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ダンジョン・ストリーマー ~ヤンキーオタク、伝説の底から這い上がる~  作者: 沼口ちるの


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第4話:兄のダサい攻略法と、天才妹の非効率な計算

門田龍人こと『Ryujin_DM』の配信は、今やカオスな状況となっていた。


龍人が『岩肌の採掘場』の入り口に立つ配信画面には、妹 命のスパチャの影響で、信じられないほどの数の視聴者が押し寄せている。視聴者数は5,000を超えていた。


「おい、てめぇら!5,000人だぁ?ビビってねぇで、しっかり見とけ!これが『次元渡りの龍神』の新たな伝説の始まりだ!」


龍人がカメラに向かって吠えると、コメント欄は荒れ狂った。


Mon_MikoファンA やっぱりミコちゃんのスパチャのおかげで伸びてる


ヤンキーファンB ヤンキー オタク スラッシュはよ


転生者C スライムにぺちされる動画見てきたw


AyamiHime 龍人 がんばってね ポーションはちゃんと飲んでね


龍人は、妹から送られてきた攻略データを頭の中で復唱する。データには、このダンジョンのキーとなる魔物『岩肌のミノタウロス ミニ』への対策が書かれていた。


通常の探索者は、ミノタウロス ミニの強力な突進攻撃を、素早い回避や高威力の攻撃でカウンターを狙うのが定石だ。しかし、命の攻略データに書かれていたのは、あまりにも非効率な、そしてダサい方法だった。


攻略法 ミノタウロスの突進攻撃は 攻撃直前に微かな足の震えが発生する。その瞬間、完全に防御姿勢をとり、岩壁に向かって壁ドンされる形で攻撃を受けること。防御力の低い貴方の装備でも 突進の威力を『壁』に分散しノーダメージで受けられる。ただし、その後体勢を立て直すのに5秒かかる。


「なんだこの攻略法は……!壁ドンだと?しかも体勢立て直すのに5秒もかかるのかよ!効率が悪すぎる!」


龍人はデータを罵るが、命の恐ろしさは彼が最も知っている。あの女がわざわざこんなデータを送ってきたということは、これ以外の方法では初期装備の彼に勝ち目がないということなのだろう。


奥から、体長1メートルほどの小さなミノタウロス ミニが、唸り声を上げながら突進してきた。


「来たな、牛頭の化け物め!俺のロマンを否定する現実が!」


龍人はブレードを構える。視聴者たちは、彼がアニメさながらの回避や、かっこいいカウンター技を繰り出すことを期待している。


視聴者A カウンター来いよ


Mon_MikoファンA 避けろー 避けるんだ 兄ちゃん


サブスクライバーC 必殺技出すなら今だぞ


しかし、龍人はブレードを納め、命の指示通り、近くの岩壁に背中をつけた。そして、両腕で頭を抱え、完璧な防御姿勢をとった。


「くっそ、かっこ悪すぎる……!だが、これが『伝説への布石』だ!」


ドガァンッ


ミノタウロスの突進は、龍人ではなく、岩壁に激突した。龍人は岩壁とミノタウロスの間に挟まれた形となり、その衝撃で顔面が歪む。


龍人の防御態勢を岩壁と見立てた防御値の計算式を適用します。


Damage=AttackPower×(1−DefenseRatio)


DefenseRatio

wall


=0.99


Damage=500×0.01=5


龍人の体に微かな5のダメージ表示が出ただけで、彼は無傷で突進を受けきった。


だが、彼は言われた通り、体勢を立て直すために5秒間、壁にへばりついたまま動けない。


その瞬間、コメント欄は爆笑の渦に包まれた。


視聴者A なんかダセェw


ヤンキーファンB 壁ドンされてるヤンキーとか新しすぎるだろ


Mon_MikoファンA これが伝説の戦術かw むしろロマンあるな


「うおおお!これが『ロマンチスト・ウォール・ディフェンス』だぁ!」


龍人が苦し紛れに新しい技名を叫ぶと、笑いはさらに大きくなった。


5秒後、体勢を立て直した龍人は、よろめきながらもブレードを構え、動けないミノタウロスに一撃を食らわせた。


その時、龍人の配信に、一人のユーザーが乱入した。


『ユーザー:Precision_Kaitoが乱入しました』


そして、コメント欄に、冷静で厳しい評価が流れた。


Precision_Kaito なんて非効率でダサい攻略法だ。防御に5秒もかける探索者がいるか。


Precision_Kaito。彼はランキング中堅に位置するテクニカル系配信者で、理論的な攻略と無駄のない動きで知られていた。彼の乱入に、龍人の配信の視聴者は一瞬ざわめいた。


「テメェ、誰だ!」龍人が怒鳴る。


Precision_Kaito 貴方の配信を見ればわかる。貴方はその見た目の通り、ヤンキーだ。力任せに突っ込むが、すぐに壁にぶつかる。その幼稚なロマンとやらで、いつか命を落とすぞ。ダンジョンはゲームではない。


「うるせぇ!俺のロマンは、誰にも否定させねぇ!」


龍人は怒りに震えながらも、次のミノタウロス ミニが突進してくるのを確認した。


『命のデータには、この後、ミノタウロス ミニが必ず二連撃を繰り出すことが記載されている。』


龍人は、再び壁を背にするが、直前で命のデータのある一文を思い出す。


データ注釈 この戦術は、連撃には対応できない。二連撃目は、初撃を壁で受けた後、体勢を立て直す前に、ミノタウロス ミニの角を掴み、そのまま回転し地面に叩きつけろ。その後の隙を突くこと。


「な、なんだと……!角を掴んで回転!?そんなのアニメの特訓シーンだろ!」


しかし、龍人は迷わなかった。彼にとって、命のデータは**『伝説への導き』**なのだ。


突進を壁で受けた直後、体勢が崩れる中、ミノタウロス ミニの二連撃目が迫る。龍人は、ブレードを捨て、両手をミノタウロスの角に伸ばした。


「やってやる!俺のロマンの力、見せてやるぜ!」


チクショウ!見てくれたか、テメェら!


あのミノタウロス ミニ相手に、俺が壁ドンだぞ!しかも『ロマンチスト・ウォール・ディフェンス』とか、マジでふざけた名前を自分でつけちまった。俺の伝説が、どんどん『コメディ』の方向に進んでるじゃねえか!


だが、命のあのデータ、非効率に見えて、今の俺の装備と体力じゃ、あれが唯一の正解だったんだ。悔しいが、天才の計算は恐ろしい。俺は「ダサい攻略」で笑いを取りつつ、着実に「勝ち」を拾ってるってわけだ。


そこに、あのPrecision_Kaitoとかいうスカした野郎が乱入してきやがった。ロマンを否定するテクニカル野郎だ。ムカつく。あんなヤツに、俺の『熱いソウル』が理解できるわけねぇ。


次は、命のデータの通り、角を掴んで回転だ。アニメの特訓シーンみてぇな攻略法、失敗したらマジで大惨事だ。だが、この緊張感こそが、テメェらを釘付けにするんだろ!


見てろよ、Precision_Kaito!俺の『ロマン』は、お前が信じる『効率』なんかじゃ、計れねえってことを見せてやるぜ!

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