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突如として訪れた終止符。

勢いと思いつきで書き始めてしまいました。鉄は熱いうちに打てと言うので、アイデアを忘れないうちに書き留めようとしていたら、書きはじめてました。文を書くのは下手ですが、読んでいただけると嬉しいです。

僕が人に親切にされた最初で最後の記憶は、4歳の時の物になる。僕が落としてしまった帽子を、綺麗な女の人が拾ってくれて、

僕に渡してくれたこと。その人はしきりに僕にごめんね、ごめんね、と謝っていたけれど、なんのことで謝られていたのか、僕はもう思い出せない。

幼稚園生。昼の遊ぶ時間がおわると体育館に集合だった。でも、みんなおもちゃを片付けない。だから、僕が1人で片づける事にした。だって、みんなのためだから。

みんなより少し遅れて体育館に行くと、すごく怒られて、1時間くらい廊下に立たされた。その日は真夏日で、途中から足がガクガクしだしたのはよく覚えている。確か、その後に倒れて救急車で運ばれたのだったと思う。

小学生。小中一貫校に通っていた僕は、毎年みんながやりたがらなかった運動会実行委員をやった。

と言うよりも、押し付けられた。自分から立候補はしないものの、指名されたりしたらやらざるを得なかった。

それがみんなのためだと思ったから、特に断る気もなかった。僕が実行委員になると、女子が示し合わせたかのように誰も手を上げなかった。だから、普通は男女1人づつの実行委員も、僕のクラスだけは、いつも1人だった。教師は仕方ない、と言って笑っていた。おかげで9年間実行委員を1人でやり続けるという偉業を成し遂げた。あ、そういえば他にもいろいろな係を押し付けられてやった気がする。

高校では、知り合いがいない所を受験する事になったのだけれど、なぜか高校のクラスメイトも僕を避けた。文化祭でクラスメイトがみんなサボッて僕のクラスだけ出し物が間に合わなくなりそうだったので、自主的に1人で居残りして頑張った。

少しだけ褒められるかな、と淡い期待をしていたりもした。

でも、結局最後の最後で間に合わず、教師からも生徒からも、その責任を全て押し付けられた。それからは毎日が嫌がらせといじめの日々だった。

でも、不思議と僕に危害を加える人々には嫌な感情は覚えなかった。ただ、僕の人生は悲惨だな……と、他人事のように思っただけだった。

そして現在。高校2年生になって、3ヶ月たったある日。休み時間なので、学校の椅子に座って本を読んでいた。1人でいるときはいつもそうしていた。話すような友達なんて、一人もいなかったから。

本を読んでいると、何やら、読んでいる本に自分以外の影が写り込んでいることに気づいた。

なんだろう、とその影を見ていると、人の形をしたそれは何かを振り上げる動作をした。

ゴスッ!!

頭蓋骨の中で鈍く反響した音に続いて、鋭い衝撃を受けた。でも、そう認識した時には、

視界は暗転していた。





僕、鳴上慎吾は、気づいたら暗闇の中で1人佇む少女、いや、美少女に謝られていた。

「ごめんなさい。地球の人々の不幸パラメータがあなたに集中しました」

綺麗な謝り方をする人だ、と思ったのが第一印象だった。

「え、えっと……すいません、あなたの言ってることがよくわかりません。ていうかここどこですか」

突然場面が転換したために自分の身に何が起きたかわからなくなった。

が、すぐに先程頭を殴られた事を思い出す。

「あー、僕ついに死んじゃいましたか。ていうか、殺されましたね」

自分でもあっさりしているとは思うけど、それくらいの気持ちだった。ただ、事実として受け止めただけ。

「申し訳ありません。それも、すべて女神たる私の責任です。あなたを救おうと何度も試みはしたのですが……」

僕は落ち着いて話す少女を見つめる。そして、すぐに悲しそうに話す彼女から目が離せなくなった。

綺麗な黒色の髪、二重の目、フリルのついたドレスのような白い服。彼女の全てが美しかった。

例え死んだ後でも、この人に会えてよかったと思えた。

「よくわかりませんが、僕はあなたのような綺麗な方を見れただけで、もう満足ですから」

不思議と、胸がいっぱいになった。少し遅れて、今までの走馬灯が頭に流れ始めた。僕はなんとなく目を閉じて、こう思う。満足だとーー


「ちょっと、勝手に完結しないでください!!」

「あれ?まだあの世には連れて行ってもらえないんですか。ていうかむしろここがあの世ですかね?」

閉じていた目を開けて、キョロキョロとあたりわ見渡すが、相変わらず地面がどこにあるかすらわからない暗闇だった。分かるのは、目の前で女神と名乗る美少女の周りが鈍く光っていることだけだった。

「ここは私の仕事場みたいなところですよ、慎吾さん。確かにあなたは死んでしまいましたが、まだこれからがあります」

落ち着いて欲しい、と言いたげな様子で話しかけてくる美少女。

「えーと、これからですか?僕死んだと思うんですけど。」

「はい。あなたは死亡、つまるところ殺されました。言っても仕方ないことではありますが、改めてもう一度お詫びします。本当に、申し訳ありませんでした!!」

綺麗に頭を下げてくる。長い髪が地面ーーうっすらと地面らしきものに、だがーーにつきそうになる。

「え?なんで謝るんですか?というか、頭をあげてください。僕なんかに頭を下げても誰も得しませんよ。」

僕がそう言うと頭を上げる彼女。が、その顔は少し引きつっていた。

「今から説明をしますから、そんなに自虐的なこと言わないでください」

「え、どこか自虐的でしたか?すいません、僕みたいな人間にはちょっとわからないです」

「そういうところですよ、そういうところ」

首をかしげる僕を流して、話を進める美少女。

「いいですか、鳴上慎吾さん。まず、先ほども申し上げましたが私は女神です」

「これはご丁寧にどうも。もう知ってるみたいですが、僕は鳴上慎吾と言います。これから、と言ってもどれくらいここにいるかわかりませんが、よろしくお願いしますね、メガミさん」

僕はメガミさんに一礼をした。

「違います。私の名前はメガミじゃないです、女神は役職です。私の名前はエリノアです」

「あ、これは失礼しました。エリノアさん。すいません、やはり僕なんて死んでも誰かに不快な思いをさせてしまうんですね。消えてしまいたいです」

笑顔で言う僕に苦笑する様子のメガミーーじゃなかった、エリノアさん。

「いえ、それはいいんですが…ていうかなんでそんな爽やかな笑顔なんですか」

「あはは、そんな風に言ってもらえることなんて初めてです」

「…慎吾さんにツッコミをしてたらキリがないですね。もう説明を始めましょう」

はぁ、とため息をついてはいるが、その表情は先ほどの思いつめたものとは違ったように見えた。

「なんの説明ですかね?」

「あなたが、なぜ悲惨な人生を送ることになってしまったか、なぜ16歳という若さで死んでしまったのか、についてです」

そして、エリノアさんは僕に説明を始めた。





「なるほど、つまり女神のエリノアさんは地球の人々を管理しているが、ちょっとしたミスでたくさんの人の不幸が僕に集約されたということですか。」

僕のまとめがあっていたらしく、頷いてくれるエリノアさん。ちょっとした仕草が美しい彼女に少しドキッとしてしまう。

「私も詳しい事まではよく把握していないのですが、おおよそそういうことです。あなたは生まれた瞬間から不幸が確定してしまっていたんです。私もなんとかしようとはしたんですが、なんとかする前にあなたを死なせてしまって…」

「いいんですいいんです!気にしないでくださいよ!」

グッと親指を立てる僕に申し訳なさそうにするエリノアさん。

「だからなんでそんな爽やかな笑顔なんですかっ!!!!」

「あ、ツッコミはしてくれるんですね。」

ツッコミまで美しい、そう言おうとしたが、さすがにそれはおかしい、と自分に言い聞かせた。

「あ、でも…さっきの話だと、普通の人は死んだらまた生まれ変わるんですよね?そうなると、なんで僕はここでエリノアさんとお話ししてるんでしょうか?そういえば、さっきもこれからとか言ってましたね。」

先ほど彼女の話だと通常、死んだら別の人間に生まれ変わるそうで、最近は人間が増えてきたせいで魂を新たに作らなければならず、大変なんだとか。あ、僕もその新しく作られた魂の1つらしい。

「それはですね、実は……」

こちらに近づいてきて溜めるエリノアさん。

「実は?」

つられて僕もゴクリと唾を飲む。

「あなたはこれから転生するんです!!!!」

「あ、はい。そうですか。なるほど、それでこれからと言っていたんですね。おそらく、優しそうなエリノアさんのことですから、悲惨な僕の人生をもう一度やり直させて、まともな人生を経験させてあげよう、といった感じででしょうかね。」

僕は思ったことをそのまま述べた。

「えっ?!なんでそんな普通に会話するみたいに言っちゃうんですか?そこはもっと驚きましょうよ」

人差し指を立てて僕に突きつけてくるエリノアさんだったが、僕は気にせずに話を続けた。

「僕の予想、違いましたかね?」

「うーん、間違ってはいません。というか、それもある、という感じですかね」

「それも、ということは別の理由があるわけですね?」

「はい。慎吾さんは他の人と違い、魂に刻まれた幸せと不幸のパラメータが全て不幸の方に傾いています。全部で200割り振れるとしたら、通常は100対100くらいなのに、あなたは0対200といった感じですね」

「わー、すっごい理不尽」

なるほど、僕が悲惨な人生だったのもうなずける。

「そこに関しては本当に申し訳ありません……」

「いいんです。気にしないで話を続けてください」

「わかりました。では続きを」

僕が話の続きを促すと、再びエリノアさんの口が動き出す。

「普通なら、魂が地球で生まれた方はパラメータを引き継いで、地球で生まれ変わるんですが、慎吾さんの場合は魂に刻まれたパラメータが傾きすぎているので、このまま地球で生まれ変わると今回と同じことが再び起きてしまいます」

それは避けたいですよね?と同意を求めてくるエリノアさんに頷く僕。

「ですから、慎吾さんを救うための苦肉の策として別の世界にあなたを転生することにしました。その世界では、スキルと呼ばれる特殊な力が持てるため、どうにかして私の権限でそのスキルを幸運になるものにして、あなたの不幸パラメータをプラマイ0、あわよくばあなたを幸運ににしたいんですよ」

なるほど〜、と他人事のように聞く僕だったが、途中からエリノアさんがとてもファンタジックなことを言っていることに気づいた。

「あれ?スキルなるものがあるということは…もしかしてその世界って魔法使えちゃったりします?」

恐る恐る尋ねる。

「使えちゃったりしますね、はい。」

「よしっ!僕の夢が叶う!!!」

子供みたいな僕の嬉しそうな声を聞いて笑みがこぼれるエリノアさん。

「夢、ですか。魔法を使って何かしたいんですか?」

「空、飛びたいんですよね」

少しドヤ顔で言ってみる。

「あ、それはいいですね。私もよく飛びますが、楽しいですよ!!」

「そうですか、いいですね。楽しみになってきました」

だんだん浮かれてきたけど、この質問も忘れない。

「それで、僕にとってのデメリットはなんですか?」

笑顔で聞いた。

そして、その言葉にぎくっとしたエリノアさん。彼女はゆっくりと口を開いた。

「魔王を、倒さなきゃいけないことです……

「魔王、ですか」

「魔王、です」

「それって、ギャオーーな、あれですか」

「ギャオーーな、あれですね」

謎の擬音語で会話する。

「慎吾さんは、地球から無理やりあっちの世界にねじ込むので、ある程度辻褄にあった理由がないといけないんですよ。そして、その理由が異世界からの、勇者召喚。というわけです」

「マジですか」

「マジですね」

魔王ねぇ。魔王、か。そういえば、クラスに津宵真央って女子がいたな。あだ名で強い魔王とか呼ばれてたな〜。あんま関わったことないけど、確か本人はすごくか弱いくて身長も低いんだよね…

「あ、もしかしたら魔王倒せるかもしれないです」

「私、慎吾さんがすごく見当違いなこと考えてる気がしますけどまぁいいです」

そして、それでは、と続けるエリノアさん。

「もしも何か困ったことがあれば、慎吾さんが召喚された王城の中にいる王女を頼ってください。一般常識とかも王女に教えてもらえるかと思います」

王女か。城内に異世界からの勇者召喚か。しかもそれが僕とはね…

「なるほど、わかりました。鳴上慎吾、心の準備オッケーです。いつでもどうぞ!!」

そう言って半ば一方的な決意を胸に手を横広げて目を閉じる僕。

「え?決意固まるの早くないですかね。まぁいいです、わかりました。では、あなたを召喚してもらいます。これで私とは次にあなたが死ぬまではさよならです。」

「そうですか、名残惜しいですね。あなたのような美少女に出会えて本当に良かったです」

僕は閉じていた目を開けてその姿を目に焼き付ける。

「褒めてくれて嬉しいです。例えそれが、お世辞だとしても」

お世辞じゃないですよ!!

エリノアさんにそう言おうとした時には、すでに僕の視界は真っ白になっていた。そして、

「いつでも見守っていますからね…」

そんな声が聞こえた気がした。

読んでいただきありがとうございます!

誤字脱字がありましたら気軽に教えて下さい。 これから慎吾がどうなるのか、気になったら続きも読んでいただけるとありがたいです。

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