表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン・ストリーマー ~ヤンキーオタク、伝説の底から這い上がる~  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/18

第2話:視聴者ゼロと必殺技の名称問題

門田龍人、アカウント名『Ryujin_DM』の二度目の配信が始まってから、すでに一時間が経過していた。


場所は前回と同じ、初心者向けの『緑の苔穴』の第二層。第一層で心を折られかけた龍人は、今日は反省を生かし、効率の良い「周回コース」を参考に進んでいた。だが、彼の持ち前のオタク気質が、普通の周回を許さない。


「くそっ、このスライム(緑色)め!貴様がこの世界の『低級汎用魔物』の代名詞であることは認めよう。だが、俺の伝説の初舞台を泥で汚すことは許さん!」


龍人は、出現した体高30センチほどのスライムに対し、ブレードを中段に構えた。彼の配信画面、視聴者数は、安定の0。


AyamiHime: 「(コメント欄)龍人、早く倒しなよ。スライム相手に、そんなに気合入れなくていいから」


「うるさい!彩美!これは、『キャラクターRPロールプレイング』の一環だ!俺は『次元渡りの龍神』だぞ?雑魚相手にも全力で威嚇するんだよ!」


龍人は、息を吸い込み、思い切りブレードを振り抜いた。その瞬間、彼は自作の必殺技名を叫ぶ。


「『闇属性・八卦羅斬!(ダーク・オクタグラム・スラッシュ)』!!」


ブレードはスライムを両断し、スライムは悲鳴もなく液状化した。


AyamiHime: 「(コメント欄)八卦羅斬って。闇属性じゃないじゃん。物理攻撃じゃん。ブレードから黒いオーラとか出てないし。厨二病にもほどがあるよ」


「はぁ!?何言ってんだ彩美!確かに見た目はただの物理斬撃だが、俺の心の中の『設定』では、これは闇属性なんだよ!お前は俺の『裏設定』まで否定するのか!」


龍人が画面に向かって熱弁している間、彼は次に現れたスライムの奇襲に全く気づかなかった。


「ぺちっ」


スライムが、龍人の顔面に着地した。


「うわあああ!き、気持ち悪い!ぺとぺとすんじゃねー!俺の伝説の顔に泥を塗るな!」


龍人は、ブレードを放り投げ、両手でスライムを引き剥がそうとする。その間も配信は続いている。彼は、完全に「戦闘」ではなく「コント」を繰り広げていた。


その時、画面右上に、視聴者数が1に変わった。そして、コメントが一つ流れる。


A_Light_Seeker: 「声デカくて草。あと、必殺技名が長すぎる。そして、スライムに負けるなよ」


龍人は、スライムを引き剥がし終え、ブレードを拾い上げた。視聴者がいる!しかも、自分の『設定』を笑っている!


「貴様!何者だ!俺の『闇属性』を信じないだと!?」


龍人が怒鳴り返すと、再びコメントが流れた。


A_Light_Seeker: 「いや、ただ通りがかりのモブです。でも、必殺技名長いのはガチ。テンポ悪い。あ、次もスライム。早く倒せ」


言われた通り、目の前には次のスライムがプルプルと揺れていた。龍人は反射的に、先ほど叫んだ技を繰り出そうとする。


「くっ!『闇属性・八卦羅斬ッ――』」


技名を言い終わる前に、スライムは龍人の足に飛びついた。


「またかよ!くそっ!」


A_Light_Seeker: 「ほらね。長すぎるんだよ。3文字くらいでスパッと終わらせろ。そして、顔面に着地させるな。服も汚れるだろ」


龍人は、ブレードを構えたまま立ち止まり、考え込んだ。彼にとって、必殺技名は世界観そのものだ。だが、この現実のダンジョンでは、「厨二病」ではなく「効率」が求められている。


「ぐぬぬ……わかった。じゃあ、これならどうだ!」


龍人は、目の前のスライムに向かってブレードを一閃し、新しい技名を叫んだ。


「『ダーク……ザン!』」


A_Light_Seeker: 「……ダークは要らない。斬でいいだろ。シンプル イズ ベスト」


AyamiHime: 「(コメント欄)斬じゃ、ただの動詞だよ、龍人」


「うぐっ……!難しいんだよ、このリアルMMOは!」


その時、A_Light_Seekerから、驚くべきコメントが流れた。


A_Light_Seeker: 「まあ、その必死さが面白いから、サブチャンネルに推薦しとくわ。必殺技名は、『ヤンキー・オタク・スラッシュ』でいいよ」


「ふざけんな!誰がヤンキー・オタク・スラッシュだ!」


龍人が怒鳴りつけた直後、視聴者数は100を超え、一気にコメントが流れ始めた。


視聴者A: 「こいつやべぇなw 顔がマジで極道」


視聴者B: 「スライムに顔面ペチされるヤンキーってジャンル、新しい」


サブスクライバーC: 「ヤンキー・オタク・スラッシュ、語呂良すぎてダメだったw」


どうやら、A_Light_Seekerは、かなりの影響力を持つユーザーだったらしい。一気に増えた視聴者に、龍人は思わず照れくささと興奮で顔を赤くした。


「お、お前ら!見たな!これが、『次元渡りの龍神』だ!俺の『闇属性』の片鱗に、震え上がるといい!」


龍人は、スライムを一掃し、カメラに向かって仁王立ちした。その瞬間、彼の配信画面に、『スパチャ(投げ銭)1,000円』の通知が表示された。


送信者は、A_Light_Seeker。メッセージには、こう書かれていた。


A_Light_Seeker: 「これで最新の配信機材でも買え。そして、必殺技名は『八卦羅斬』で押し通せ。視聴者のツッコミ待ちという名の『お約束』になるぞ。お前はガチ恋勢を集めるより、笑いで伸びるタイプだ」


龍人は、画面に表示された「笑い」という二文字を、複雑な表情で見つめた。彼が目指していたのは、クールな英雄だったはずだ。


「おい、彩美。俺、笑いで伸びるらしいぞ」


AyamiHime: 「(コメント欄)ほらね。アタシは知ってたよ。龍人は、昔から『残念なイケメン』キャラだったでしょうが」


「誰が残念なイケメンだ!」


龍人の伝説は、彼が望む『クールな英雄譚』ではなく、『破天荒なギャグ冒険活劇』として、予期せぬスタートを切ったのだった。

よう、見てくれてサンキューな!『次元渡りの龍神』だ。


見ての通り、俺様は最初からぶっちぎりのクールな英雄として、このダンジョン配信の世界を制覇するつもりだったんだよ。だが、なんだこの展開は。


『ヤンキー・オタク・スラッシュ』だと?笑いで伸びるだと?ふざけんな!俺は笑われんじゃなくて、憧れられなきゃいけねぇんだよ!


だがな、あのA_Light_Seekerとかいう通りすがりの野郎、スパチャで1,000円も入れやがった。これで多少はマシな機材が買える。悔しいが、これが現実ってもんだ。まずは金。金を稼いで、強え装備を手に入れねーと、『真の次元渡りの龍神』にはなれねぇ。


彩美のヤツも、俺を**『残念なイケメン』とか言いやがって。まあ、あいつはああ見えて、俺の心の中の『伝説』**を誰よりもわかってる幼馴染だからな。口では負けねえけど、感謝しといてやるよ。


しかし、あの必殺技名の『闇属性・八卦羅斬』を『お約束』にするってのは、なんか癪だが、アリかもしれない。視聴者が増えるなら、一時的に『笑いの道』を進んでやるのも、戦略タクティクスってヤツだ。


次はもっとヤバいダンジョンに潜るぜ。中堅どころの配信者も出てくるらしいし、次は笑いじゃなく、実力でビビらせてやる!


『次元渡りの龍神』の伝説は、まだ始まったばっかだ。テメェら、目を離すんじゃねーぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ