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第一章(十)

「では一週間後に、また来てください」

 ダラスがそう告げると、エマとランベールは退室した。エマは不安そうに、ランベールは慇懃無礼に。

 二人の気配が完全に消えてから、ダラスは切り出した。

「二人の話を真実だと仮定した上でまとめると、『聖典』のルートは、最初に誰か、次にエマ君、次に誰か、最後にランベール君、となりますね」

 だとすれば、その誰かとは何者か。そもそも『聖典』を持ち出した者と同一人物なのか、違うのか。

「全て嘘だと仮定すると、あのランドルニア人が盗んだ、ということになるな」

 売りもせずに返却にくる。良心の呵責に咎められての出頭だろうか。だが、労力と見合わない。

「手詰まりですね」

「むう。どうしたものか」

「『聖典』探索の指揮は、ドゥルマ枢機卿がとっていらっしゃいます。ご判断をお願いしましょうか」

「猊下にか。確かに進展があれば直接連絡するようにと仰っていたが」

 ランタンの炎が揺らめき、バルサンの表情が一瞬翳った。

「これは私達の手に余る案件だと思います。それに一刻も早く、『聖典』をあるべき場所へ戻さねば」

 ダラスが食い下がった。彼は敬虔なフィリス教徒だ。つまり『聖典』は神に等しい存在なのだ。

「いっそのこと、教皇様の御裁可を仰ぐか」

教皇様(グラン・ペレ)に? 猊下がお気を悪くなさいませんかね?」

 教皇とドゥルマ枢機卿は、水面下で対立しているとの噂だ。両者とも決して肯定しないが、片鱗はあちこちにある。

「我々が困っているのは、事の真偽が不明であるということ、判断するための材料がないということだ」

 バルサンは溜息をついた。

「教皇様は、直接『聖典』を管理なさっている。ならば、一度は事情をお尋ねするのが筋だろうよ」




お読みいただき、ありがとうございました。

次回は、4月13日(土)14時00分にアップします。

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