第8話:紅蓮の剣王の誘い 姫宮のロマンチストな心
『特装型 グラベル ゴーレム』を打ち破った龍人たちは、その勢いのまま『岩肌の採掘場』の第三層へと進んだ。視聴者数は1万人に迫り、コメント欄は龍人のロマン砲に対する熱狂で満ちていた。
「どうだ、彩美!俺たちのロマンの力は本物だっただろ!」龍人は、興奮でブレードを天に突き上げる。
「まあね。アタシの壁ドン防御あってこそだけど」彩美はそう言いながらも、その顔は少し浮かない。
その時、広い採掘場の通路の先に、一人の人物が立っているのが見えた。周囲の魔物が、その人物に近づこうとしない異様な静寂。その人物の装備は、まるで炎を纏っているかのように赤く輝く最高級のダンジョン素材で構成されていた。
紅蓮の剣王こと、カガリ・A・ライトニング。
ランキング不動の1位が、まさかこんな中層ダンジョンにいるとは、龍人も彩美も予想していなかった。
カガリは、龍人たちに気づくと、優雅に一礼した。
「Ryujin DM。そして、AyamiHime Healer。貴方たちの配信は、拝見しました。奇抜で、興味深い非効率だ」
龍人は興奮で体が震える。
「紅蓮の剣王!テメェがこんなところにいるなんて、どういう風の吹き回しだ!」
カガリは、龍人のヤンキー口調にも動じることなく、静かに微笑んだ。その立ち姿は、まるで中世の騎士のように気品に溢れていた。彩美は、その光景を目にして、思わず息を呑んだ。
「その言葉遣いも、貴方のロマンの一つでしょう。しかし、私がここにいるのは、少し迷子になったからです。そして、貴方のパートナーに用があります」
カガリは、視線を龍人から彩美へと向けた。
「AyamiHime Healer。貴方の『相打ち作戦』。あれは、単なる運ではありません。魔物の突進速度と、ブレードの軌道を瞬時に計算し、非致死性の誘導を行った高度な技術です。貴方には、『賢者』としての才能がある」
彩美は、自分の技術を1位の配信者に認められたことに、顔を赤らめた。龍人のような『残念なイケメン』とは違い、カガリはまさに彩美が心の中で待ち望んでいた『白馬の王子様』そのもののオーラを放っていた。
カガリは、優雅に手を差し出した。
「Ryujin DMの配信は、いずれ彼のロマンに潰されます。彼の装備では、次の階層に進むのは無謀でしょう。しかし、貴方の才能は、私のような正統派の英雄を支えるべきだ。もしよければ、私の『紅蓮の騎士団』に入りませんか?貴方のロマンチストな心は、私の騎士団でこそ、真の『聖女』として輝ける」
カガリの言葉は、彩美の胸に深く突き刺さった。龍人の隣で『残念なイケメン』のツッコミ役をしている自分と、『紅蓮の剣王』の隣で『聖女』として世界を救う自分。彩美のロマンチストな心が、激しく揺さぶられた。
「ま、待てよ!カガリ!何、勝手に俺の聖女を口説いてやがる!」龍人が怒鳴った。
「口説いているのではありません。真のロマンへの道を示しているだけです」カガリは龍人を一蹴する。「貴方のロマンは、自己満足でしかありません。彼女の才能を、笑いのために消費するのは、非効率なだけでなく、罪ですよ」
龍人は、カガリの言葉に反論できなかった。カガリの放つ実力とカリスマは、彼のヤンキーの皮を貫き、オタクの本質にまで響いた。カガリの言う通り、彼の配信は、彩美の才能を『残念なパーティーのツッコミ役』として消費しているだけかもしれない。
彩美は、龍人の焦燥と、カガリの真摯な誘いの間で、揺れる心を隠せずに俯いた。
「アタシは……」
彩美が答えを出そうとしたその時、龍人のスマホに、妹 命からメッセージが届いた。
Mon_Miko 兄さん。紅蓮の剣王は、表向きの顔は騎士ですが、彼の配信の裏設定は、『孤独を愛する闇の復讐者』です。彼は、真のパートナーを求めていません。彩美さんの『聖女』のロマンを、一時的な『絵面』として利用するだけです。信じるなら、非効率なロマンを貫く兄さんを信じなさい。
命のメッセージを読み終えた龍人は、大きく息を吸い込んだ。
「彩美!待て!俺は、確かにダセェかもしれない!だが、俺のロマンは嘘じゃねぇ!俺は、お前に『祝福のティアラ』を買ってやるって約束しただろ!カガリのヤツは、お前を利用するだけだ!俺は、お前と一緒に最底辺から伝説を這い上がるんだ!」
カガリは冷めた目で龍人を見た。
「幼稚ですね」
彩美は、龍人の必死な叫びと、カガリの完璧な騎士の姿を交互に見つめた後、静かに頭を上げた。
「……ごめんなさい、紅蓮の剣王」
テメェら!急展開だろ!
あの1位の紅蓮の剣王カガリが、まさか彩美に手を出してきやがった!俺の聖女を『紅蓮の騎士団』に誘うとか、マジでふざけた真似しやがって!
俺のロマンを『笑い』と『非効率』で潰そうとしたKaitoのヤツとは比べ物にならねぇ。カガリは、彩美の『ロマンチスト』な心まで狙ってきやがったんだ。ヤンキーの俺からすれば、これこそNTR、いや、『ヒロイン強奪作戦』だ!
あの時、彩美がマジで心が揺らいでたのがわかった。カガリのヤツ、見た目も強さも『白馬の王子様』そのものだからな。俺は『残念なイケメン』だから、焦ったぜ。
だが、あの妹、ミコトの野郎が、またしても俺を助けやがった。あいつの『裏設定のための裏情報』は、マジで役に立つ。カガリの『孤独を愛する闇の復讐者』とか、どっちが厨二病だよって話だが、あの情報のおかげで、俺は彩美を引き止めることができた。
彩美がどんな答えを出したかは、次話でのお楽しみってわけだ。
これでもう、俺とカガリのロマン戦争は本格的に始まった。1位に勝つには、もう『残念なギャグ』だけじゃダメだ。俺の『非効率なロマン砲』を、もっと洗練させてやる。テメェら、俺たちの伝説を見逃すなよ!




