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続き

書きあがりました。


色々迷いましたが

このお話の

大事な部分になるので

今回の様な表現方法になりました。


結構

生々しいので

苦手な方は……





「ちょっと、早いよ! 」


早歩き程度だった青藍の歩くスピードは

彼の不安を映し出す様に

どんどん早くなり

とうとう全力疾走を始めた。


確か野生のツキノワグマは

山の中でも

自動車くらいのスピードが出るんだっけ? 

本当、熊の全力疾走なんてシャレにならない。


そんな悪態を

頭の中で吐きながらも

なんとか追いすがり

門を曲がると

玄関を開けて突入する青藍の後ろ姿が確認できた。


乱暴に脱いだ靴は

ものすごい勢いで玄関から飛び出し転がる。


「機動隊の突入じゃないんだから

 もう少し、静かに入りないさいよ」


息を切らしながらそう叫ぶが

青藍は振り返りもせず

視界から消え

ドタドタと

乱暴に階段を登る音が聞こえた。


「はあ、はあ……、熊っていうよりイノシシね、はあ、はあ……」


息を整えながら

青藍の靴を拾い

家に入り玄関の鍵を閉める。


落ち着くため、いつもより

少しゆっくりと靴を揃えてから

階段を登るが、

ドアを開けた音以外は何も聞こえず

妙に静かだ。


二階に上がると

ドアの所で呆然と

膝立ちしている青藍が見えた。


「どうしたの? 妙な格好をして」


ひょいと

青藍の頭越しに室内を見ると

奏がパジャマ姿でベッドの脇に

倒れていて

お股の辺りが真っ赤になっている。


「あー……、青藍、ちょっと邪魔」


入り口にいた障害物を無理やり排除して

奏の額に触る。


暖かい。


体温、 オーケー

脈、 オーケー

呼吸、 オーケー


上半身のパジャマを剥ぐ。


……胸が……


っと、

眺めている場合ではなかった。

怪我は無さそうね。


剥いだ衣服を戻して

視線を移す。


後は……


「奏、ごめんね」


そう言って

パンツの中を覗いて

全てを悟った。


後から考えると

とても異常な行動をしていたと思うのだが

なぜか、この時の私は

奏が男の子『だった』事を

すっかり忘れ去り

凪の様に落ち着いた心で冷静に対応していた。


ふぅ〜……

自分を落ち着けるため

ゆっくりと息を吐き出し

再び吸ってから

後ろにいる青藍に振り

静かに語りかける。


「青藍、奏は無事だから

 バスタオル多めに持って来てくれない? 」


青藍がまだ呆けているので

もう一度言う。


「奏は大丈夫、でもこっちにはまだ来ないでね

 青藍はバスタオル持ってきて」


「……わかった」


ドスドスと階下に降りていく足音を聴きながら


「奏、奏、分かる

 葵だよ? 」


と手を握りながら数回呼びかけると

奏がうっすらと目を開けた。


「お母さん? 」


「だ、……」


『誰がお母さんじゃ〜』 と突っ込みそうになるのを

なんとか堪える。


「葵だよ、分かる?」


「あ、ああ、葵ちゃんだ、どうしたの? 」


「えっとね、奏、さっきまで気を失っていたんだ。

 それでね

 ちょっとややこしいことになっているみたい

 でも、大丈夫だから

 落ち着いて聞いてね」


「……あ、僕……」


色々思い出し硬直する奏の体を

ぎゅっと抱きしめる。


奏も私の体に手を回してきた。

少し熱い。



「うん、血、出たけど

 病気じゃないから、大丈夫だよ」


そこへ

再びドスドスと足音を立て

青藍が部屋に入って来ようとしたので


「はい、ストップ」


と制止する。


腹式呼吸から出る声は

ものすごく響くなあ。


「バスタオル置いて、部屋の外に出て、

 ドア閉めて」


ドスの効いた声でお願いする。


「あ、いや、でも、血が……」


「早く」


「……わかった」


釈然としない表情の青藍だったけれど

私の圧力に

そのまま部屋から出てドアを閉めた。


「ふぅ〜」


今日、何度目の深呼吸だろう

とにかく私が落ち着かないと。


でも、困った

こんな時

何て言えば良いんだろう。


あ……

震えている。


そうだよね

本人が一番

怖いんだ。


私は

もう一度、奏を抱きしめたまま

耳元で囁く様に語りかける。


「あのね、よく聞いてね

 私ね、怪我が無いか

 奏のお尻とお股見たの

 そしたらね、なかったの」


「え……? 」


「奏のお股、女の子だったよ。

 それでね、ちょっと聞くけど

 お腹の具合どう? 」


「まだギュウギュウしてて、痛い」


「うん、それ、女の子のあれだと思うんだ

 出血も」


「僕が、女の子?」


「うん、そうだよ」


「なんで? 」


「わかんない、でも、大丈夫だよ

 奏は、奏だからね」


何が起こっているのか分からず

一人ぼっちで

不安で不安でたまらなくて

それでも頑張っていた奏君が

とてもとても愛おしくなり

強くぎゅっと抱きしめる。


「う、うえぇ……ふえぇ……ぐすっ……」


奏が

肩越しに泣きじゃくりながら

抱きついてきて

首のあたりに熱い息がかかり

涙が落ちているけれど

かまわず

私は

奏を抱きしめ

優しく頭を撫で続けたのだった。


本当は

青藍君が

発見して……のバージョンも考えましたが

やっぱり

ここは葵ちゃんでした。


でも

18禁、大丈夫かな?


大丈夫……だよね?



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