最終章 透明な血
翌朝。
ニュースは小さく報じた。
**「元高校生、死亡」**
記事は短かった。
本人に犯罪歴はない。
しかし、
過去にAIグラスの情報偽装を行っていた。
家族に犯罪歴があった。
外国系の祖先を持っていた。
その程度だった。
コメント欄には、
大量の書き込みが並んだ。
『かわいそう』
『周囲が追い詰めたんだろ』
『でも制度自体は必要』
『本人確認は安全のためだから仕方ない』
『偽装なんてしなければよかったのに』
『何か隠したいことがあったんだろ』
『家族が犯罪者なのは本人の責任じゃない』
『でも怖いものは怖い』
『ご冥福をお祈りします』
凛もそのニュースを見た。
画面に表示された名前。
**朝倉透。**
凛はしばらく動かなかった。
涙が出た。
「……なんで」
自分でも分からなかった。
悲しい。
苦しい。
後悔している。
でも、
怖い。
透の情報が、
頭の中から消えない。
父親。
祖父。
外国系。
偽装。
犯罪歴。
それらの文字が、
透の顔と重なっている。
凛はスマートフォンを伏せた。
そして、
泣いた。
---
その日の午後。
政府は予定通り、新しいAIグラスのアップデートを開始した。
ニュースキャスターが説明する。
「今回のアップデートでは、本人認証の精度がさらに向上し――」
街を歩く人々のAIグラスが、
一斉に光る。
人を見る。
情報が出る。
名前。
人種。
家族。
犯罪歴。
誰も立ち止まらない。
誰も疑問に思わない。
それが、
当たり前だから。
駅前の大型広告には、
《アークライト》の新しい広告が映っていた。
白い背景。
笑顔の家族。
そして、
大きな文字。
**「透明な社会へ。」**
その下に、
小さく書かれている。
**「あなたの大切な人を、正しく知るために。」**
人々は広告を見上げる。
誰かが言う。
「便利になったよね」
別の誰かが答える。
「うん」
そして、
誰もがAIグラスをかけたまま、
歩いていく。
---
数年後。
学校では、
新しい授業が始まった。
**「AIグラス時代の情報倫理」**
教科書には、
一つの事件が掲載されていた。
ケーススタディ。
**「朝倉透事件」**
教師が生徒たちに質問する。
「この事件から、私たちは何を学ぶべきでしょうか?」
生徒たちが手を挙げる。
「個人情報を守ることです」
「偽装をしてはいけないと思います」
「困ったときは周囲に相談することです」
教師は頷く。
「そうですね」
誰も、
問いを間違えているとは思わない。
教科書には、
こう書かれていた。
> 個人の家族情報を理由とした差別は許されない。
その一文の隣には、
AIグラスの画面写真が掲載されている。
そこには、
朝倉透の情報が表示されている。
名前。
人種。
父親。
祖父。
犯罪歴。
そして、
情報偽装歴。
写真の下には、
小さく説明があった。
**「制度は現在も改善が続けられています」**
授業が終わる。
生徒たちが教室から出ていく。
教師もAIグラスを外す。
誰も、
教科書を閉じたあとに、
その少年の人生について考えない。
朝倉透という人間が、
どんな音楽を聴いていたのか。
何が好きだったのか。
誰を愛していたのか。
何を恐れていたのか。
どんな未来を望んでいたのか。
そんなことは、
どこにも記録されていない。
残っているのは、
情報だけ。
血。
犯罪歴。
家系。
偽装。
そして、
死。
人間は、
人間を知るために、
すべてを知ろうとした。
そして、
すべてを知った結果、
一番大切なものだけを、
見なくなった。
――その日も、
世界は透明だった。
あまりにも透明で、
誰もその中にある血の色に、
気づかなかった。
これはすべてAIが書いた文章になります。




