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自称?探偵と助手見習いの事件録  作者: じゃこ
プロローグ
1/32

1

はぁ…はぁ…

逃げなきゃ…逃げなきゃ!

殺される…早く…

見つからないうちに…


「いたっ…!」


何も履いていない足に

折れた枝が刺さる。

血が滲むが痛がっている暇はない。

早くここから逃げないと!



「居たぞ!!」



見つかった…!

動け!動け足!!

転がるようにして、足を動かす。

疲労しきった身体と足は限界をとうに超えている。この山の中どれくらい走ったのだろう。

考えても無駄だ。今は逃げなくちゃ。



死にたくない!死にたくない!



息が苦しい、肺が悲鳴をあげている。涙が溢れ、更に呼吸が苦しくなる。


嫌だ!嫌だ!

死にたくなんてない。



「こっち。」



不意に腕を捕まれ、草むらの中へ引っ張られた。

あぁ…捕まった…と思った。が、違った。


引っ張った方を見るも暗くてハッキリとは見えない。誰だろうか。

わたしの口に指を当て静かにと。

呼吸が落ち着くのを待って、話し始めた。



「いい。良く聞くんだ。この先のけもの道を真っ直ぐ行け。行った先の小さな社で隠れてて。必ず迎えに行くから。」



言い終わると、なるべく音を出さず草むらからけもの道へわたしを案内し、早く。と、わたしを押した。

言われた通りただひたすら走った。足はもう怪我と疲労で限界だった。


死にたくない。

この意志だけで進んでいた。



けもの道をかなり進むとボロボロの鳥居が見えた。神社のような建物がありその奥に小さな社があった。

古びてはいるけど、隠れられそうなスペースもある。


少し…休もう…


限界を超えた小さな身体を抱え、

泣きながら足や腕に刺さった草や枝を取り除き、

着物の袖を破き出血の多い所に巻いていく。



うぅ!…!



痛い。口に布を噛み声を出さないようにする。

本当は叫び出したくなるくらいに痛い。



どうして…こうなったのかなぁ…



わたしが何かした?

父も母も兄弟や友達、お屋敷のみんな優しかったのに…

どうして…



涙が溢れて止まらなかった。

うずくまり声を殺して泣いた。


ガサッ


音に反応し振り返る。



「見つけたぞ。」



背後から声がした。

屋敷の使用人の声だ。

血の気が一気に引き震え出す。

震えが止まらず、動けない。

あぁ。騙されたんだ。

そう思ったら、もうどうでも良くなっていた。


髪を掴み引きずっていく。

何の抵抗もしなかった。する気力なんてなかった。

ただ、涙が溢れていた。

わたしの短い人生はここで終わるのかぁ。

色々やりたかったなぁ。



「びーびー泣くんじゃねえ!」



どすっ


と鈍い音がする。

腹と頭を殴られたみたい…

生暖かい血が額を伝う。

終わった。

目の前が真っ暗になりその先は闇だった。



「………しな!あ………た!」



ん…誰だろう。わたしを呼ぶのは…

この声はきっと………


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