帰還日
――あのとき…
有志で募集した打ち上げ実験にて、当時兄さんは最年少で宇宙調査船の乗組員となる。
基本的なパイロット訓練を夏休み返上して受けただけ。
危険はなく、木星までワープをした際に体に起こる影響を観測することが任務。
全てが順調だったが、打ち上げの事故で帰還予測計算軌道から逸れてしまった。
原因は不明。現在の位置特定の通信すら還ってこない。
…それが最後に報告された観測センターの言葉。
兄さん含む数人の研究員とパイロットを乗せた調査船『リバルティオン』は、およそ三年で任務を終えて戻ってくる予定だったが、
…あれから十年経った。
僕は高校生だった兄さんと同じ、高校二年になっていた。
―――兄さんはまだ、帰ってこない。
「夏月!朝練終わったら飯食おーぜ」
同じバレー部のフミは相変わらず食べてばかりだ。それでいて細いのだから不公平だよな。
サーブ打ち後にフォーメーション練習。
練習試合が近いので力を抜いてられない。
「…よし、時間だ。さっさと教室戻れ」
はい、と声を上げる。朝練の終わりは眠たくなるのが常。
教室も同じフミと学食のパンを食べて、一時間目からすでに眠かった。
「こら、寝るな夏月!」
教科書で叩かれて顔を上げると、古典の赤碕から睨まれる。
俺には怒ってばっかの怖い担任でもあるが、クラスでは結構評判がいい。
「夏月ーまたかよー」
笑い声が輪になって広がる。
赤碕の授業が終わった後、職員室に来るよう呼ばれた。これで五回目の呼び出し。
赤碕の言いたい事は分かっている。大切な時期だけど眠いのは仕方ない。
今日こそがつんと反論してやろう、と職員室を訪れた。
しかし赤碕はいつもの自分の机ではなく、校長室に手招きしている。
…こ、校長レベル…!?
「色織くん、だね」
場の空気は思ったより重い。
…バカな、ただの居眠りだぞ。俺以外だって居眠りくらいするはずだ。
俺が落ち着かないでいると、校長は髭をたくわえた口を一旦結ぶ。
沈黙の後、続けた。
「先程連絡があって…
君のお兄さん…春雪くんが、地球に帰還したそうだ」




