帰還日三日め
観測センターに呼ばれたのは俺だけじゃなく、母さんも父さんもいた。
三人で誰もいない部屋に座らされて、十年経った兄さんの顔なんて想像できないね、と話していた。
俺だって背も伸びたし、声変わりもしている。
引き合わされたとしても、兄さんだと受け入れられるだろうか…
…いや、まだ兄さんだと分かったわけじゃない。
「色織ご家族様。
お集まりいただき、ありがとうございます」
いろいろ考え込んでいたら、男が入ってきていた。車に乗っていた、あいつだ。
「私は観測センターの副所長、柱と申します。
道中お話した通り、調査艦『リバルティオン』が帰還しました。
しかし現在保護が確認できているのは乗組員十二人中…僅か二名。そのうち一名は負傷が激しく、意識が戻っていません。
今回生存が確認され、保護された色織春雪くんは五体満足で意識も良好です。
しかし残念ながら…」
男は一瞬言い淀むかのように、言葉を止める。
母さんは父さんの手を握り、次の言葉を待った。
「……我々の説明できない状態に、あります」
兄さんは観測センターの最下層で厳重に保護されている。研究員でも許可がなければ近づけない。
そこへ降りるエレベーターに三人と柱さんで乗り込む。
「見ていただいたほうが、分かるでしょう」
そう言って、地下直通のボタンを押す。長い長い下降で気持ち悪くなりそうになったところで、エレベーターが止まる。
扉が開くと闇色が部屋に立ちこめていた。
薄暗い蛍光灯を頼りに廊下を三人で歩いていくと、鉄格子がはまった小さな窓付きの扉が見えてきた。
「…春雪くん、いいかい」
柱さんがノックするその扉が開かれる。
部屋は小さかった。病室みたいにベッドと小さな机しかなかった。
そのベッドに座って、こちらを見ている。
「…あれ、今日はいっぱいいますねぇ」
旅立ったその日、十年前の兄さん。
―――あの時から全く変わってない。
高校生のままの兄さんが、そこにいた。




