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初めての苦痛。

諸事情があり、だいぶ間が空いてしまいましたがなんとか書きました。これからは毎日1話更新していこうと思います。

体が、重い。すごく疲れた気がする。

「シンゴ!?だ、大丈夫ですか?!」

倒れた僕に、慌てて近寄ってくるリリア。意識が飛びそうになり、いつしか倒れた時の感覚を思い出す。

「……」

あれ、すごく疲れてるのに、意識が、消えてない?ていうか、体が動かなくて喋れないんですけど。

リリアにうつろな目で訴える。

「もしかしたら、魔力がなくなったのかもしれません。」

えっ、魔力が?

一瞬、そんな簡単になくなるかな、と思ったが、自分が先ほどまでたくさんの魔法を使っていたことを思い出す。

「でも、おかしいですね。普通は魔力が切れると意識がなくなるんですけど。シンゴ、目が開いてますし、意識ありますよね。」

僕の目を覗き込むようにしてくるリリア。

あっ、そういえば僕のスキル『女神の加護』って、寝るとき以外は意識がとばないっていう効果もあったような気が。

それを思い出して、スキルスキル、と頭の中で念じてみる。

すると、僕とリリアとの間にスキルが表示された。

僕とリリアはその効果を見て納得した。

「あ、なるほど。シンゴが意識を保てているのは、このスキルのおかげでしたか。」

ポンと手を打つリリア。

「……」

いやいやいやいや!!待って、普通に身体中けだるくて気持ち悪いし、頭ぐるぐる回ってるし、いろいろ限界なんですけど?!回復魔法的なので助けてくれないの?!

自分の状況を目で訴えてみる。

「あ、すいません。魔力は自然に回復するのを待つしかないので、回復魔法的なので助けることはできないんです。」

苦笑いをするリリア。

うん?伝わったのはいいけど、マジで?僕は魔力が回復するまで床に倒れたまま?

「とりあえずシンゴの体をベッドに移動しますね。」

細い腕でなんとか僕をベッドへと移すリリア。

「よいしょっと。個人差はありますが、1時間もすれば起き上がれるようになるでしょう。」

1時間、ね。それまではこの気持ち悪さが続くのか……

未だにぐるぐると回る部屋。頭をガンガンと石で打ちつけられている感覚。

い、痛いっ!意識がなくならないのって、ここまで辛いんだ……

『女神の加護』の力を呪いながら時間を過ごした。

「しばらく私はここにいますね。何かあれば言ってください。といっても、しゃべれないとは思いますが。」

苦笑するリリア。





「あーっ、凄く辛かった……」

ガバッと、ベッドから勢いよく起き上がる僕。

「わっ?!」

それを見て少しびっくりした様子のリリア。が、すぐに僕の方を見つめてくる。

「もう大丈夫なんですか?」

「うん。頭ガンガンしてたけど。倒れた時は死ぬかと思ったよ。」

苦痛から解放されたことへの安堵で、あははと少し笑う。

「普通は魔力がなくなると眠ってしまうので、目が開いてるシンゴを見てる時は少しゾッとしましたよ。」

「そんなに?」

「ええ。結構怖かったです。」

こんな他愛もない会話をする。

ふと、リリアが窓の外を見た。

「だいぶ時間が経ったみたいですね。もう日が暮れてます。そろそろお夕飯時でしょうか」

そう言われて外を見ると、確かに日が暮れていた。

僕がこの世界に来たのが何時なのか知らないけど、確かに夕飯を食べ始めてもおかしくないほど外が暗い。

「シンゴはお腹空いてますか?」

「え、僕?まぁ確かに空いてはいるけど……」

僕の分のご飯、あるのかな。なんかリリアは経済的に余裕なさそうだし、あんまり無理するくらいなら僕は食べなくてもいいんだけど。

と、少し考え込む。

「あ、もしかして2人分もご飯が用意できるのか、心配ですか?」

「え、まぁ。少しはね。」

「それなら大丈夫ですよ。これでも財力は少しはあるんですよ!」

えっへんと胸を張るリリア。本人は気にしてないようだけど、僕としては目のやりどころに困る。

「……そうなの?」

いろんな意味を込めての間だった。

「はい。皮肉、なんですけどね。王から押し付けられた無理難題は、魔物を討伐する、というものがほとんどだったんです。事あるごとにそれを突破した私は、形式上王も報奨金を出さないわけにもいかず、それを私が受け取っているので。今までお金で困ったことはあまり無いです。」

そうなんだ、と思いつつ部屋を見渡してみる。その割には、ものが少なすぎないかな?

「ものが少ないのはいつここを追い出されてもいいようにするためですよ。貯金してるんです。」

僕の視線から察して、聞くより先に答えてくれる。

「なるほどね、そういうこと。気を悪くしたなら謝るよ、ごめんね」

少し立ち入った事を聞いたかと思って謝る。すると、

「いいえ、気にしないでください。それより、お夕飯は何にしますか?」

リリアは笑顔で答えてくれた。これ以上この話題を続けるのは良くなさそうだったし、僕も気がひけるので話題を元に戻すことにした。

「夕飯っえ、どうやって準備するの?」

「簡単ですよ、作るんです。取ってきた魔物と、多少の調味料はありますから」

「取って、きた?」

リリアの何気無い一言に固まった。

「はい。取ってきた、つまり私がハンティングしてきたやつですね。魔物と言っても普通に美味しいものは美味しいですから。」

「……」

無理難題を押し付けられる、とは聞いていたけど、ここまでとは。

感心したような、呆れたような気持ちを抱きつつ、気にしないことにした。

「そ、それで今はどんな食材があるの?」

どんな、と言ってもここ異世界だし、魔物だから僕が知らないものである可能性の方が高いんだけどね。

「えーと、確かホワイトラビットがあったかと思います。あ、あと牛乳も!」

斜め上を見るようにして思い出すリリア。

ホワイトラビットか。要するに、うさぎでしょ?確か、シチューにして食べるとか聞いたことあったな。ちょうど牛乳もあるみたいだし。ていうか、牛はいるんだ。

いろいろ確かめられたところで、リリアに考えを伝える。

「シチュー、なんてどうかな?」

「しちゅぅ、ですか?」

くちびるを軽く突き出すようにして答えるリリア。

「う、うんシチュー。やたらといい方が可愛いけど。」

「か、可愛いだなんてそんな……!」

顔を赤くして手を当てるリリア。耳まで真っ赤。

しばらくして、少し咳払いをしたのちに話を続けた。

「でも、しちゅぅってなんですか?初めて聞きましたよ。そんな料理。」

「えっ、本当に?」

「はい。本当です。」

うーん、そっか~。よし、なら仕方ない!

多少考えた後にすくっと立ち上がる僕。肘まで裾をめくって、わざとらしく腕を叩く。鍋と思わしきものを取り出す。

「僕が作ってあげるよ、料理には多少の自信があるからさ!」

そう言って、僕は料理を始めた。



今回はかなり短めですが、明日はいつも通りの量です。

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