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ダンジョン・ストリーマー ~ヤンキーオタク、伝説の底から這い上がる~  作者: 沼口ちるの


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第7話:最強への第一歩 ロマン対効率の激突

門田龍人こと『Ryujin DM』と姫宮彩美こと『AyamiHime Healer』の残念なパーティーは、『岩肌の採掘場』の第二層へと足を踏み入れた。龍人の配信画面には、相変わらず多くの視聴者が集まり、二人の珍妙なコンビネーションを待っている。


「彩美!行くぞ!この第二層こそが、俺の『次元渡りの龍神』伝説の試金石だ!」


「はいはい、龍人。アタシはあんたの背中、ちゃんと見てるから、無駄な動きしないでね」


二人が進む通路の先に、一人の配信者が立っていた。全身を最新の軽量装備で固め、無駄のない姿勢で周囲を警戒している男。ランキング中堅のテクニカル系配信者、Precision Kaitoだ。


「おい、テメェ!」龍人が大声で呼びかける。


Kaitoは、龍人たちを一瞥すると、冷たい視線を向けた。


「貴方たちですか。非効率な配信で、ランキングの空気を乱しているのは」


「うるせぇ!俺のロマンは乱れてねぇ!テメェの効率とやらは、見ててつまらねぇんだよ!」


「ダンジョンはエンターテイメントではありません。生き残るための戦場です。貴方の壁ドン防御も、彼女の相打ち作戦も、基礎がなっていない証拠。そんなロマンとやらで、いつか貴方は命を落とします」


Kaitoは吐き捨てるように言い放ち、目の前に出現した『岩肌のミノタウロス ミニ』に、正確無比なステップで接近した。


Kaitoのブレードは、ミノタウロスの突進を僅かな動きで避け、その勢いを逆手に取り、魔物の弱点である首筋に正確な一撃を加えた。


「これが、効率です。一秒以下の戦闘で、スタミナ消費は最小限」


ミノタウロス ミニは、断末魔もなく地面に崩れ落ちた。視聴者たちは、その圧倒的な技術に感嘆のコメントを寄せた。


KaitoファンA これがプロの動きだ


モブ配信者B 無駄が一切ない 芸術的だ


「くっそ……」龍人は歯を食いしばる。彼の『闇属性 八卦羅斬』は、技名を叫ぶ時間も含めれば3秒はかかる。


その時、採掘場の奥から、異様な唸り声が響いた。


通路の広場に、これまでのミノタウロス ミニよりも一回り大きく、全身が硬い岩の装甲で覆われた新種の魔物が出現した。


『特装型 グラベル ゴーレム』だ。


「なっ…なんだあれは!?」


「特装型……この階層に出現するとは」Kaitoは一瞬、顔色を変えた。「防御力が通常種の3倍はあります。通常攻撃では通りません」


Kaitoは冷静に分析し、ゴーレムの関節のわずかな隙間を狙い、何度もブレードを打ち込んだが、ゴーレムは全く怯まない。彼の効率的な攻撃は、ゴーレムの圧倒的な防御力の前には無力だった。


「まずい!このままでは…」


ゴーレムは、その巨体に見合わない速度で、Kaitoに向かって巨大な拳を振り下ろした。Kaitoは回避に成功するが、その隙に体勢を崩した。


「龍人!あのゴーレム、関節は硬すぎるけど、表面の岩は脆い!」彩美が叫ぶ。


「何言ってんだ彩美!岩が脆いわけねぇだろ!」


「違う!よく見て!奴の装甲、まるで砕けやすい玄武岩みたい。あれ、思い切り衝撃を与えたら、砕けるんじゃない?」


彩美の言葉に、龍人はハッとした。彼はオタク気質だ。玄武岩といえば、硬いが衝撃に対しては脆い性質を持つことを知っている。そして、彼が知る特撮やアニメの怪人は、大抵「防御力偏重型」には、「一撃必殺のロマン砲」が有効なのだ。


Kaitoの効率的な連続攻撃ではなく、龍人の非効率的な大技こそが、このゴーレムの弱点を突くのではないか。


「よっしゃあ!彩美!俺に任せろ!お前は奴の動きを『ロマンチスト ウォール ディフェンス』で受け止めるんだ!」


「はぁ!?あんた、壁ドンをアタシにさせる気!?」


「いいからやれ!お前は俺の『聖女』だろうが!」


彩美は顔を赤くしたが、すぐに意を決した。金属バットを構え、ゴーレムの突進の勢いを先ほどと同じようにわずかに逸らす。


その一瞬の隙に、龍人はゴーレムに飛びついた。彼はゴーレムの頭部、装甲が最も厚い部分に、両手でブレードを振りかざした。もはや、正確な一撃ではない。全身の体重と、これまで溜めてきたロマンの全てを込めた、ただの一振りだ。


「喰らえ!俺のロマン砲!『闇属性・八卦羅斬ッ―― 真っ二つ!』」


技名を最後まで言わず、最後に「真っ二つ」と付け加えるという、もはやお約束と化した叫びと共に、ブレードがゴーレムの頭部を叩き割った。


カランッという音と共に、ゴーレムの装甲が砕け散り、魔物は活動を停止した。


龍人の配信画面には、ミノタウロス ミニとは比べ物にならない高額な討伐報酬が表示された。


「ど、どうだ!Kaito!」


Kaitoは、顔の筋肉を硬直させたまま、龍人を凝視していた。


「……信じられない。貴方の、その非効率で粗雑な攻撃が、私の技術を上回った。ゴーレムの装甲の衝撃耐性を読み切ったとでもいうのですか?」


「読み切ったんじゃねぇ!俺のロマンがそう言ったんだよ!」


龍人は、初めて、効率を掲げる中堅配信者に、自分のロマンが勝利したことを確信した。


これが、『次元渡りの龍神』が最強への第一歩を踏み出した瞬間だった。

テメェら、見たか!これこそが、俺の『伝説のパワー』だ!


あのスカしたKaitoの野郎、俺のロマンを否定しやがって。結果はどうだ?アイツの効率的な攻撃じゃ、あの特装型 グラベル ゴーレムには傷一つつけられなかった!


俺の非効率的で、誰もやらねぇロマン砲が、奴の装甲を粉砕したんだ!


今回は彩美の機転と、俺のオタク的知識が融合した勝利だ。特に彩美。あの女、俺の壁ドン防御を、まさか自分から『ロマンチスト ウォール ディフェンス』として使ってくれやがって。マジでムカつくが、最高のヒロインだぜ。


Kaitoのヤツ、悔しそうな顔しやがって。アイツが信じる効率なんざ、俺が信じるロマンの前では、ただの遠回りだったってことだ!


これで俺たちは、ただの笑いだけじゃねぇ、『非効率な実力派』として、次のステップに進むんだ。妹のミコトにも、この勝利を見せて、俺の伝説の『裏設定』じゃなく、『表の主役』が俺だってことを思い知らせてやる!


テメェら、このロマンとギャグと実力が入り混じった最高の配信から、もう目を離せねぇだろ!


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