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英霊使い  作者: 徳永翔己
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第八章 新たなる敵

日本で新たに更級学園・高等部に編入したミモザやランスロット、トーマ、ケティは、日中は普通に学園生活を送り、夜になると虚夢退治に出かける日々が続いた。しかし、そこに新たな敵が現れ「虚夢」を影から援護していると知りますが…。虚夢以外に敵がいる!その、衝撃の真実に愕然とするミモザ達の運命は…?そして、敵の狙いとは?

 更級学園高等部の二年生に編入したミモザとランスロットは、日中は学校で平和な時間を過ごしていた。一方、三年生に編入したトーマとケティも学校で噂の的だった。

「見て、見て。あれが二年生に編入して来たランスロット君よ。編入試験の成績も凄く良かったって!」

「成績良くて、ルックスも良いなんて反則的よね!スポーツも得意だって聞いたよ。」

教室の前には女の子達の群れがひしめいていた。

「こういうところは英霊学校とあまり状況変わらないね、ランスロット。」

ミモザが話しかけ辛そうにランスロットの席の前でそう呟いた。

「知るか。俺は群れる奴らは好かん。人混みなら三年生のあいつらの方も話題になっていたぞ。」

ランスロットは次の授業に使う教科書をまとめると席を立った。

「ああ、トーマも英霊学校で結構女子に人気あったみたいだもんね。ケティは美人だし…。何か私だけ浮いてるような気がする。」

ミモザは苦笑してそう言った。

「他の奴らの言うことなんか、いちいち気にするな。ここでは騒々しくて話しにならん。いつもの屋上に移動するぞ、ミモザ。」

ランスロットはミモザの手を取ると、教室を出て行った。

「ミモザはトーマのこと、どう思っているんだ。」

ランスロットがぶっきらぼうに尋ねた。

「え?トーマは頼りになる仲間だと思っているけど。私とランスロットは魔法による攻撃の方が得意だから、接近戦だと今のところトーマが一番強いし。」

ミモザはけろっとした様子でそう答えた。

「…接近戦でも一番強いのは俺だ。トーマのあれは、まぐれだ。」

ランスロットは不機嫌そうに言った。

「あ、あの子。また、ランスロット君と一緒よ。何なの?同じ時期に編入して来た吉住奏都よしずみかなとだっけ。そういえば、あの子も編入試験の成績が凄く良かったって噂で聞いたけど…。どういう関係なのかしら?」

行き交う廊下で同じ学校の女生徒達に後ろ指を差されながら、ミモザは恐縮していた。

「あ!ミモザちゃん!ランスロット。どこ行くの?」

また、女子達の歓声が上がった。

「あれ、三年のトーマ君よ。気さくでスポーツ万能で格好良いって先輩達が噂していた。何?ランスロット君と知り合いなのかしら?ミモザって誰?あの子のこと?」

ますます、女子からの視線が痛くなってきてミモザはランスロットの陰に隠れていた。

「ちょっと、ランスロット。手を放しなよ。ミモザちゃんが困ってるだろ。」

トーマがそう言ってミモザの手を引いた。再び女子の歓声が上がる。もう、ミモザにとっては穴があったら今すぐ入りたい心境だった。

「俺がミモザと一緒なのは英霊学校の時からだ。手を繋ぐくらい何が悪い。」

ランスロットはむっとして、トーマに言い返してミモザの手を引いた。アレクサンダーはその様子を見て、

奏都かなと。いい加減どうにかしないとギャラリーが増えているぞ。」

と語りかけた。

「アレクサンダー!私が困っているのが分かっているなら、この状況をどうにかしてよ。」

アレクサンダーはミモザから抜け出ると、

「私の主がこう言っている。お前の主にも一言忠告してくれないか。」

と、トーマとランスロットの英霊に語りかけた。

「俺の主はせっかちだからな。言っても聞くとは限らないぞ。」

トーマの英霊フランシス・ドレークが先に応えた。ランスロットの英霊ガラハットは、

「私の主は気位の高い男ゆえ…、言っても素直に聞くかどうか。」

三人の英霊はそろって溜息をついた。

「ちょっと、アレクサンダー達の薄情者~!」

ミモザが二人の手を振り払おうとすると、ケティが現れた。

「ちょっと!そこの三人!こんな廊下の真ん中で騒いでいたら、他の生徒達に迷惑でしょ。まずは、ランスロットとトーマ、ミモザの手を放しなさい!」

そう一括すると、ぱっと二人がミモザの手を放した。

「あれ、三年のケティさんだろ?うわ~、本物の金髪美人だな。」

今度は男子生徒から溜息が洩れた。

「ケティ~、有り難う。助かったよ~。アレクサンダー達も止めてくれないし~。」

ミモザがひしっとケティに抱きついた。

「どうせ、いつもの屋上に行くんでしょ。って言うか、もう休み時間終わるから次は昼休みに集合ね。」

ケティがそう仕切ると、

「ちえっ。ランッスロットが邪魔するから、ミモザちゃんと話し損ねたじゃんか。」

と、トーマが舌打ちした。

「それは、こっちのセリフだ。万年落ちこぼれが。」

ランスロットもぷいっと横を向くと、ミモザと教室へと戻って行った。と、その時アレクサンダーがミモザに囁いた。

奏都かなと、妙な気配がする。気を付けろ。」

「妙な気配?」

ミモザが振り返ると、突然廊下のガラスが割れて小石が投げ込まれて来た。ミモザが石にくくられた手紙を手に取ろうとすると、小石から黒い煙が立ち上り、人型になった。

「お前達、英霊使いだな。この街はお前達の好きにはさせない。虚夢をこれ以上狩れば、お前達を食らってやる。」

ランスロットも異変に気付いて、ミモザを振り返った。

「ミモザ!気を付けろ!そいつは呪詛だ!」

ランスロットが叫んで、ミモザがとっさに小石の周りに小さな結界を張って、人型の影が爆発した。お陰で何とか呪詛は防げた。もし、呪詛に気付かず、周りの生徒に振りかかったらと思うと冷や汗が出た。ミモザとランスロットは顔を見合わせた。

「虚夢を擁護している者が、この街にいる。」

と、声を揃えて言った。ランスロットは式神をトーマとランスロットに急いで飛ばし、情報を伝えた。学校の授業が終わったら、ランスロットの家に集合だ。


 更級学園の高等部の屋上にミモザとランスロットを監視していた子供の姿があった。年は十三歳ほどで雪のような白い肌、銀色に揺れる短い髪、そして深紅の瞳。身長は135センチと言ったところか。

「イリス、何遊んでるの。あいつら、あんたの虚夢の軍勢で倒せそう?」

屋上に新たに赤毛の少年が現れた。年は十六歳、髪の毛とは対照的に澄んだ青い瞳をしていた。身長は158センチほどの小柄な美少年だった。

「楽勝だよ。だって、あいつら英霊がいないと何にも出来ないじゃん。サリエルの力を借りるまでもない。僕の使役する金鬼で虚夢を強化してやればいいんだからさ!」

イリスは得意気な顔でサリエルにそう答えた。

「ふん、そう上手くいけばいいけどね。あのお方の話だと、今年の英霊学校の卒業生には特に優秀な人材が揃っているって聞いたよ。」

サリエルはそう言って姿を消した。イリスもターゲットを確認して、同じように姿を消した。


 一方、昼休みに屋上へ集合したチーム・クローバーは、先程の謎の呪詛について話し合っていた。ミモザのランスロットの報告で更級学園に呪詛を仕掛けた者がいると話した。

「恐らく、この街には虚夢の他に新たな敵がいる。これは、俺達の正体を知った上での挑戦状だ。」

ランスロットは呪詛の内容が『虚夢を狩るな』と言うものだったことから、虚夢が単なる負の魂を無作為に食らっている怪物というだけではないことを予想していた。

「理由は分からないけど、敵は虚夢を狩ることを止めさせようとしている。これから先、虚夢を狩るだけでは済まないかもしれない。」

ミモザも珍しく神妙な顔つきで、そう呟いた。ケティは虚夢を狩る仕事にも、まだ慣れていなくて不安そうな顔をしていた。

「ケティは心配すんなよ。仲間はおいらがきっちり守るさ!」

トーマはけろりとした顔でケティに笑いかけた。それに少し赤くなりながら、ケティは小さく頷いた。

「虚夢を狩り続ければ、いずれ敵の正体もはっきりする。皆、気を抜くなよ。それと、なるべく一人では行動するな。最低限二人ペアでしばらく行動する。いいな?」

ランスロットはそう指示を出して、ミモザやトーマ、ケティも同意して頷いた。

学園ファンタジーらしく、初の挑戦となる長編小説ですが新たな敵の出現に、少しでも楽しんでいただけたらと思います。軽く読める感じの物語を予定していますが、これから徐々にシリアスな展開も出て来るかもしれません。

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