筋肉戦争勃発?
昨日頑張って書きました。
リリアをからかいつつ案内をしてもらった後、宿に戻ってきた。
「この後は何か予定あるの?」
「いえ、特にはありませんね。ここの食堂の昼食と夕食をとるくらいでしょうか。」
とりあえず、リリアを僕の部屋に呼び、今日の予定について話し合う。
僕の方から彼女の部屋に行かないのは、僕の方から女の子の部屋に行くのはいささかよろしくない気がしたからだ。
「そっか~、じゃあ魔法の練習でもしようかな?」
「あ、それはいいですね。私が教えてあげます!ちょっと待っててくださいね」
そう言うと、一旦自分の部屋に戻って行くリリア。
どうかしたのかな?何で戻ったんだろ。
5分くらい隣の部屋からガサゴソ聞こえていたが、それから少しすると音が止まり、僕の部屋のドアが開いた。
「予想外に探すのに手間取っちゃいまして、すいません……」
「いや、それは構わないけど。」
リリアの手には、一冊の本があった。辞書よりも一回りもふた回りも大きそうな、深い青色をした、少し古びた本だ。
「えっと、その本は何?ひょっとして、その本を探してたの?」
「はい、そうです。この本を探してたんですっ!」
よくぞ聞いてくれましたね、といった表情のリリア。少し体がこちらに傾いた。
「この本はですね、魔導書です!」
僕に本を手渡してくるリリア。それを受け取る。
「うわっ?!」
重かった。予想の5倍くらい重かった。
「あはは、重いですよね、この本。」
僕は備え付けのイスを2つこっちに引き寄せて、片方をリリアに座らせてもう片方は自分が座った。
「それで、この本は……魔導書、だっけ。それって、一体何?」
魔導書は、手で持つには重いので膝の上に置きながら話す。
「魔導書というのは、魔法の使い方が書いてある本のことです。」
「えーと、教科書見たいな感じかな?」
視線を魔導書に向けてみる。題名は……そのまんま、魔導書って書いてある。
「まあ、そんな感じですね。具体的に言うと、どの魔法を使う時にはどのようなイメージをしたらいいかとか、精霊魔法の使い方とかが載ってますね。」
「なるほど、魔導書については大体わかったよ。でも、僕にも出来るかな?」
不幸パラメータの割合が999なんだし、前みたいにいつ倒れるかわからないから、今度は慎重にいきたいんだよね。
倒れるだけならまだしも、魔力が切れた状態をずーっと意識を失わずに体感し続けるのはなかなか辛いものがあったので、少し怖くて、昨日以来魔法はまだ使えていない。
その機会がなかったのもあるけどね。
「その本は初級編なので、シンゴでも使える魔法が多いと思いますよ。まずはそこから覚えていきましょう!大丈夫です、シンゴならできますよ!」
恐らく、僕の心境を察してだろう。リリアが元気付けてくれる。
「応援してくれてありがとう。頑張ってみるよ。」
「はい、頑張って下さいね」
するとリリアは、隣の部屋にいるから困ったらいつでも呼んで下さい、とだけ言って僕の部屋を後にした。
「さーて、頑張ろっ!」
まず膝の上で本を開いてみる。すると、そこにはわかりやすく、1つ1つの魔法に関してぎっしりと、文字で説明がなされていた。具体的に言うと、お料理レシピ本の、写真がないバージョンだ。
大きな1ページに、ぎっしりと詰まっているのは、文字だけのため、少しだけげんなりした。でも、リリアも応援してくれているので、1ページ目の、点火を使えるようになるのを目標に、がんばろう!
♡
本に書いてある通り、石や鉄を勢いよく擦った時に出てくる火花をイメージする。そして、火花がだんだんと大きくなっていって……
頭の中でバチバチッという音が聞こえるほどイメージが加速したら、口を開く。
「点火!!」
ポフッ。
目の前のろうそくから、ほのかに煙が上がっていた。
「う、うーん、今のかなり良かったと思うんだけど……まぁでも、これでもなにも起きなかった時よりはマシかな。」
魔法を発動させようとすれば、実際にはなにも起きていないようでも、魔力がイメージによって動く為に、体内からは魔力が消費される。
「ふぅ、そろそろ疲れてきたし、このあたりで止めておこうかな。」
僕はリリアからもらっていたろうそくを鞄ににしまうと、ごろん、とベッドに横になった。
「まだ12時までは時間がありそうだし、少し寝るかな。」
今朝、ギルド内をリリアに案内してもらっている際、大時計を見て説明を求めた。その際、この世界には地球と同じで、12の月があり、1年は365日、1日24時間だと教えてもらっていた。
しかし、この世界にはまだ腕時計のような小さいものを作れる技術はそこまで発達しておらず、貴族間でしか腕時計は普及していないらしい。
そのため、僕は宿の窓から見えるギルドの大時計を見て時刻が11時少し前という事を確認していたのだった。
「んんっー!今朝は早かったからなぁ~」
寝そべったまま、伸びをした。すると、伸びるのと連動するようにして瞼が重くなってくる。
そして、だんだんと、意識がまどろみに消えていった。
♡
ユサユサ。ユサユサ。
「あはっ、大胸筋……!うふふ、シンゴ~起~き~てくださぁい。まぁ?起きてなくてもいいですけどぉ、お昼ご飯の時間ですよぉ?食堂、行かなくていいんですか~?」
うっ?眩しい。ていうか、やけに胸のあたりを揺さぶられ……いや、なんか触られているような感覚が。て、この声は、リリアかな?でも、口調が少し、いや、かなりおかしかったような……
「行かないんですね?分かりました。でしたら私は鑑賞会を始めまぁ……」
ガババッ!!
「うわあああアアアアァァァァ!!!」
リリアが言い終わる前に跳ね起きて、第4ボタンくらいまで外されたシャツを急いで着直す。
「あ、あれ?し、シンゴ。起きてたん、デスカ?」
目を丸くしているリリア。呂律が回っていない。
「……寝てたけど。起きざるを得ない状況になったから起きただけだよ。」
じいっと目を細めてリリアの目を見る。すると、パッと目をそらす。
「い、いやぁ、起こせて良かったですね!こっ、この作戦が成功して良かったですよ~」
リリアさん、声が震えてますよ。
「作戦が成功したとか、そんなもの元からないことぐらい今までの経験と今の体験でわかってるよ。」
「ううっ?!」
「大体、鑑賞会って何?」
「うぐぐぐっ?!」
「今思うと、揺すり方がもうすでにおかしかったもんね。」
うん、あれはアウトな揺すり方だった。そう思って、多少睨みつけるようにリリアを見ると……
「寝てるのが悪いんじゃないですか!シンゴが無防備に寝てるのがっ!!わ、私は別に法に触れるような悪いことなんてしてませんし?ぜーんぜんつわ、悪いことなんてしてませんし!」
第3王女、開き直ってた。目がもう逝っちゃってるよね。変な汗かいてるし。リリア、おそらく今の君はただのヤバい奴と寸分違わないよ。
「そっ、そもそも!減るようなものじゃないじゃないですかぁ!」
「減るよっ!心の大事な部分がごっそりと減りまくりだよ!」
もう必死だった。何とかして彼女の奇行をやめさせないと。
「大体、立場を変えて考えて見てよ!僕が勝手に君の胸触ってたら嫌でしょ?!それと同じ……」
僕がそれと同じだよ、と言い終わる前に、彼女の口が即座に開く。
「嫌じゃないもん!!別に、嫌じゃないもんっ!!!」
売り言葉に買い言葉とはこの事を言うのだろう。あれ、何か違う?まぁいいや。
リリアは、もはや口調もキャラも保てていなかった。
「じゃあここでリリアの胸を触ってもいいって言うのかさ?!」
自分でも何言ってるんだ、変態か、と思う。でも、もうこの際勢いでだ。全ては自分の安心安全、プライバシーの管理のためだ。
流石にここまで言えばリリアもそれは嫌だ、って否定をしてくれるはず!そうなれば僕も嫌だからやめて、と言えるはず……!
3秒の間、無言が空間を支配した。そして、その空間を先にぶち壊したのはリリアの方だった。
「全っ然、今触ってもらっても構いませんけど?」
「構ァえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
真顔で言われたので、おおよそ本心なのだろう、と言うことが感じられてしまった。そして、最早2人ともキャラを保てていなかった。
ちなみに、それから1時間くらいずうっと彼女と言い合ってました。
ブックマークをしてくれた方がまた一人増えてました!!やる気につながるので、これからもブックマーク、評価等していただけると嬉しいです。