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天使に取りつかれて  作者: 朋子
第1章 ありえない休日
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◆11 あくしゅ

◆11 あくしゅ



 洗濯機の使い方を教えてもらい、ただいま実践中のチェカ。

 もちろん傍には明。

 じりじりと睨むかのようにチェカの細い指を見ていた。

 ピッと、短く高い音が鳴った。

 そして、唐突に気付いた。

 

「あれ触れる」


 明が変な声で驚く。

 昨日、皿を取ってもらったことなど頭から抜け落ちていた。


「はい? ええ。触ろうと思えば触れるよ?」


 何がおかしいといった調子で話す。

 センタッキ君から明へと目を移動させた。


「だって、すりぬけたじゃん。壁、壁」


 なぜか2回言った。


「いや、あれはなんにも考えずに通ったので。えっと……、ほら。触ろうとしなければすり抜けるん――うわぁ!!」


 センタッキ君に向かって手をねじ込む。まさにすり抜け。手首から先がセンタッキ君に突き刺さり見えない状態だった。はっきりいって結構あれな光景。

 しかし、感覚が異なるのかなんでもない顔で説明をしだすチェカ。

 その途中で驚きの声を上げ、説明を中断させた。いや、中断させられたが正しいのか。

 明がチェカの頭めがけて、手刀をおろしたからだ。

 ぱこんと音が出た。


「痛いじゃないですか!」


 怒った口調でそう言うも、本当に怒る雰囲気はない。

 それは軽めのものだったからか。

 チェカが小さく、当たった頭部をさする。


「痛いんだ。いや、ほら。怒るっていったじゃん、すり抜けたら」


 言い訳じみた、というか言い訳の塊を言った。

 本当は、つい手が出てしまっただけで。

 ばつのわるそな顔で明は自分の右手を左手で握った。


「え、ああ。そうですけど。これは実証するために仕方なく……えっと。すみませんでした」


 そんな明の表情なんぞ気がつかず、最後に謝るチェカ。


「でも叩くのはないと思います」


 そして付け足した。

 明のごめん、との軽い謝罪。

 両者ともに別に怒ってはいない。


「あの、これだけで本当いいんですか? このボタン? ……を押しただけなんですけど」


 話を切り替えて問うチェカ。おそるおそるとしたいった感じで。

 これだけでできたとはまるっきり信じていない。

 センタッキ君は両者を前に、黙々と音を立てて働いていた。


「うん。いいのいいの。OKOK。あとは時間になったら音が鳴って取り出すまで待つだけ。簡単だろ? ボタンと洗剤間違えなきゃ大丈夫大丈夫」


 繰り返す言葉が多い台詞を言った明。

 

「そんなことより、なんであんたに触れたの? 意識してなきゃ無理なんでしょ?」


 そしてさきほどの話を過去から持ってくる。

 洗濯はセンタッキ君におまかせだ。

 疑問を晴らすだけの問い。

 好奇心が含まれた瞳がチェカを見つめる。


「ああ。あれは、リンクした者どうしだからです」


 そう区切ってから、


「ほら、あくしゅできるでしょ?」


 証明の言葉が加わった。

 言葉と同時に、明のぶら下がった手がチェカの白い手によって胸の前まで持ちあがる。

 少しだけ目を見開いた明が見つめる手。

 明の右手が、チェカの両手に包まれる。


「あったかいね。冷たいかと思った」


 素直な感想を口に出した。

 チェカが笑った。


「あと、他の天使も見えると思いますよ。あくまで隠していなければの話ですけど」


 さらりと付け足す。

 ふーんと声をもらす明。

 手は自然に離れた。

 手を見つめる

 そして反らした。


「あとはさっき言ったように音が鳴るまで放っておけばいいから、何かする?」


 聞いた。

 わざとらしく、腕を組んで考えるチェカ。

 考えはいくら経っても出ない。

 時間切れとでも言うように、数秒前背中を向けていた方へと足を動かす明。


「じゃあ、いいや。べつに休みの日に何かしなきゃいけないってわけじゃないし」


 背中を追ってついていくチェカ。

 またも2つの足音。

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