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序章

本日二話同時投稿しています。こちらは一話目です。

 この世には、不思議なことがたくさんある。

 神の奇跡としか思えない美の極致。悪魔の所業としか考えられないおぞましさ。妖精の悪戯(いたずら)のような些細な変化。

 人々は、容易に解明できないそれらの事象を「神秘」「怪奇」「超常」などと定義する一方で、世の理を知りたがった。

 世界はどうやって創られたのか。

 天地の間に存在する諸々のモノは、いかなる存在が生み出したのか。

 大地や海は、どこまで続いているのか。

 人はどこから来て、どこへ行こうとしているのか。

 こうした謎や疑問に対して、かつては、主に神話や宗教が″正しい答え″を人々に示していたが、いつしか、誤謬や矛盾を指摘する者達が現れてきた。

 当初は拒絶され鼻にもかけられなかったそれらは、時代が下るにつれ、徐々に受け入れられていった。

 論争が繰り返され、新しい解釈や思想が次々と生み出されては、淘汰された。

 自らの正しさを証明すべく、様々な実験も行われた。時には神をも畏れぬ試みが行われ、賛否両論の嵐を巻き起こした。

 血気盛んな者や野心溢れる者達は、名声や財宝を求めて、秘境や大海原へと旅立っていった。そして数々の悲報をもたらしながらも、世界の真実の姿を、一つ一つ克明にしていった。

 新しいものばかりではない。(いにしえ)の時代を研究する者達もいた。それは秩序立ったものに生まれ変わったが、多くの人々の素朴な信仰を打ち砕き、反感を招き寄せたりもした。


 だが、人々が、闇に包まれている世界の真実を、知恵と学問の光で照らそうと苦心に苦心を重ね、努力を繰り返しても、不思議な事象は、決してなくなりはしなかった。

 一つが解明されても、新たな謎が必ず生まれていた。自らが望む領域に決して手が届かないことや証明が不可能なことに絶望し、狂気に身を任せる者もあった。悩むこと、考えることに疲れ、再び神々の慈悲に縋る者も、決して少なくはなかった。


「神秘と人智が揺らいだ時代」


 ナリア王国暦七〇〇年代は、のちにそう呼ばれた。

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