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リリアの生い立ちと、幸せと不幸の天秤。

いつもよりは量が多い、かな?

「まず、シンゴをこんな部屋でしかもてなせない理由からお話ししましょう。」

重々しく口を開いたリリア。僕はゴクリと唾を飲み込んだ。

「私の母は、私を産んだ後すぐに亡くなりました。いえ、それは正しい言い方ではありませんね。処刑されました。」

「えっ?!」

「私は、先程会ったレニアお姉さまと、レニアお姉様の双子の妹であるレノアお姉様とは半分しか血が繋がっていません。」

「異母姉妹、ってこと?」

物語でしか聞いたことのないような言葉を口に出す。

「はい。私の母は、お父様つまり王様に使えているメイドでした。私は2人の間に生まれた、望まれない子供でした。お姉様方のお母様である王女様には近寄ることすら許していただけず、お姉様方には…先ほどの通りの嫌われようです。私は、生まれた時から誰にも生を望まれていなかったのです。事あるごとに死にそうな無理難題を押し付けられました。」

「家族なのに?!酷いね、王族の人は…」

僕の言葉は、自分でもそう思うほど嘘くさかった。それは、僕も勝ってはいても、決して劣らない人生を歩んで来たから、変に同情しようとしたため起きた事だった。

まぁ、死にそうに、というんだからまだいい方なのかな。僕は殺されたわけだし。

「ですから、私は権力がないに等しく、立場もとても弱いんです…そのため、こんな部屋でシンゴを迎えることになってしまって…」

申し訳ありません、と謝るリリアの頭は座った状態にも関わらず、深く下げられていた。

「頭を上げて、リリア。僕はこの部屋で緊張はしても絶対に怒りはしないし、そもそも君が悪いところなんて1つもないじゃないか。」

「いえ、そうじゃないんです!この話にはまだ続きがありまして…」

頭を下げた状態で無理して僕の目を見て話そうとするので、リリアは上目遣いになる。

え?何この子。可愛い。特に髪が耳にかかってるとことか。

場の空気感を微塵も気にしない考えが頭をよぎったが、表情は変えない。

「続き?わかった、頭を上げて話してくれるなら聞くよ。」

女の子に頭を下げられた状態で何か言われても頭に入らないからね。いろんな意味で。

「…わかりました。シンゴがそこまで言うなら頭を上げさせてもらいます。」

僕は彼女の頭が上がりきったのを確認したら話の続きを話すようにと促す。

「先ほど、事あるごとに無理難題を押し付けられたと言いましたが、これらの多くは魔物退治や強い魔物が沢山いるところにある薬草を取ってくるなどの高難易度のものでした。」

「え?死にそうに、なんて言うくらいだから、それはなんとなくわかってたけど…」

それがどうかした?というのはさすがに言えないので間をおくことで察してもらう。

「簡単なことです、わたしだって、死にたくはありませんから。それが王の娘の仕事だ、などと言われたらなおさら断れませんし、小さい頃から、やることは一つでした。」

そこで、彼女の言いたいことがわかった。

「私は、強くなるために、死なないために、魔法の勉強や武術の勉強を死に物狂いでしてきました。その結果、数々の死闘を繰り広げた私の戦闘能力は桁違いに上がってしまいました。そして、本来ならば複数人でやるはずの、異世界からの勇者召喚を1人でやらされたのです。王は、お前は優秀なんだから他の優秀な魔法使いをわざわざ危険にさらすことはない!と言い捨てました。」

「なるほど。もしかして、自分が自分のために生きてきたせいで僕がここに呼ばれたと、そう思ってる?」

僕の言葉に、ビクッと肩を震わせて頷くリリア。

「私が、こんなことをしなければ…確かに魔王の勢力は広がっていますが、今すぐ勇者を召喚しなくてはいけない、というほど切羽詰ってはいないのです。王は私を殺すために、危険な勇者召喚を行わせたのです、そして、私は成功してしまい、シンゴがここに…」

うっ!と、目を滲ませるリリア。

「ちょっと待って、異世界からの勇者召喚って、そんなに難しいことなの?」

「はい。複数人でやっても異界に魔法陣が繋がってしまい、術者が死んでしまうのが殆どです。」

「そうなんだ…でも、すごいねリリアは。」

「え?な、なにが、ですか?」

リリアの目から溢れそうになっていたそれが一時的に動きを止めた。

「そんなに難しい魔法を成功させるなんてさ。尊敬しちゃうよ。僕も、元いた世界ではかなり酷い扱いを受けていたからね。少しくらいなら気持ちは分かるよ。」

僕が笑顔で言うと、リリアの目から一気に涙が溢れ出した。

「ごめんなさい、ごめんなさいシンゴ!私の都合で…私のせいであなたをここに呼んでしまって。」

そう言って、泣きながら近づいてきて僕の胸に頭を乗せた。一瞬、心臓が飛び跳ねそうになったけど、彼女の様子を見て、僕は落ち着きを取り戻した。

「いいんだ、君は悪くない。なにも悪くないんだよ。君がそんな思いをする必要はないんだよ。」

僕は、そっと彼女の頭をなでてあげる。そして、僕が辛い時に言って欲しかった言葉を彼女にかける。

「君は、生きてていいんだ。」

「うっ、うわああああぁぁ!!」

と、それで今まで溜め込んでいたものが一気に爆発するリリア。

「私が、どんな悪いことをしたっていうんですか!どうして私がこんな目に会わなくちゃいけないんですか!!どうして、どうして…うっく、ううっ、」

大粒の涙がポロポロと床に落ちた。

「今まで、よく頑張ってきたね。でも、大丈夫。辛い時は、君が望む限り僕がそばにいよう。」

僕なんかが彼女の隣にいても迷惑なのでは?そう言う考えが頭を何度もよぎった。でも、1番辛い時は、誰でもいいからそばにいて欲しいと思うこと知っている僕は、その考えを振り切った。

「今は、今だけは、隣にいてください。」

「うん、もちろん。君が望む限りね。」

彼女は僕の胸に頭を乗せて下を向いているから、顔は見えなかったけど、それでもなんとなく表情はわかった。

「なら、もう少しだけ。お願いします。」

「うん。」

しばらくの間、僕は彼女の頭を撫で続けた。





しばらくすると、リリアは自分で僕の胸に乗せていた頭をどけて、先ほど座っていた位置よりも少し僕の近くに、座った。

「ところで、なんだけどさ。」

泣き止んで、目を腫らした彼女を見ないようにしながら話しかける。

「は、はい。」

まだ少し声が震えてるけど…多分大丈夫だろう。

「たぶん、君が召喚をしなくても、僕はここに来たよ?」

「え?それは、どういう意味ですか?」

僕はリリアのいない前方を見てつぶやいた。

「少し、僕の話をしようか。」

「シンゴの話、ですか?」

「うん。聞きたくない?」

肩をすくめてみせる僕に、慌てて手を振るリリア。彼女の方をチラッと見ると、目の腫れはもう引いていたため、僕は再び彼女の方を向いた。

「いえ、そんな事はありません。むしろ聞きたいです!」

「そっか。ならわかった。じゃあまずは、僕がここへ来ることとなった理由から話そうかな。」

僕は殺された後に女神と会ったことを話し始めた。





「というわけで、気がついたらリリアが目の前にいたというわけだよ。」

「…え?」

目を丸くしているリリア。

そんな姿もかわいいね!って、そうじゃなかった。わかりやすいように説明しなきゃか。

「簡潔に言うと、殺されたら女神にあって、不幸パラメータが異常だから、それを打ち消せるスキルを身につけられるこの世界に転生したら?と言われてここまでやって来たんだよ。」

「なるほど、全然理解が追いつきません。」

「う、うーん…どう言ったらいいかな。」

僕は頭を抱えた。

「い、いえ、シンゴの言ってる事はわかります。ただ、突拍子もなさすぎて信じられないんです。」

「あれ?でも出会った時は女神に会ったって言っても驚いてなかったよね?」

「話すのとスキルをもらうのは話が違います!もしかしたら、『女神の加護』は、とんでもないスキルなのかもしれませんよ?!」

「そんなにすごいんだ、女神って。」

僕は頭の中でエリノアさんを思い浮かべた。艶やかな黒髪、綺麗だったなぁ。

「そうですね。この国では女神にまつわる伝説がたくさんありますから。啓示を受けたりすることも、割とよくあるので、会うこと自体はものすごく珍しいというわけではないんです。」

「でも、そんな女神にスキルをもらったら、か。なるほどね。それは信じられないか。」

僕は頷いて答えた。

「あ、いえ。疑ってるわけじゃないんです。ただ、女神様にもらったスキルの割には…なんといいますか。」

視線をそらすリリア。

「弱い?使えない?役立たず??」

「そ、そこまでは思ってませんよっ!?」

「はぁ、やっぱり僕は、もらえるスキルですら酷いものなんだね…」

わざと落ち込んだ顔をしてみる。

「自虐はやめてください!こっちまで暗くなります!!」

「はは、冗談だよ。君みたいな美少女に会えたところを見ると、運は良くなってるみたいだから。今まで散々な人生だった僕にとってはかなりいいスキルだよ。それに、戦闘でも運の良さは大事でしょ?女神様に感謝だね。」

僕は笑って自分の考えを話した。

「び、美少女って…冗談は休み休み言ってくださいよ!」

「いだっ!」

背中をバシッと叩いてくるリリア。

「いや、最後のは冗談じゃないんだけどなぁ…」

ぼそっとつぶやく僕。

「えっ?!」

「まぁいいや。そうだ、今の話を踏まえて、ちょっと調べたいことがあるんだけど。いいかな?」

僕はさらっと流した。

「え?えぇ?ちょ、流さないでくださいよ。美少女だなんて、そんなこと言われたの初めてなのに…」

なにかごにょごにょと言っているリリアの声は、よく聞き取れないので放置する。

「それで、この世界に不幸パラメータを測る方法ってない?スキルによって今パラメータがどうなっているのか知りたくて。」

「えっ、あ、はい。ありますよ!」

僕の質問に慌てて答えたリリア。

「実は、私も不幸パラメータの割合が高い方でして…今自分がどんな状態かチェックすることで、なにが起きるかある程度予測してるんです。この道具で測るんですよ。」

すると、なにやら引き出しから小さい天秤のようなものを取り出してきたリリア。

「これは…天秤?」

片方の皿がきらびやかな赤色で、もあ片方がどこまでも暗い黒色の不思議な色の天秤だ。

「幸せと不幸の天秤です。私の唯一の友人兼相談役の占いばぁからもらったものです。これで、不幸パラメータの割合が高い日は何か悪いことが起きるかもしれないから注意するように、と予測ができるように私にくれたんですよ。それからは毎朝これで不幸パラメータの割合を調べるのは習慣です。」

手の上に天秤を乗せてニコッと笑うリリア。

「へぇー、そうなんだ。僕にも使わせてもらえないかな?」

「いいですよ。この天秤の上に手をかざしてください。」

そう言ってリリアはお手本を見せてくれる。

「おお、すごいね。」

てっきり、皿だけが動いてメモリで割合を図るのかと思ったら、皿が動いて、空中に魔法らしきもので数字が表示されていた。数字と言っても、異世界の数字なのだから、スキルで読めているだけなのだが。

そこには、35対65と書かれていた。「不幸パラメータは65%ですか。まぁまぁ高いですね。」

腕を組んでうーんと唸るリリア。

「この数字はなに?」

僕は空中に表示されている数字を指差した。

「ああ、これは幸せと不幸を合わせて100にした際出てくる比率です。最初の数字が幸せのパラメータで、次のが不幸のパラメータです。普通が50対50です。幸せと不幸は基本的には別物なので、それぞれの数を百分率にするんですよ。今回私の場合は幸せのパラメータが35%で、不幸のパラメータが65%ですね。まぁあくまでも、パーセントの話ですから、必ずそうなるわけではありません。ある程度はまばらです。ですから、もしも不幸パラメータが100%だったとしても、全くいいことが起きないかというと、そういうわけではないんです。」

安心してくださいね、僕を心配してそう付け加えてくれたリリアだったが、僕は内心期待で胸が膨らんでいた。

「ここに手をかざせばいいんだよね?」

「はい。そのままじっとしていると自動的に解析が始まります。」

「わかった。」

言われた通り、手を幸せと不幸の天秤にかざして見る。

そして、3秒も経たないうちに解析結果は投影された。

「あ、結果出たみたいですね。どれどれ〜」

僕はリリアと空中に表示された数字を見た。

「なぁっ?!」

「ええっ?!」

僕とリリアはその結果を見て目をこれでもかと言わんばかりに見開いた。僕は無意識に言葉を発していた。

「嘘、でしょ?」

だって、そこには、1対999という数字が表示されていたから。

ブックマークされてました!!嬉しいです。これからも宜しくお願いします。

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