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薄樹さんが去った後気合いを入れ直し、トントンとしていた付近を拡大し読む。
木裏通りにて親子行方不明
と、小さな見出して書かれていた。
読み進めていくと、木裏通りのアパートに住む親子が行方不明になったと書いてある。
アパートは昨日の事件のアパートだ。そして、親子が住んでいたのは202号室。ひとり親で母と娘が行方不明。現在も捜索中。
「偶然…ではなさそう。」
記事を書き写し、新聞を綺麗にして司書さんに返却する。
図書館での調べ物を終えて、時計を見ると3刻半を少し過ぎていた。
夕飯は買って帰ろう。作るには帰りが遅くなるし、材料も買い出しに行きたかったからついでに。
「何食べようかなぁ?暑いし…家でやりたくない天ぷらにしようかな♪」
コハルは天ぷらが好物で特に芋と南瓜を必ず買う。売り切れる前に買わなきゃ。と、足早に商店街へと向かった。
商店街へ着くと、いつもの様に夕飯時の買い物客で溢れていた。
多種多様な種族が買い物をしている風景もコハルは好きだ。
最初は、馴染めなくて嫌いだったが。
「あら。コハルちゃんいらっしゃい。今日は芋と南瓜と何がいいかい?」
早速天ぷら屋さんに来た。
まだ、芋と南瓜は残っていた。揚げたての!
キラキラと目を輝かせて何かないか選ぶ。
「じゃあ、竹輪!二本!」
はいよ。と、おばちゃんは取り分け紙の袋に入れて渡してくれた。
お代を支払い、次は八百屋へ材料の買い出しだ。
何だかんだしていたら、かなり時刻が経っていた。
帰宅したのは5刻半過ぎくらい。
夏だからまだ日は傾いてないけど、遅くなってしまった。
野菜などを保存庫に入れ、買ってきた天ぷらと塩むすびを机に並べる。
少ししなってしまった天ぷらも好きなので、問題ない。
「あ。お茶淹れよう。」
ヤカンに水を入れ沸騰させる。
沸騰するまでの間にも、天ぷらと塩むすびを口に運ぶ。
「うーん!おいしーい!」
お気に入りの天ぷら屋さんの天ぷらを頬にパンパンに詰め込む。幸せ…。今日の疲れが一気に吹き飛ぶ。
ぴーーー!
と、ヤカンがけたたましく鳴る。お茶を淹れ、ゆっくりとまた頬張る。食べ終わったら、依頼書を調べなきゃね。と、思いながら幸せを噛み締めていた。
天ぷら美味しいよね。