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幸せな夢

体調を崩すと一日がとても暇になります。大好きな楽器の練習や舞踊のお稽古が中止になり、体調を回復させるために勉強やを休まなければならないので本当に退屈な日々が続きます。

「エテルナージュお嬢様、お熱が長引けばアデライード様に看病してもらうことになりますよ」

三日ぶりに体調を崩したわたくしは暇潰しに自分の髪を自由自在に編んで遊んでいると、天蓋の奥から側仕え長のマルメーディの声が聞こえてきました。

「わ、わかりましたからそのように脅さないでくださいませっ!」

アデライード叔母様はわたくしが体調を崩すといつも看病してくれます。ただの風邪なのに領地経営には必要不可欠なほど大切な執務の合間を縫って看病してくれることは申し訳ないですし、元王族である叔母様の看病は大変恐れ多いのです。

しぶしぶ眠りにつこうとしたわたくしを見て満足したマルメーディは「お嬢様が休めるようにムジカに演奏をお願いしておきますね」とわたくしにとって拷問のような言葉を連ねながら微笑みました。

……マルメーディ、わたくしに何の恨みがあるというのです!?そのようなことをされたらわたくし、ムジカの演奏を楽譜に書き留めたくなるでしょう?

ムジカは音楽の天才と謳われるほどのシュピーラの腕の持ち主で、わたくしの楽師です。シュピーラを含む撥弦楽器があまり上手ではないわたくしはムジカを心の底から尊敬しています。

「今日は動物たちのお茶会を演奏いたしますね」

ぽろんぽろんと撥弦楽器特有の音色が聞こえ始めると、シュピーラの柔らかく、透き通るような美しい声が聞こえてきました。

……何だか落ち着く曲調ですね。

「ふわあぁぁ……」

小さく欠伸をしたわたくしはいつの間にか眠っていました。



「エテルナージュ、いつまで寝るつもり?」

懐かしい声が聞こえ、バッと飛び起きるとそこにはもう顔や声を忘れかけていたディアステーデ姉様がいました。記憶に微かに残っている砕けた口調がそっくりです。

「エテルナージュは相変わらず起きるのが苦手だな」

その声が聞こえてきた方向を振り向くとお父様とお母様がいました。その横には一番上のお兄様のツヴァイテ兄様、真ん中のお兄様のテルティウス兄様、一番下のお兄様のウルティムス兄様がいました。

「……っ!」

二年ぶりの家族に会えたことが嬉しくて、わたくしはお父様たちの下へ駆け出し、ぎゅっと抱き締めると人の感触がありました。今まで恐れていた不安が拭われて安心しました。

……よかったですわ。もし、今見えてる家族が幻覚だったらどうしよう、と思っていたのです。

「……おとうさまも、おかあさまも、おねぇさまも、おにぃさまたちも、どこ行ってたのですか?ずっと、ずっと、さがしていたのですよっ!」

こみ上げてくる涙のせいで滑舌が悪くなってる声でわたくしはこの二年間の不満を、悲しみを、辛さを訴えました。

二年前、急に家族はわたくしの目の前から姿を消しました。お仕事へ行ってすぐの時間に何の前触れもなくアルブレヒト伯父様が神殿を訪れ、わたくしを伯父様が治める領地のお城へ連れ帰りました。

「……すまぬ。だが、其方が元気そうな姿を見れてよかった」

「えぇ、本当に。これでわたくしたちも安心して貴女を見守ることができるわ」

「え?」

何を言われているのか全く理解できていないわたくしにディアステーデ姉様が「もう一度お眠りなさい。こちらの世界へ召されて元の世界へ戻れなくなるわ」と真面目な顔で言いました。

その声と共に私は急に大きな眠気に襲われ、倒れるように眠ってしまいました。



「……様っ、エテルナージュ様っ!いい加減お目を覚ましてくださいませ!」

マルメーディの緊迫した声で目覚め、ゆっくりと重たい瞼を開けるといつもは冷静なマルメーディの理知的な藍色の瞳にほ焦りと涙が含まれていました。

「よかった……。本当によかったですわ……」

「え?」

「三日間も眠っていたのですもの。詳しい話は後でにしましょう」

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