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今後の話と服装と、あと筋肉。

今回はそれなりに頑張って書いたのでいつもより読みやすいと思います。

謎が解けたとはいえ、十分衝撃的な内容だった不幸パラメータの話を終えた。まだ少し顔が緊張している様子のリリア。目元が赤く、少し腫れている。しかし、本人はそんなことはもう気にしていない様子で話し始めた。

「先ほどもお話ししましたが、現在私の権力は皆無と言っていいほどありません。」

リリアは、申し訳ないと言いたげな表情を見せる。

「そして、危険な魔法である、異世界からの勇者召喚を成功させ、あなたを呼び出してしまいました。改めて謝ります。」

申し訳ありませんでした、そう言おうとしたリリアの口を、僕は自分の言葉で塞ぐ。

「さっきも言ったけど、それは気にしないでよ。どっちにしろ僕はこの世界に来ていたんだからさ。」

僕は、彼女の罪悪感を少しでも減らすため、気休め程度に言葉を投げかける。すると、首を振るリリア。

一瞬、どちらが悪いとか、悪くないとかの話し合いになるかと思ったけど、すぐにリリアは僕が予想していたかった言葉を言った。

「いえ、すいません。少し話が逸れてしまいましたが、ここではその話はあまり関係ありません。」

「え、なんで?」

思ってもいなかったことを言われて少しどもる。

「王にとっては、今のシンゴが勇者召喚でここに来ている限り、勇者召喚をしなくてもあなたがここに来たということなんて関係ないからです。」

「あー、そっか。」

今は論点が違うという意図のリリアの説明に納得する。そんな僕を見て、リリアは話を続けた。

「本来であれば、私はあなたを召喚した後にすぐに外へ逃すつもりでした…そうすれば、危険な魔王討伐の旅へと出る必要なんてありませんからね。」

「えっ?!」

彼女は、目を丸くした僕を見てくすりと困ったように笑った。

「で、でも、もしもそんなことをしていたら、リリアの立場はどうなるの?!王への挨拶は明日でいいって言ってたのは?!」

「私のことはいいんですよ。今までもなんとかなってきましたから。適当に、勇者召喚に失敗をした、とでも言い訳をするつもりでした。あと、明日に王に挨拶をする、というのはその場限りの嘘です。実際挨拶するとしても、明日になるとは思いますが、そのままあなたを逃すつもりでしたから。あなたを納得させるためだけの、一度限りの嘘ですから、特に意味はありません。」

苦笑いをした彼女からは、優しさが感じられた。

僕の自虐も大概だけど、リリアの自己犠牲も酷いな…

あまりに可哀想な彼女からは自分のことに関した悲しみはあまり感じられなかった。身にしみてわかったのは、彼女が、僕を逃せなかったことに関して悔やんでいる事だけだ。

「でも、今はそういうわけにもいきません。人目のないところで召喚を行ったのに、レニアお姉様に見つかってしまいました。これでもう、シンゴの逃げ道はなくなってしまいました。」

唇を固く閉じて、下を向くリリア。

「いいさ。元から魔王と戦う羽目になるのはわかってた事だから。それで、問題はここから、でしょ?」

僕がポジティブな考えを示すと、彼女は少し驚いた表情をした。

「ええ、そうですね。大事なのはこれから、です!過去のことを言っても仕方ありませんね。」

今度は少し明るくなる。

「恐らく、明日の朝か昼に、私達は王城に呼ばれます。そして、魔王討伐の旅へと送り出される事でしょう。」

「そういえば、神官としてサポートしてくれるっていってたけど…僕はともかく、なんでリリアまで旅に出るの?それに、なんで王に挨拶をするのは今日じゃなくて明日?」

二つの質問を一気にしてしまい、少し困った様子のリリア。二つも質問ごめん、と謝る。すると笑って、気にしないでくださいと言ってくれる。その笑顔を見るたびに僕は癒されていく気がする。

「まず、私が旅に出る理由は二つあります。一つは、王に命令されているからです。勇者召喚に成功したら、旅に出ろ、と。もう一つの理由は私個人があなたを心配しているからです。」

「心配?なんで?」

「魔物はとても強いですから。何も知らないシンゴが戦っても、すぐに死んでしまうのがオチです。」

「す、すぐに死ぬって…」

さらっと言ってしまうリリアのせいで、あまり現実味がわかない。

「そして、明日の朝か昼に王へ挨拶をするのは、単に王が現在不在だからです。詳しい時間はわかりませんが、明日の朝戻ってくるんですよ。」

淡々と説明していく彼女に、少しついていけないのを感じた。

王って、この国のトップだよね…しかも明日は魔物と戦う旅に出るのか。やっぱり、ここは異世界だなぁ。

向こうの世界では考えられないほど、トントン拍子で話が進む。

「大体話はわかった。明日出発するんだよね?」

「はい。ですから、今日中に、できれば今の内にシンゴの装備を整えておきたいんですが…」

僕の服を指すリリア。つられて僕も自分の服を見ると、僕は高校の制服を着ていた。ここで、レニアさんが僕の服を見て勇者だと判断していたのを思い出す。

レニアさんやリリアの服を見る限り、中世を思わせる世界だから…まぁ僕の服は浮くよね…

「どうしよう、僕、これ以外に服とかないんだけど。あ、もちろん装備も。」

自分の服をつまみながら話す。

手ブラで戦うとか死にに行くようなものだよね…

「あぁ、それは問題ありません。服は用意しておきましたから。」

それだけ言うと、部屋にあったタンスのような場所から、男物の服を取り出すリリア。

「どうでしょうか?多分大きさはピッタリだと思うんですけど…」

そう言って、取り出された服を見る。襟がある紐のリボンがついたような上着で、ズボンは普通のベルトで留めるタイプのようだった。

「確かに、大きさは問題ないと思うけど…なんでリリアが男物の服を持ってるの?」

リリアは権力が低いと言っていたし、この様子じゃあまり他人の服を買えるほどのお金を持ってるとは思えないんだけど…結構豪華な感じの服だし。

不思議そうにしている様子の僕を見て僕が何を考えているのか察するリリア。

「ああ、それは簡単ですよ。その服は私が作ったんですよ。」

「なんですって?!」

驚愕の2文字だった。言われて、改めて服をみると、綺麗な出来だった。売られていても遜色ないだろう。

「始めから、勇者召喚で来るのは男の人で、17歳の人が来るというのはわかっていましたから。以前…と言っても200年程前ですが、王城で、勇者を呼んだ事があったそうでして。その時、いろいろ試した結果、男の人で、17歳の人しかこれないことがわかったそうです。ですから、あらかじめ。それくらいの人が着れる大きさの服を作ったというわけです。」

「な、なるほど…女子力高いなぁ。ぼくも料理裁縫一通りの家事はできる主夫はになれる自信があったんだけど、ここまでのものを見せられるとぐうの音も出ないよ。」

さすが美少女であるだけはあるね。そう付け足したが、完全にそれは冗談と思われているようで、からかうのはやめてくださいっ!とつっぱねられてしまった。

「まぁいいです。あ、折角ですから着てもらえますか?」

「え?ここで、ですか?」

いくら自虐的な僕でも、さ、流石に露出癖はないんですけど…

部屋を出て行ってくれるか、別の部屋を教えてくれないかと思って、ちらっと彼女を見る。が、しかし…

「はい。だめですか?」

なぜか上目遣いをしてくるリリア。

そ、そんな可愛らしい顔で見られても困るんですけど!!

「ほ、本当に?」

「はい。何をためらっているんですか?」

もしかしてこの世界では人前で脱ぐ事が問題じゃない文化なのか?段々と、そう思えてきた。

「くっ!わかりました、腹を決めますね!!」

僕はそう言ってブレザーを脱いだ。ちらっとリリアを見る。

よし、今のところリリアに目立った反応はない。

いつ外に出ろとかなんで脱いでるんだ、とか言われてもいいように、一枚ずつ渋るように脱いでいく。反応を見ながらなら、どこで止めるべきかわかるからだ。もしもズボンを脱いだ後で変態!!とか言われても困るからね。

僕はシャツを脱いだ。これで半裸だ。再びリリアの様子を見ようとしたら、今度は、彼女の方から顔をこちらに乗り出してきた。

「うわっ?!」

「わぁー!わたしが思っていたよりも筋肉ついているんですねぇー。シンゴ、かっこいいです!」

急に近づいてきたからびっくりした。

「そ、そうですか…あ、ありがとうございます。なにをされるかわからなかったので、体だけは鍛えるようにしてたんですよ。」

なぜか敬語になってしまう。

「なんでシンゴが敬語なのかよくわかりませんが、そんなことよりも、触ってもいいですか?ねぇ、いいですかね?!」

「えっ?」

手をワサワサするリリア。キラキラとした目で見てくる。いや、ギラギラといった方がいいかな?ていうか、リリアなんか息荒くないか?ハァハァ言ってるし…頰赤いし。

「僕は別に構いませんけど…」

僕がそう言った瞬間、彼女は一気に僕のお腹、つまり腹筋を撫でるように触ってきた。

「ひゃっ?!」

女の子みたいな声が出る。まさかこんながっつり触ってくるとは…すごく微妙な気分だなぁ。

「いいですよね、服の上からは細いように見えるのに、実際は腹筋が割れてたりしてるのがたまらなくいい!特に少年とかは…って私は何を言ってるんでしょう?!」

自分の言ってることの過激さに気づいて顔をさらに赤く染めるリリア。

「シンゴの、一見弱々しそうなのに実は筋肉が付いている姿をを見ていると、なんだか止められなくなっちゃって…すいません。」

少し恥ずかしそうに誤るリリア。

「…それは、まぁ別にいいんですけど。手、まだ触ってますよ。」

僕は自分の腹筋に触れている手を見つめる。

「ハッ?!私としたことが…すいません、手が勝手に動いてました。」

と、言いつつも触ってくるリリア。

「あのぅ、そんなに見られてると着替えられないんですが。」

僕は落ち着いて話した。が、リリアからの反応がない。

そろそろ着替えたいな。いや、だってさ、着替え始めてから地味に時間たってきてるからね?

「僕もいつまでも半裸でいるわけにはいきませんし…」

もうこの状況に耐えられなくなってきたため、話を切り上げようとする。しかし、唇を可愛らしく前に突き出すリリア。

「私は、シンゴが半裸でも構いませんよ?むしろ、半裸でいてほしいくらいの…」

「僕が構うんですよっ!!!!」

リリアがおかしな方向に行き始めたところで僕は彼女を無理やり部屋から追い出す。

そして、1人になった部屋で、今度は落ち着いてリリアが作ってくれた服を着ていく。

まったく、危うく間違ったこの世界の知識を得るところだったよ。露出狂になるところだった…

上着の下はワイシャツみたいになってるんだね、此処は普通に制服のものでも代用できるかもね。

リボンを蝶結びをしながら自分の服を確認し終える。

「よし、これでいいかな?リリア、入ってきていいよ。」

彼女の部屋なのに、なぜか僕が入室許可を出す。

リリアは、はーいと言って入ってくるが、僕を見てあからさまに残念そうな顔をする。

「似合って、ますよ…」

「いや、そんな悲しそうな顔で言われても嬉しくないんだけど。」

僕もリリアも泣きそうだった。

「ていうか、もしかして僕が着替えようとしたのにリリアがこの部屋を出なかったのって、筋肉を見たかったから、だったりしない?」

ビクッと肩を震わせたリリアをジト目で見つめる。

「こ、この世界ではそういう文化なんですよ!」

苦しすぎる言い訳をする。

「異世界から来たからって、僕はそんな話には騙されないよ。」

僕がそう言うと、開き直り始めるリリア。

「いいじゃないですか。少しくらい…シンゴのケチ。」

「…確信犯か。今度から着替えるときは誰もいないところで着替えよう。」

「ええっ?!」

そんなぁ、と言わんばかりの顔をリリアが向けてきたが、放っておく。

「そ、そんなこと言うと…」

グルルと唸るリリアに僕は冷めた目で見つめる。

「そんなこと言うと、なに?」

なんでも言ってごらんなさい、という態度で断固とした姿勢を見せる。

「魔物に襲われても回復してあげませんよ…」

「それは困るっ?!」

もはや脅迫だった。

「というのは、冗談ですけどね!あはは。」

「リリア、目が笑ってないよ。」

今後も、彼女のこのような行動に困らせられるのだが、今の僕は、まだそんなことは知る由もなかった。

読んでいただいてありがとうございます!評価していただけると嬉しいです。

 今回は途中からリリアがおかしな方向に行ってしまいました。あと、そろそろ説明の回は終わると思います。


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