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ダンジョン・ストリーマー ~ヤンキーオタク、伝説の底から這い上がる~  作者: 沼口ちるの


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第9話:英雄と敗者 1位の壁と惨敗のロマン

姫宮彩美は、龍人の必死な叫びと、カガリの優雅な誘いの間で揺れ動いた後、静かに頭を上げた。


「ごめんなさい、紅蓮の剣王。アタシは……」


彩美は、まっすぐカガリを見つめた。


「アタシは、残念なイケメンだけど、世界一ロマンチストな龍人の隣にいる方が、アタシのロマンに合うんです。お断りします」


龍人は、その言葉に、胸の奥底から熱いものが込み上げてくるのを感じた。


カガリは、優雅に差し出した手を引っ込め、少しも動揺した様子を見せない。


「わかりました。貴女の選択を尊重しましょう。ですが、Ryujin DM。貴方は彼女のロマンを背負うには、あまりに未熟です」


カガリは、龍人に向き直った。その目は、もはや優雅な騎士のものではなく、戦場の覇王の鋭さを持っていた。


「私の誘いを断った報いは、貴方の実力で受けてもらいましょう」


カガリは、そのまま通路の奥へと歩き出す。


「この先、この『岩肌の採掘場』の最深部には、私の私設ダンジョンがあります。貴方たちの配信を視聴していた時間で、貴方のロマンチストな戦術は全て把握しました。もし貴方が、彼女のロマンを真に背負いたいならば、私のダンジョンに挑戦しなさい」


カガリは、振り返らずに言い放った。


「ただし、貴方のロマンが、私の紅蓮の力に触れた瞬間、貴方は惨めな敗北を知ることになるでしょう。それが、『伝説』を目指す貴方に必要な、現実です」


カガリの言葉は、龍人の挑戦的な心を一気に燃え上がらせた。


「上等だ!紅蓮の剣王!テメェの言う現実とやらを、俺のロマンで粉々にぶっ壊してやる!」


彩美は不安そうに龍人の腕を掴んだ。「龍人、無理よ!1位と戦うなんて無謀すぎる!」


「うるせぇ!彩美!ここで逃げたら、俺の伝説はそこで終わるんだ!行くぞ!」


カガリが指定した私設ダンジョンは、通常の採掘場とは比べ物にならないほど危険な魔物で満ちていた。そして、最奥で待ち構えていたのは、カガリ本人だった。


「来ましたね。Ryujin DM、AyamiHime Healer。貴方の非効率なロマンは、ここまでです」


龍人は、最高級の装備を纏うカガリに対し、初期装備のブレードを構えた。彩美も緊張しながら回復ポーションの準備をする。


「いくぞ!『闇属性・八卦羅斬ッ―― 伝説の始まり!』」


龍人は、全身の力を込めて、カガリに突進した。いつもの大袈裟な動作で、ブレードを振り抜く。


しかし、カガリは動かなかった。


龍人のブレードがカガリの喉元に届く寸前、カガリの周囲の空気が、まるで熱波のように歪んだ。


「その技名は、私には長すぎます」


カガリは、腰に差した剣を、鞘から”5センチ”だけ抜き放った。


「紅蓮の剣閃ぐれんのけんせん


その一瞬の動作だけで、龍人のブレードは、中ほどから真っ二つに折れた。龍人の体は、衝撃で5メートルも吹き飛ばされ、岩壁に激突した。


”Damage9999” 龍人の体力ゲージは、一瞬でゼロに張り付いた。


「龍人!」彩美が悲鳴を上げる。


カガリは、抜いた剣を再び鞘に戻す。その顔には、一切の汗も疲労もなかった。


「貴方のロマンは、私の効率の前では、ただの空振りのダンスです。貴方の装備と実力では、この程度の衝撃で戦闘不能になる」


カガリが鞘から剣を5センチ抜いた、たったそれだけの動作に、龍人は何も対応できなかった。彼の身体能力、彼のブレードの材質、彼の防御力、全てが計算され尽くした上での、最短最速の敗北だった。


龍人は、折れたブレードを握りしめたまま、地面に倒れ伏す。


「うそ……だろ……」


彼は、初めて、自身のロマンが、現実の圧倒的な実力差によって、完膚なきまでに叩き潰される感覚を味わった。


カガリは、倒れている龍人を見下ろした。


「貴方は敗者です。そして、彼女のロマンを背負う資格は、まだありません。しかし、一つだけ評価しましょう」


カガリは、龍人の配信画面に向かって告げた。


「貴方の敗北は、多くの視聴者の心を動かすでしょう。その惨めな姿こそが、貴方が這い上がるための最大の燃料となる。これが、私からの現実という名のスパチャです」


カガリはそう言い残すと、姿を消した。


龍人の配信画面には、5万7000人の視聴者数と、『紅蓮の剣王に一瞬で敗北』というテロップが表示されていた。コメント欄は、同情と衝撃、そして、これからの『敗者からの成り上がり物語』への期待で埋め尽くされていた。


龍人は、折れたブレードを見つめ、静かに立ち上がった。


「見てろよ、紅蓮の剣王……。俺のロマンは、こんなところで終わらねぇぞ」



テメェら、見たか!これが1位の実力だ!


チクショウ!ブレードが5センチ抜かれただけで、俺の愛刀は真っ二つ!体も5メートル吹っ飛ばされて、一瞬で戦闘不能だ!俺の『闇属性・八卦羅斬』が、ただの空振りのダンスだとよ!ふざけんな!


だが、これが現実だ。俺のロマンが、カガリの効率と実力の前には、何の役にも立たなかった。


悔しいか?クソ悔しいに決まってんだろ!だが、この敗北こそが、俺の『伝説』に欠かせねぇ『敗北からの復活リザレクション』の伏線ってヤツだ。


カガリの野郎、俺の敗北が『最大の燃料』になるとか言いやがって。その通りだ!この屈辱は、絶対に忘れない。


彩美も心配そうにしてるし、妹のミコトも今頃、俺の惨敗をデータ化して分析してんだろうな。


いいぜ。ここからだ。1位に勝つには、もう今の俺じゃダメだ。俺のロマンと、ミコトの天才的な計算、そして彩美の聖女のサポートを融合させて、真の『非効率な効率』を完成させてやる。


テメェら、俺の惨敗を笑ってろ!その笑いが、俺の最強への第一歩の燃料になるんだからな!

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