その2「はじめの出会い」
その玉には不思議な力があるのではないか。そう感じたのは玉に触れたときである。全身にエネルギーのような、パワーのような何かが駆け巡った。すると突然、
「パンパカパーン、あなたは魔王になりました!」
高いような、低いような、そんな声が部屋に響いた。
「ワガハイは、使い魔だ。お前の名前はなんだ?」
自分の肩を見ると、青いサラサラの髪に短い角、そして微笑むような顔をした何かが乗っていた。まるでRPGのキャラクターのようじゃあないか!毎日が退屈だったからか、この非日常には心満たされる気がする。だが、自分は名乗らないのに相手の名前を聞くことには、少しムカっとした。
「俺の名前は黒天龍牙だ!よくわからねぇが、よろしくな!
俺は名前答えたぜ。お前の名前は何だよ」
名前を訪ねてみた。こいつの正体はよくわからない。が、人では無いようだ。とりあえず話に乗ってみようと思う。
「ワガハイの名前か?そんなもの❝無い❞ね」
そう答えた。ほぅ、名前が無いのか。ゲームとかでよくあるパターンだな。
「我々使い魔は魔王様に名前をつけられるのだ。お前は玉に選ばれた魔王だ。不本意ではあるがさっさと名前つけやがれ」
なんとこいつ、俺を魔王と言いながらかこんな口聞きやがった。だが、まぁいい。俺は寛大な魔王様だぜ。
「ほほぅ、名前ねぇ…青い悪魔…あおいあくま、簡単ではあるが、配置を入れ替えて『マイア・クオア』なんてどうだい?」
適当につけてやった。
「そうか…ワガハイはマイア・クオアか…適当だか、我慢してやる」
本当に何様だコイツ、と思ったが。俺は天下の魔王様だ。許してやる。
「おい!聞こえたぞ!何が天下の魔王様だ?」
心の中で言っていたつもりが、声に出ていたらしい。
「魔王の躾は使い魔の役目!❝落雷、弱❞」
ゴロゴロと言う音が部屋に響いた瞬間、体中を電気が走った。どうやら反省せねばならぬらしい。調子に乗っていたが、魔王といえど成り立てで、力などまだ無い様である。が、同時にコイツの話は全て信じられる、信じなければならないということがわかった。何せ実際に雷を落とされているからだ。
楽しみだ。今までの退屈な日々が終わる気がした。