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謝恩会 SIDEウッチー

遅くなりました。

声の色が見えるというのは

こういうことなのだろうか。


目の前の光景と歌声に総毛が逆立っているのを感じる。


勇ましい鎧武者の龍神と

華奢で、清楚な出で立ちであるが、強い意志を秘めた巫女姫との

物語は、今、正にクライマックスを迎えている。


体育館中にいる観客は歌と演劇に飲まれ

まるで、全員、誰一人息をしていないかのように

静まり返っている。その静けさの中

龍神と巫女姫の声だけが

響き合い、絡み合い、混じり合い、

時には弾けるように広がっている。


物語の最後。


鎧武者に化けていた龍神の青年に、淡い恋心を抱いていた

巫女姫は、己が犠牲になる事でこの地を救う。


こと切れる直前に

青年(龍神)の腕の中で、慕っていたと告げる巫女姫。


竜神は巫女姫を自分と同じ龍に変え天へと登って行く。



そして

二人はこの地の守り神として祀られる事になった。


・・・・という場面が終わると、幕が降り静寂が訪れた。

・・・・・・・・

・・・・・誰も声を発しない。いや、発せない。



一分だろうか、二分だろうか。

いや、

もっと長かったかもしれない。


木立がそよ風に騒めく様だった観客の声は、一気に

爆発するような歓声となり、

拍手と共に役者の生徒たちを賞賛している。


呆気にとられ、立ちすくんでいる自分に誰かが声をかけている。


音楽部の顧問の武田先生が

顔中涙でぐしゃぐしゃになりながら抱きついてきた。


びっくりして、逆に冷静になり

いや、勤務中だし、一応男女だしまずいでしょ?


と思いながら周囲を見渡してみると


似たような状況で、もの凄い騒ぎになっているので、

少し安心して武田先生と抱き合うことにする。


そしてやっと自分も目から大量に液体が漏れているのに気がついた。



始めは

生徒たちの思い出作りと

ちょっとしたノリで

『じゃあ、ちゃんとした場所と衣装を整えてみたらどうなん?』って

思って始めた事だけれど

色々なものがいい方向に作用して

・・・・しすぎた。



観客も教員も全員絶句といった状況で

合唱とその後の

青藍と奏の独唱に

全員引き込まれ

ステージに釘付けになってしまってしまった。


これまで何度か卒業式と

謝恩会を迎えて来た自分だが、これは

一生心に刻まれる、会になるのだろうなあ・・・・・


よろしくお願いします。

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