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魔法を使ってみよう。

しばらく投稿できずに、間が空いてしまうと思います。すいません。

「先ほども言いましたが、シンゴはその服がよく似合ってますね。」

ニコッと笑うリリア。

「あ、そう?それはありがとう。服を作った人から言われると嬉しいよ。」

先ほどのやり取りを感じさせないーーリリアだけだけどーー会話をする。

僕の顔はまだ引きつっている。

「よし、服も着てもらったところですし、明日の出発に備えて、まずは簡単な魔法を覚えましょうか。」

「えっ?ま、魔法?!」

引きつっていた顔が、思わず顔がにやけた。だって、彼女の口から聞こえたのは、聞き間違いじゃなければ、とてもワクワクしてくる言葉だったから。

「はい。魔法です。確か、シンゴの住んでいた世界には魔法がないんですよね?200年前の勇者召喚に関する文献にはそう書かれていました。」

「うん。僕の世界で魔法が出てくるのは、イメージとか、お話の中だけ。だから、魔法がどんなものかはなんとなくわかるんだけど、実際にはお話の中で出てくるだけで、使えないんだ。」

だから、すっごく楽しみ!とも付け足す。エリノアさんに、この世界には魔法というファンタジックなものが存在する事を聞いてから、ずっとそれが気になっていた。

「そうですか。では、一応そのイメージの確認をしておきましょうか。シンゴの中で、魔法とはどんなものですか?」

「うーん、具体的に、と言われると困るんだけど……呪文を唱えたりして火とか水とか操る感じ?あ、あと空飛んだり!」

エリノアさんが空を飛ぶ事ができると言っていたことを思い出して少しテンションが上がる。

自由に空を飛ぶのって、小さい頃からの夢だったんだよね!

僕の答えを聞くと、少しうーんと唸るリリア。

「間違ってはいないんですが……少し、シンゴの中での魔法は都合のいいもののようですね。」

「えっ?!」

ファンタジーの世界で、都合いいとかいわれるの?!

予想外の言葉にうろたえる僕。

「呪文を詠唱して魔法を使うのは合っているんですが、そんなに簡単じゃないんですよ。自分のイメージや気持ちも関わってきますから。」

リリアは、人差し指を立てる。そんな都合いいことあるわけないでしょ、とでも言いたげな様子だ。

「自分の、イメージや気持ち?」

「はい。そもそも魔法とは個人が内に持つ魔力を引き出して使うものです。それゆえに、自分のイメージや気持ち次第で、魔法は変わってきます。いつも同じ気分とは限りませんし、いつも同じイメージを抱けるとは限りません。だから、呪文を唱えれば魔法が発動するとか、そんなことはないんです。」

「な、なるほど。難しいんだね。」

「ましてや、空を飛ぶ、つまり浮遊魔法というのは不可能な話ではありませんが、実際に使用するのはとても難しいんですよ?長年魔法に携わってきた私ですらまだできません。」

「リリアも、できないの?」

「はい。難しくて……」

俯くリリア。

いやいや、リリアにできないことを僕がやるとか絶対無理でしょ?!空飛ぶのもうほぼ無理じゃないですか!!

「そっか、空飛べないか。」

希望に満ちていた僕の目から、一瞬で光が消える。

「ま、まぁシンゴはまだ魔法を使った事がありませんし、もしかしたら私より魔法が使えるようになるかもしれませんよ!ですから、先に決めつけて落ち込んだりしないでください。」

「リリア……ありがとう、うん。そうだよね!こんなことで簡単に諦めちゃダメだよね!」

リリアに励まされて、気持ち的に立ち上がる。

「僕頑張るよ!早速、僕に魔法を教えてくれないかな、リリア!!」

「は、はい。わかりました。ちょっと用意をしますから、そのままお待ちください。」

僕の凄まじいやる気に少しのけぞりながらも、頷いて魔法を行う準備を始めてくれるリリア。

「僕のためにわざわざありがとう、リリア。」

「いえいえ、旅のパートナーですから。シンゴが魔法を覚えてくれると、戦いでも楽になりますから、自分のためにもなるんですよ。」

そう言いながらも、テキパキと準備を続ける。

やがて、机の上には紙切れ一枚と少量の土、水の入ったコップのようなもの、そして木の板が置かれた。

「では早速、勉強を始めたいと思います。まずは、魔法の原理から学んでいきましょう。」


「よろしくお願いします!」

ちょっと先生みたいなリリアを見て、かしこまる僕に、少し困った表情を浮かべるリリア。

「魔法とは、火、水、木、土、風の5属性に分けられたものの中から選んだものを、自身の魔力を駆使して操るものです。」

「魔力、とは?」

「そういう力のことです。この世界の人間は、みんな魔力を生まれながらに持っており、それを使うことができるんです。一説では、女神様により、分け与えていただける神の力のほんの片鱗、とも言われています。魔法とは、この魔力を消費して行うのです。」

「魔力って、なくなるとどうなるの?」

僕が聞くと、少し考えてから、人それぞれですと答えるリリア。

「倒れる人もいれば、そのままの人もいるんですよ。そこはなんとも言えません。それから、しばらくすれば、体力と同様に回復します。」

本当に体力と同じみたいな感じだなぁ。

僕にとっては未知の力だから、と変な警戒心を抱いていたが、体力と同じという説明を受けたら、なんとなく理解できた、と思う。

「じゃあさ、魔力を使って魔法を行使するのって、どうやるの?さっき言ってたみたいに、呪文とかで色々やる感じかな?」

僕がその質問をすると、僕の顔の前にに人差し指を出してきて、いいえ、と横に振る。

なんだか、チッチッチ、と聞こえてきそうだ。

「いいですか、本来魔法に呪文は必要ありません。」

「えっ、そうなの?」

「はい。本来は、感覚と起こしたい事象の想像だけすると、勝手に魔力を使ってそれを実行するための魔法が発動するんです。ただし、何もない状態から、頭の中だけで何かを思い浮かべても、たいていの人は具体性が足りずにそこまでは至りません。」

「想像力がある人にとっては便利な仕組みだね。でも、その普通に人たちはどうするの?魔法が発動しないじゃないか。」

首をかしげながら聞くと、ふふん、と言って胸を張るリリア。

「そこで、呪文の出番です!簡単なものでも、言葉を交えることで、想像を具体的にできるため、普通はこちらの方法の方を選びます。基本的には、呪文はなんでもよくて、個人によって様々です。基本形はありますけどね。それらを呪文と呼んでいるわけです。」

「なるほど。魔法の原理ついてはわかった。あ、でも!さっき言ってたっていた5属性というのは何?」

「それはですね、魔法に必ず付いている属性、つまりタイプのことです。属性を意識すると魔法の威力が上がったりするんですよ。例えば、火球ファイアボールとかなら、火属性だから、火の球ってだけじゃなくて、強い火のイメージを強く持つんです。すると、威力が上がります。」

「なるほど、その魔法にあった属性を考えてあげればいいわけだね。」

「はい、それだけです。ただ、人にはそれぞれ合った属性があるので、そこは注意してください。それと、自分が発動させようと思わないと、魔法は発動しません。ですから、ちょっとイメージトレーニングして魔法発動、なんてことにはなりませんから安心してください。それでは、実践してみましょうか。」

彼女がニコッと笑ってるくる。

「えっ?!いきなりですか?」

「はい。問題ありますか?」

「い、いえ、気持ちが高ぶってしまって。」

「気持ちは分かります。初めての時は私もそうでしたから。では、まずはあなたの得意な属性をさがしてきましょうか。」

「う、うん。わかった。」

話がとんとん拍子で進むので、少しテンパる。

そんな僕をみてクスッと笑ったリリアは、机に置いてあった、一枚の紙を取った。

「まずは火属性からです。最初は、火をイメージして、その次に、この紙に火をつけるところを想像してください。そして、最後に点火マッチと言ってみてください。」

「う、うん!やってみるよ。」

僕はリリアから紙きれを受け取ると、言われた通りに火を想像した後、それを燃やす光景を思い浮かべた。コンロを意識する。

えーと、確かこの後に点火マッチって言うんだっけーー

僕が口を開きかけた瞬間、ボオッという音とともに、体から少し力が抜けていく。

「えっ?」

まだ呪文を詠唱ーー詠唱というほど長くないがーーしていないのに、紙に火が付いていた。

リリアがやったのかと思って彼女の方を向くと、そこには口をあんぐりと開けた美少女がいた。それを見て、彼女がやったのではない、悟った。

「う、そ……でしょ?」

目を見開いて僕の方を見てくる。

「あれ?何かおかしいことしちゃったかな、僕。」

呪文を言っていないのに魔法が発動した事への戸惑いと、リリアの目を丸くした表情に不安になる。

「おかしい、ですね。先ほど言った通り、普通は、呪文を唱えてからしか魔法は発動しないんですが。」

「僕、まだ言ってないよね?」

「はい。つまり、あなたは想像力が豊かなんでしょう。魔法の才能がある、ということですね。」

すごいですね、と褒めてくれるリリア。結構嬉しい。

「本当に?!なんだか、実感が湧かないんだけど。」

「初めての魔法ですから、そんなものですよ、私もそうでしたし。もっとも、私は呪文を言ってから魔法が発動したんですけどね。」

僕に共感してくれるリリア。それが普通と言われて、少し気持ちが楽になる。

「では、他の属性の魔法もやってみましょうか。」

そう促されて、他の属性の魔法も彼女に教えられながら使ってみる。

「弱い風をイメージして見てください。先ほどと同様にイメージが出来たら、微風ウィンドと唱えてください。」

「うん、わかったよ。むむむ…」

僕は頭の中でなるべくリアルにかんがえるため、風を出すもの、つまり扇風機をイメージした。すると、またもや詠唱するまでもなく、すぐにゆったりとした風が吹く。直後、体から力が少し抜ける。

一度いいことがあったら、必ずそれを上回る悪いことが起きると思っていた僕は、先ほど無詠唱で魔法が使えたから今度はできないだろうと考えていた。詠唱する気満々だったため、えっ?と腑抜けた声が出る。

「やっぱり、無詠唱でできましたか。」

「やっぱりって、何のこと?」

「基本的に、魔法は想像力に飛んでいれば自然と発生するものです。おそらく、シンゴの頭の中ではこの世界とは違った考え方をしているのでしょう。」

自分の考察を入れる彼女に、首を傾げたのは僕だった。

「そうかなぁ?別に普通のことだと思うんだけど…」

「何かイメージするときに、この世界にないものを考えたりしませんでしたか?」

「この世界にないもの?うーん。」

「何かありませんか?」

火をイメージするときは弱火のガスコンロを少しイメージして、風は扇風機をイメージしただけなんだけど……って、ガスコンロも扇風機も、この世界には、ないよね?

「あー、うん。あったよ、確かに僕はこの世界にないものをイメージしてた。」

この世界にないかどうかは正直なところ分からないけど、この世界の文明だと、多分今言ったどちらとも存在しないと思う。

「やはり、そうでしたか。」

そう言うと、彼女はまた僕に他の属性の魔法を使うように促す。そして、僕は素直に従った。

一通りやってみて、結果はこうだった。火の魔法が、コンロのイメージをすることで無詠唱で使用可能。同様に、風と水の魔法も扇風機と水道の蛇口をイメージすることで無詠唱で使用できた。

しかし、土の魔法と木の魔法は、何をイメージしてやればいいかわからず、詠唱をしても変化は微々たるもので、お世辞にも成功とは言えなかった。

そのため、何度も繰り返し魔法を使用するが、なかなかうまくいかない。

「うーん、うまくいかないなぁ。」

「最初はそんなものですよ。さっきまでのシンゴが普通じゃなかっただけですから。」

彼女は安心して下さい、と僕をなぐさめてくれた。

「まぁ、ここは要練習って事かな。」

「そうですね。しっかりとした呪文詠唱が必要な精霊魔法もありますから、道はまだ長いです。今回は火、水、風の力が使えて良かった、と思うべきでしょう。」

精霊魔法という言葉に少し疑問を覚えつつ、今は質問したい気持ちをこらえて、その言葉に納得する。

確かに、普通に魔法が使えただけよかったか。特に、魔法による事故も起きてない。リリアによれば、魔法の暴発事故はよくあるのだとか。魔力がおかしな方向にたまったり放出されたりするのが原因らしい。

「そうだね。不幸パラメータの力がこのタイミングで及ばなくて良かったよ。」

僕は魔法がうまくできなくて悩んでいたところから、すぐに頭を切り替えて笑った。

「よーし、空を飛べるようになるまで、頑張るぞー!」

僕は立ち上がって右手を上にあげた。

「頑張ってくださいね!」

僕が見せたやる気に、リリアも笑ってくれた。僕も彼女の笑顔を見て、つい顔が緩んだ。

しかし、その時だった。突如背景がぐにゃりと歪む。

「えっ?」

僕はぐにゃぐにゃになった天井や壁を見て、不思議そうに声をあげた。

「ーーっ、シンゴ!!!」

とっさにリリアが何か言うが、聞こえなかった。そして、背景がくるっと回転した。すぐに気持ち悪さと疲れが襲ってくる。

「あれ?何で全部回ってるん、だ……」

ドサッ。大きな音とともに、僕はその場に倒れた。



読んでいただきありがとうございます!なかなか説明会が終わりませんね。

 引き続きブックマークと評価をもらえるように頑張ります......

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