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運が良くなってきた?

前回よりは量が多いと思います。

手を引かれながら進む僕。豪華な装飾が施された廊下に少し感動する。

「こっちです。」

「あ、あの。王様に挨拶するのは明日でいいとしても、他の方に挨拶をしておいたほうがいいのでは…?」

異世界の事情が分からず、心配する僕の声を聞いて、立ち止まるリリア。

「…すいません。それも含めて、部屋でお話しします。」

その顔はどこか深刻そうで、この場で彼女を問い詰める事ははばかられたので、僕は無言で頷く。

「ありがとうございます。」

彼女は、再び僕の手を引いて歩き始めた。しかし、その歩みはどこか早足で、しきりに周りを気にしている。

女子に手を取られるなんて、いい事もあるものだね。こんなの一年ぶりくらいだ。やっぱり、スキルが効いてるんだろうな。エリノアさん、ありがとう!!

心の中で女神へとお礼を言う僕だったが、不意に彼女が歩みを止めて、ぶつかりそうになる。

目の前には、リリアさんによく似た、しかしその表情はとても冷たい女の人がいた。

「ーーっ!!」

リリアさんは一瞬顔を歪めたが、すぐに僕の手を離して顔を無理やり微笑む。とても辛そうな笑顔だった。

「あら?誰かと思えばリリアじゃない。異世界からの勇者召喚で死んだのかと思ったわ。ふふっ、あなたなんか死んじゃえばよかったのに。」

平気な顔をして相手に死んじゃえばよかった、なんて言う女の人。

リリアとよく似てる、けど。僕はこの人好きになれないな…

「…レニアお姉さま。なぜ、このようなところへ?」

お姉さま?!そんな、この人がリリアの姉?でも、よく見ると目元が似てるし…

リリアがレニアと呼んだ人はふふっと笑うと口を開いた。

「お父様が、あなたの様子を見てきて、っていうのよ。残念ね、あなたが死んでなくて。お父様もがっかりでしょうね。それでーー」

僕に視線を移すレニアさん。

「あなたが勇者?」

ただの人間でなんの変哲もないようだけど…といいたげだ。

「鳴上慎吾さんです、お姉さま。」

僕の代わりに答えるリリア。その表情は、どこか焦っていた。

「あなたには聞いてないわ。黙りなさい、リリア!!」

「っ!!」

凄まじい気迫で話す姉に、言われた通り黙るリリア。

ひどいな、普通妹にここまで言うかな?僕は一人っ子だから兄妹の事はわからないけど、それでもここまでひどい事はないと思う。

「もう一度聞くわ。あなたが勇者なの?」

ギロリと睨みつけるように僕を見てくるレニアさん。威嚇しているつもりなのかな?この程度なら日常茶飯事、ていうか、当たり前だからむしろ落ち着くんだけど。リリアみたいな優しい反応のほうが対応に困るよね。

頭で思考を廻らせつつレニアに答える。

「はい。僕が勇者です。」

気をつけの姿勢でピシッと答える。

「そう。その割にはやけに落ち着きがあるわね。異世界から来たのならもっと戸惑うものじゃないの?あなた、本当に勇者?」

へー、思ったよりまともなこと聞いてくるな。妹に対してあんなこと言うんだからおかしな人かと思ったけど。

「あぁ、それはですね、女神様から事前に説明があったんですよ。異世界に転生されるから、魔王を倒して欲しい、と。その時に驚くだけ驚いたので、今は落ち着いてます。」

まぁ嘘は言ってないでしょ。大方あってるし。

「なるほどね、そうなの。てっきり、リリアが勇者召喚をせずに別人を遣わしたのかと思ったわ。」

僕を探るように話すレニアさん。

「私はそんなことしません!」

リリアが異を唱えたが鼻で笑われた。

「でも、あなたの着るような服は見たことないから本当に異世界からやって来たようね。お父様に報告しておくから、あなた達は部屋で休むといいわ。」

そう言って僕たちの前から去ろうとするレニアさんだった。あれ?最後は優しいな。ぼくがそう思ったのもつかの間、レニアさんは振り向いてこう言い残した。

「せいぜい、明日の出発までに2人で心を決めておくことね。」

消えていくレニアさんの背中を見ながらリリアに聞いた。

「出発って、なんのこと?」

「…おそらく、魔王を倒す旅に出ろ、とおっしゃっているのではないでしょうか。」

「んなっ無茶な!僕には特別なスキルもないのに!!!」

「仕方ありません。旅に出ず、投獄されてしまうよりはマシでしょう。」

「と、投獄…」

前言撤回、あの人全然優しくない!!

「行きましょう。今は部屋で落ち着くことが優先です。」

僕たちは廊下の先にある、古びた部屋に入った。

ドアを開けると、まず整理整頓された本棚が目に入った。その後に小さめのベッド、そして勉強していた痕跡が残る机と椅子があった。

「小さい部屋ですいません。この部屋しか使わせてもらえなくて…」

ん?この口ぶり…

「いや、それは構わないんだけど…もしかして、僕もこの部屋使うの?ていうか、僕ここで寝るの?」

「嫌、でしたか。そうですよね。私の部屋なんて…」

「い、いや、そういう意味じゃないんだ!それは違う!断固として言おう!絶対違う!!!」

美少女の暮らしてる部屋にいさせてもらえるなんていい事は今までなかった。やっぱり、スキルのお陰なんだろうな!!改めてありがとう!エリノアさん!!

本日2度目のお礼を心の中で言う僕。

「は、はぁ。そうですか。そんなに否定されてもむしろ困るんですけど…」

なんか少し呆れられた。

いや、待って?それどころじゃない。僕この部屋で寝かされるの?うん?それはまずい。まずいよね、うん。

「ま、まぁいいや。どこで寝るとかは寝る時になったら考えよう。」

1人でつぶやく僕。

「それでは、今後の話をしましょうか。適当な場所、私の隣にでも座ってください。」

そう言ってリリアはベッドの上に座り、その横を叩いた。

「わかった。お言葉に甘えて、座らせてもらうよ。」

隣に座る僕。だが、1メートルほどの距離は保つ。

「なんでそんなにはなれるんですか?もしかして…」

「いや、リリアのことが嫌とかそういうわけじゃないんだよ。こういう空間で女子の近くにいると緊張するからさ。」

リリアの言おうとした言葉を遮って本心を先に話す。すると、リリアの顔が赤くなる。

「そ、そうですか。ならいいんですけど。」

「顔赤いけど、大丈夫?」

「だっ、大丈夫ですっ!」

僕が聞くとバタバタ手を動かした後、太ももの上に手を落ち着かせたリリア。

「ただ、同年代の男の子に女子として見られたのが嬉しかっただけ、です。」

「え?なにかいった?ごめん、よく聞き取れなかったからもう一度お願い。」

「なっ、なんでもないです!」

慌ててるけど、何言ったんだろ。まぁ良いか。

「それで、今後の話、だっけ?」

僕は逸れた話を戻した。

「は、はい。そうですね。今後の話、計画立てをしましょう。」

こうして、会話が始まった。

読んでいただきありがとうございます!引き続き頑張るつもりではありますが、毎日更新はできなるかもしれません。ですが、引き続き読んでいただけると嬉しいです。

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