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王の間。

本当は昨日二つ投稿するつもりはなかったのですが......一つを、予約掲載で日時を今日にするのを忘れたました。

「んっ~~よく寝たなぁ」

布団を剥いで、伸びをする僕。隣を見ると、まだ寝ているリリアがいた。

窓の外からは淡い明かりが差している。

僕はベッドから降りて、カーテンを開ける。日光が、僕の部屋を照らす。そこまで大きい窓ではなかったが。これだけで照明はいらないくらいには明るかった。

「うぅ……シン、ゴ?」

ゆっくりと、リリアが目覚める。もぞもぞと眠そうに体を動かしていて、どうやら日光が眩しいようだ。

「おはよう、リリア。」

「ろふぁようおふぁいます。」

手に口を当てながら話すリリアに、少し苦笑する。

「よく眠れた?」

「え、えぇ。眠れました、けど。」

僕の質問に少し顔を赤らめながら話すリリア。おそらく、僕にあくびを見られたことが恥ずかしいのだろう。

「そう、それは良かった。それで、朝はどうする?」

僕が今後についてという視点に話を変える。

「朝は、と言いうと?」

「あぁ、ごめん。主語が抜けてたね。朝ごはんの事だよ。」

訂正すると、なるほど、そういう事でしたかと言ってベッドから起き上がリリア。

「軽くパンでも食べるだけにしておきましょうか。多分、すぐに呼ばれますから。」

「うん。わかった。」

一瞬、誰に呼ばれるのか聞きそうになったが、リリアの暗い顔を見てすぐにに昨日を思い出した。

「でも、その前に一度顔を、というか体を洗っておきましょうか。寝てる時に汗をかいたでしょうしね。」

身体洗浄クリーンを使うリリアを見て、僕も同じ事をした。

「多分、父が……いえ、王が帰ってきてすぐ王の間に呼ばれると思いますので、急いで食べましょう。」

そう言って、コッペパンのようなものにお手製のジャムのようなものを塗って渡してくれるリリア。

時間がないとのことだったので、ちゃぶ台ーーのようなものーーは出さずに、その場に正座して、2人して急いで食べる。

急ぎつつも、美味しいパンを僕が食べ終える。すると、同様に食べ終えたリリアがすっと立ち上がる。

「さてと、此処を出る準備をしましょうか。申し訳無いのですが、鞄に入れるのを手伝ってもらえますか?」

「もちろんだよ、それで、僕は何をすればいい?」

リリアにつられて立ち上がる。

「私が出すものを鞄に入れて言ってください。」

「わかった。じゃあ早速始めようか。時間、無いんでしょ?」

「は、はい。そうですね。」

すんなりと彼女のお願いを受ける僕を見て少し戸惑うリリア。

多分、酷い扱いを受けてきたから動揺してるんだろう。せめて、僕だけでも彼女に対しては優しくしよう。

リリアが出す様々なものを鞄に詰めながら、僕はこう思ったのだった。

やがて、ナップザックのような革で出来たバッグに荷物を詰め終えてすぐ、僕達は呼ばれた。





「さて、お主が勇者召喚によってここに来た勇者か。」

目の前には、いかにもな感じの王がいた。他の人にバレない程度に周りの様子を観察する。目の前には玉座に座った王。そのすぐ近くには執事のような者。反対側にはどこかリリアに似た女性が2人。1人は昨日会った人。恐らく、リリアの腹違いの姉だろう。

僕はそこで観察をやめ、王に目を向けた。

「はい。まだ自分が勇者という実感はありませんが。僕の名前は鳴上慎吾と言います。」

ひとまずは、落ち着いて話す。

「その黒い髪、黒い目。古来より伝わる勇者と一致する、か。ふん、リリアごときに勇者召喚が成功できるとはな。」

キッと僕の隣で俯いているリリアを見つめる王。

その様子を見て、本当にリリアが嫌われているのだということが分かった。そして、同時に自分の中で怒りが込み上げて来た。なんとか顔には出さない。

もしも、顔に出したら多分リリアの立場がさらに悪くなるから。

冷静に判断する一方で、自分の中でドロドロとしたものが渦巻く。

はは、不思議だなぁ。自分に対して何か言われても別に平気なのに。自分に優しくしてくれた人を貶されると、すごく、すごく、腹がたつ。

「……」

はらわたが煮えたくる気持ちを今は(・・)抑えて、王を見つめる。

「世の名はデルア・エルノーゼ。この国、マキシナ王国の王である。」

「……」

少し胸を張るように話す王。通常なら、その顔から威厳を感じるところだろうが、残念ながら、今の僕には玉座で踏ん反り返っているようにしか見えない。

「いきなりこの場所へ呼ばれて、戸惑っておろうが、主を呼んだのには理由がある。」

「理由、ですか。」

リリアからは魔王を倒すため、という理由らしきものは聞いている。でも、実際は魔王による危機はそこまで大きく、緊迫したものでは無い。そこで、王がどのような理由を口にするのか、聞こうと思った。

「この世界には魔王がおる。奴は善良な市民を蹂躙し、この国を侵略しようとしている。そこで、主にその魔王を倒してこの国を、いや、この世界を救ってほしい!」

この世界、ね。随分とまぁ大きくでたな。まぁ間違っては無いんだろうけど。

「わかりました。僕が救えばいいんですね?話はリリアからは聞いています。女神様からもらった力で、僕1人(・・・)で、魔王を倒してご覧に入れます!」

僕はわざとらしく、どこかで見たようなお芝居をする。

「うむ。ありがたい。これで世界は救われるだろう。」

ここまでは普通だった。王も、リリアに軽蔑の念を送るも、僕に対しては普通の対応だった。それを冷静に確認する。

「しかし、お主1人では右も左もわからぬ世界で心細いだろう。そこにおるリリアを連れて行くといい。こう見えてかなり強い。」

最後の方に軽蔑の念が込められていたのは、この場にいる全員が感じられた。そして、改めて決意した。

リリアを魔王討伐に連れて行くわけにはいかない、と。

ここからが勝負だ。問題は王はどこまでごり押ししてくるか。

奥歯を噛み締めながら、僕はリリアを連れていかないための最善策を取る。

「ええっ?!リリアを?ダメですよ、そんなのっ!!」

我ながら、わざとらしい演技だとは思う。でも、この場にいる僕以外の全員が驚いたことは、わかった。特に、隣にいるリリアは俯いていた頭を上げて僕の方を見て目を見開いている。

「こんなか弱そうな人を連れて行くなくて、出来ません。僕の心がそんなことを許せません!!」

手振り身振りを使い、いかにも紳士風な言い方をする。

そんな僕に、驚いた様子の王。

「……」

小休止。黙り込んでしまう。僕がこれでリリアを救えた、と思ったその時。王の口は開いた。

「まさか、リリア。禁忌魔法を使ったな?!」

怒声だった。大きい空間いっぱいに、ビイイイィイッと、響いた。

「そんな、王様?私はそんな事…」

「うるさいっ!黙れ!!自分が死にたく無いから、魔王討伐に連れていかれると思ってその少年を、禁忌魔法で洗脳したのだろうっ?!」

もはや、狂気だった。なぜ、彼女がここまでされるのか、理解できなかった。

もはや、僕の中にあった怒りは頂点を通り越して、呆れに変わっていた。

「そ、そんなことしたりしていません!!」

「だが、お前ほどの魔法使いならば、できるはずだ!」

「そんなっ、横暴です!!私にはそんな事ーー」

必死に否定するリリア。そして、次から次へとそれらを潰して行く王。通常な人間なら、狂っている、とそう言うだろう。でも、この場にそんなことを言える人間は僕とリリアを除いていなかった。





「ごめん。君を助けようと思ったんだけど……むしろ君の立場を悪くしちゃった。結局、君もついて行く事になっちゃったし……」

「いいんですよ、元からそうでしたし。気持ちは伝わりましたから。今は、武器や装備を貰えるだけでもいいと、そう思いましょう。」

悲しそうに笑うリリアに申し訳なさを感じた。

僕とリリアは、あの後に王の間を半ば追い出された。しかし、最後の情けということで第12宝物庫から何か持っていっていいと言われたため、衛兵の案内によってその宝物庫の中にいる。

衛兵は外にいるのでこの話は聞こえない。

「私のことより、今は武器を探しましょうよ。シンゴ。」

「……わかった。」

私なんか、といって欲しくはなかったが、今は彼女のいう通りだろう。僕は

落ち着いて見渡した。広さは学校の教室一つ分ほどの部屋だ。リリアによると、宝物庫の中では小さいらしい。

しかし、部屋が小さいからこそ、すぐに話の全貌が見えてきた。

「「……」」

2人で黙り込んだ後、僕が先に口をを開く。

「まさかここまで運がないとはね。」

ハハハと乾いた笑いが出てくる。

周りにあるのはほとんどガラクタ。床は埃だらけで何もなかった。

「思い出しました。第12宝物庫と言えば、ゴミ蔵と呼ばれているのを。」

「それ、宝物庫じゃないじゃん。」

「確か、昔あった宝物を授与や売ったりしているうちに物のなくなったここが、今ではいらなくなった物を入れる蔵として使われているらしいです。」

淡々と説明するリリア。僕ははぁ、とため息をついた。

「なんとか使えそうなものといえばこの右手しかないガントレットと、ただの鉄の剣。」

僕はさっき見た中で唯一使えそうだった二つを装備してみる。

「あ、思ったよりいいかも。」

「そうですね、似合ってますよ!」

褒めてくれる。少し嬉しい。

「リリアは装備しなくていいの?」

「申し訳ないんですが、私は自分用のがありますから。」

そう言ってレイピアと胸あてを見せてくれるリリア。

まぁ、そりゃそうだよね。今まで魔物と戦ってたらしいし、装備くらいあるか。

僕が落ち着いたのを見て、リリアが話しかけてくる。

「では、行きますか。」

「うん。そうだね、行こう。」

部屋の外にいる衛兵に準備していた荷物だけ頼み込んで取りに行かせてもらえはした。

が、息をつく間も無く、僕らは衛兵に魔王討伐に出発するのは早い方がいいと言われ、追い出されるように町の外に出て行った。

こうして、僕とリリアの魔王討伐の冒険が始まった。

今日は一気に書き上げました。大変でした、できればもうやりたくないです。でも前回25話までノンストップといった手前、いきなり次の日にそれをしないというのもどうかと思ったので頑張りました。楽しんでいただけていたら嬉しいです。ってまだあんまり楽しい要素ないですね。次回の次回くらいからしっかりと面白くなっていく、と思い、ま、す...頑張って書いていこうと思います、はい。前みたいな間は空けずに頑張リマス!!

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