表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/8

第2話 少女

「あなたはここで何をしているのだ?」

 俺を見ての少女の第一声はそれだった。それはキチンとした日本語に思えた。なるほど頭の角は飾りかアクセサリーなのだろう。服も縄文生活体験会などの企画が、キャンプ場内で行われているのかもしれない。


「何って、ソロキャンプだけど……お嬢ちゃんはお母さん達とはぐれてしまったのかな? みんなはフリーサイトの方かな? お兄さんが送って行ってあげるね」

 まだ時間が早いから、家族は寝ていて一人で起きて迷ってしまったのかもしれない。であれば家族の元へと送り届けてあげるのが大人としての責任だ。


「何を言っているのかはよく分からないが、あなたが私を送り届けてくれるのか? ……いや、それは一人で為さなければ意味が無くなってしまう」

「いいよ遠慮しなくても、どうせキャンプなんて大体の時間は暇潰しなんだから」

「キャンプ?」

 少女は不思議そうな顔をしている。そうしてその時、少女のお腹が『ぐーっ』と鳴った。少女は赤面する。

「お腹が空いているのかな? ちょっと待ってて」

 俺はそう言ってテントの中に置いてあった、せんべいを一枚袋からとりだして少女に渡した。少女は手に取ったせんべいを不思議そうに眺めている。そうしてにおいを嗅いでからこう言った。

「これは食べ物なんだろうが、物凄く固そうだな。……どれ……」


 せんべいはパリンと割れて、少女は口の中に残った方を何度も咀嚼した。そうして飲み込んでから大きく目を見開いてこう感想を述べる。

「これは何らかの穀物を固めて焼いたものなのか? 塩気もあって大変おいしいぞ」

 言い終わると手に残った分も、またすぐに頬張る。一枚を食べたところで、俺はせんべいを袋ごと少女に渡した。少女はそれを夢中でむさぼり食べる。最近の子供は普段せんべいなんかは食べないのかもしれない。おいしくて甘いお菓子がこれでもかという位にあるからだ。


 しかし俺もせんべいを食べている子供を、黙って最後まで見届けるほど無粋な男ではない。先ほどコーヒーを入れて残っていたお湯を、もう一度沸かし直そうとガスバーナーに火をつけた。少女は夢中でせんべいを頬張りながらも、ガスバーナーの方をじっと見つめている。


 せんべいの方は、袋の中に残っていたのは数枚だったということもあって、少女はあっという間にそれらを食べきってしまった。お湯はまだ沸いていない。少女はバーナーから視線を俺の方に向けてこう聞いてきた。

「この火魔法は初めて見たが、かなり長い時間燃やせるんだな」

 急にそういわれて戸惑っている俺に、彼女はこう言った。

「ん? 火魔法じゃないのか? なにかの魔道具か?」

 中二病というものの話はよく聞くが、最近はこれぐらい小さな子でもファンタジー的なもの言いをするのかと驚いた。確かにテレビアニメでもその手の番組はよく見かける。


「まぁ携帯用のガスバーナーなんて、子供からしたら魔法みたいなもんかな」

 そういいながら俺はティーパックを一つケトルの中に入れた。煮出したほうが濃くなって個人的には好みだ。お湯が沸く間に、俺は先ほど飲みかけだった冷たくなったコーヒーを飲み切っておく。テント内からシェラカップを持ち出して、自分と少女の分の紅茶を注いだ。


「熱いから気を付けてね」

 そう言ってチタン製のシェラカップをテーブルに置くと、少女にそれを飲むように促した。チタンは熱伝導率が低いので、熱い飲み物でも唇をやけどしなくて済む。ステンレス製はまだましだが、アルミ製ともなるとかなり熱くなるので、飲むときには細心の注意が必要になる。

 少女は俺の言葉に従い、ミニテーブルに置いたシェラカップの取っ手を握って恐る恐る持ち上げる。そうして中に入った紅茶をじっと見る。

「これは茶だな。しかしこの容器は金属製だと思うが見たことのない金属だ。ミスリルとも違うようだ」

 ミスリルという言葉は久々に聞いた。ファンタジー世界やゲームでは定番の金属だが、最近そういったコンテンツには殆ど触れる機会がなかったので、テレビ以外では何年かぶりだ。


「惜しいけど、それはミスリルじゃなくてチタンだよ。鉄より硬くてとっても軽いんだ」

「チタン……確かに軽いな。この茶の量に比して容器全体でもかなり軽く感じる。……どれどれ」

 そういって少女は紅茶に口をつけた。あ、フーフーしてと言いかけたが、以外にも少女は熱がることもなく紅茶を啜った。


「うむ。これは茶葉を発酵させたものだな。かなりの上物だ」

「いや、ただの安物だよ。外で飲んだら何でもおいしく感じるからね。さ、それ飲んだらお父さんとお母さんのところに帰ろうね」

 少女は紅茶に口をつけながら、じろりとこちらを見た。そうしてもう一口グビリと飲んでからカップをテーブルに置いた。


「父と母とはどういう意味だ? 先ほどからどうも様子がおかしいな……もしかして主は異世界からの転移者というやつなのか? 魔力の流れを全く感じないなど、いくら人族でも不自然だ。転移者であれば、このようなところに一人でいるのにも合点がいく」


ガスバーナーは使う燃料缶で大きく二種類に分けられます。

OD缶とCB缶です。ガチ登山者はOD缶を使ってますが、はっきり言って燃料費が高いです。

CB缶は家庭用のガスコンロで使う、スーパーでも売っているあれです。

中に入っているガスの配合が違っていて、低温の時は普通のCB缶では火がつかなかったりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ