。

冷や汗が出て止まらない。


ずる…ず…



「ひっ…」



近付いてくる気配がする。

大丈夫ですと答えたくても答えられない。

心臓が破裂しそうなほど鼓動がうるさい。

呼吸が上手く出来なくなり苦しい。

気配が近くまで来てる…

肩に触れそうな程まで手が来てる…

助けて!助けて!助けて!



「…大丈夫?」



もう一度葉さんの声が聞こえたと思ったら、背中まで近付いていた気配が消えていた。

床にへたり込み、泣き出していた。



「怖かった…です…」



葉さんは泣きじゃくるわたしの頭をぽんぽんと撫で、腰が抜け立てなくなっていたため支えてもらいながら椅子に座る。泣き止むまで何も言わず側に座ってくれ、落ち着き始めたら冷えた麦茶を出してくれた。

葉さんは何も言わない。そして、何も聞かない。


葉さんは見たのだろうか。

気付いているのだろうか。

アレが何か知っているのだろうか。


質問が喉まで来ても言葉にならない。

もし、聞いてしまったら…

日常が全てひっくり返ってしまう気がして。



「…落ち着いた?」



こくこくと頷き、葉さんを見た。

ふっと葉さんは柔らかく笑う。

あ…良かった。いつもの葉さんだ。

ザワついた心を落ち着ける。



どれくらいの時間泣きじゃくり放心していたのかわからない。

既に日が落ちて暗くなり、昼間の晴天から打って変わって雨が降り出していた。

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